区民共有の財産の管理について伺います。
平成29年3月に区が策定した「公共施設等総合管理計画」では「施設類型ごとの基本方針」で関連各施設の課題を次のように列挙しています。

まず、【世田谷美術館、分館】では、
美術品等の寄贈の申出に対しては、精査した上で受領しているが、保管場所が不足している。

次に、【宇奈根考古資料室とその分室】では、
・埋蔵文化財資料・出土品を管理する施設は、その資料や出土品などの増加により、保管場所が不足している。
・作業スペースに資料や出土品が保管されており、整理作業に支障をきたしている。

最後に、【郷土資料館】についても、
・設備の老朽化が進み、空調機の不具合等が発生している。
・建物は特殊な構造であるため、長寿命化には特段の検討を要する。
・歴史資料を適切に保管するために、館内収蔵庫を確保し、湿度調整をする必要がある。
――引用は以上です。

各施設共通して保管場所の不足や不具合が課題でしたが、同計画策定から6年、なお残る課題について問います。
まず、世田谷美術館と分館の保管場所不足の課題については、船橋公文書庫の一部を改修して使用する計画で来年度予算も計上していると伺いました。しかし美術品収蔵庫なら当然備えるべき収蔵品を汚損、水損させずに消火できるガス消火設備が、同文書庫にはありません。また新たな改修計画にも同設備の導入予定はないそうです。 
このため同文書庫にある消火の備えは消火栓に消火器だけ。しかも夜間は無人です。
同文書庫の防火対策の脆弱性については、以前、私が議会で取り上げた結果、区は重要公文書等を同所から引き揚げ、ガス消火設備の整った民間倉庫へと移しています。そこに置くことはリスクとの判断は正しいと思います。
そのような場所に、その防火性能を高めることなく美術品を移すというのは不安です。
区の重要公文書同様、美術品でもその価値が高く厳格な管理を要するものは同文書庫にはおかないといったメリハリある対処が最低限、必要だと考えますがいかがでしょうか?

国営公園の全体で火気の使用が禁じられていた沖縄首里城でも正殿ほか6棟が全焼したのは記憶に新しいところで、1階の一部でしか火気は使用しないから安全とする区の判断は、大変甘いと考えます。区の重要公文書を置くには危険と引き上げた場所に、美術品なら安全だと置く矛盾も理解できません。ぜひ適宜、見直してください。

次に宇奈根考古資料室と分室でも、保管場所不足は顕著で作業に支障をきたしているとのことでした。
同所が管理する埋蔵文化財については、栃木県佐野市と区内烏山の倉庫にも分散保管があるそうですが、本来、遠方への分散保管は望ましくない上に、宇奈根の資料室もあと数年で受入れ不能になると聞いています。
加えて同資料室は多摩川の「浸水想定域内」にありますが、最大何メートル沈むのでしょう? 
考古資料室という特性からいえば、立地そのものから見直すべきで、将来的には再配置も視野に検討すべきと考えますがいかがでしょう?

最後に、郷土資料館の収蔵庫についてです。
以前の区議会で、同収蔵庫は池を埋めて作られた地下施設であり、周囲は湧水が豊富で、停電などで常設された汲み上げポンプが止まれば数時間で水没の危険もあると指摘すると、区は新たに非常用発電設備を整備しました。
ところが昨年の大量降雨時には建物の老朽化もあるのか、同館地下に雨水が侵入し、地下収蔵庫の文化財を職員が上階に上げる事態になったと耳にしています。
郷土資料館の立地は代官屋敷にも接し、ベストに近いと感じますが、その収蔵庫を湧水豊富な地下に置き続けることは明らかにリスクです。将来的には再配置も検討すべきと考えますがいかがでしょうか?

こちらも電源を喪失しても、またポンプ自体なくても水没しない収蔵庫になることを期待しています。