佐藤美奈子さん ( 「図書新聞」編集者)
上川あやさんが政治の場で活躍してくださることを心より願う者の一人です。
上川さんの政策と実践は、まず自分とともに身近に存在しながら声を上げられない人々の苦しみに耳を傾けることから出発されています。外国籍住民の方、ひとり親家庭、ホームレス、心身障害者の方々など……への具体的実践は、イデオロギーや抽象論を振りかざすことより遥かに難しいことだと感じます。
難しいからこそ、こういう実践をされている方だとお聞きした当初は、すぐには信じられない気持ちがあったことは事実です。
しかしご著書『変えてゆく勇気』を拝読し、自分の気持ちを改めざるを得ませんでした。
上川さんは、性同一性障害というご自身の置かれた状況と立場を率直に語り、経験されたご苦労を決して大げさではない言葉で語ります。
上川さんにしかわからない辛い想いがあったであろうと感じる一方で、新たな一歩を踏み出すために悩み、迷い、逡巡する姿勢は、何も上川さんだけに限らない、自分も同じではないか、と思ったのです。ただ違うのはそれを実践するかしないかである、と気づかされます。上川さんは困難にぶつかった時、それを諦めず、かといって大げさに捉えすぎず、具体的に原因を分析し、その都度人にあったり、相談に出向いたりして一歩一歩前進し、改善に向けて実践するのです。
本の帯には「諦めからは何も生まれない」という言葉がありますが、むしろ諦めは自分の中にこそあったのだ、と気づかされるのです。
実践ということにおいては、区議会議員になられてからもまったく同じように思います。
上川さんがすくい上げてくださる声によって、政治は遠い場所にあるのではなく、自らもその中に存在していることに思い当たりますし、自らの問題として捉え直さなければいけない事柄が他にもっとたくさんある、と気付かされます。
小さな声、もっとも声を上げにくい方たちの声であるからこそ余計に、政治の場での上川さんの“実践”は今後最も必要とされてゆくと思います。