◆上川あや

初めに、区が直営しない区立施設のLGBTQ対応はひど過ぎるというテーマで質問します。

問題の核心は何かと言えば、区が区立施設の運営を事業者に委ねるに当たり、性の多様性という、人権上、重要な視点を欠いてきたことです。
その結果、区に代わり区立施設の管理運営を担う指定管理者及び委託事業者の大半が、同性をパートナーとする同施設の職員を平等に扱わず、LGBTQ差別を禁止するハラスメント禁止規定の制定もないままに事業者選定され、その後の区のモニタリングでもLGBTQ対応は全くの不問。区は私から議会で問われるまで、各施設運営者の対応にも全くの無関心、無為無策で平気でした。加えて私の議会質問に答え、ようやく打ち出した改善策さえも、御答弁から一年以上を経て点検してみれば、実行されていないものばかりとさんざんです。

二〇一八年に成立した区の多様性尊重条例は性的思考、性自認への差別を禁止しています。その差別の禁止には同性カップルへの差別も含まれると、区は明確に答弁をしております。
おととし、区が公開した同条例解説のウェブページでは、第六条事業者の責務について次のように書いています。区の掲げる男女共同参画及び多文化共生の理念に理解を深め、区の施策に積極的に協力していただくよう定めています。特に事業者の皆さんには、働く全ての人がそのライフスタイルに応じて多様な生き方を選択できるよう、募集、採用及び昇進など、あらゆる場面で性別や性自認、性的指向、国籍、民族の違いによる不当な取扱いがないよう配慮し、事実上生じている不当な取扱いについても積極的に改善するようお願いします。引用は以上です。

LGBTQ差別を禁じる区である以上、ここに書かれた事業者の責務は真っ当です。
ところが、おととし11月の私の議会質問をきっかけに、区は初めて指定管理者のLGBTQ対応を調査し、外郭団体を除く三十一の指定管理者で、職員の人事、給与、福利厚生制度の一部にでも、同性パートナーやその親族を対象にした制度を持つ者は僅か三事業者で、性的指向や性自認への差別を禁じるハラスメント禁止規定を整備した事業者も五事業者にとどまりました。つまり指定管理者のほとんどは、区条例の責務を忠実に守ってなどおりません。

同様の状況は、区の委託事業者にも見られます。昨年私が求めたところ、区は初めて委託事業者を調査し、回答のあった四十四事業者からの回答の結果、その一部にでも同性パートナーへの処遇平等があったのは僅かに二事業者で、ソジハラスメントの禁止規定を整備したのも九事業者だけだと分かりました。前者の整備率は僅か四・五%、後者の二割にもすぎません。区の無為無策がこのような事態を引き起こしていたことは明らかです。

一連の調査で最も事態の深刻さを印象づけたのは、本区のLGBTQの拠点、らぷらすの運営事業者、共生会SHOWAさえもが、同性パートナーに配慮した人事、給与、福利厚生制度を一切持たず、そのハラスメント禁止規定に性的指向、性自認のメリットもなかったという事実です。まさに区の無策を象徴しております。

これら事態を受け、区の指定管理者については一昨年十一月の四定で、委託事業者についても昨年二月の一定で改善を求めると、区からはおおよそ次のような改善策が示されたはずでした。

一、従前のらぷらす運営事業者選定では、同性パートナーへの処遇の平等やソジハラスメント禁止規定の整備までは義務づけていなかったが、今後は要件化を検討する。
二、らぷらす運営業者の選定はなお有効だが、契約自体は単年度などで一の要件検討を待たず契約の仕様書内での改善を急ぎ調整する。
三、区が従前契約事業者に配付してきた契約履行に当たっての留意事項に、多様性尊重条例第六条、事業者の責務規定も追記する。四、契約書内の特記事項でもあるべき対応を責務に位置づけられるよう内容を精査する。
五、四の責務の前段として、LGBTQを含めた誰もが働きやすい職場環境づくりにつながる指針づくりを検討し、事業者に対しても示す。
六、四、五の環境を整備した上で、指定管理者の選定や施設運営に生かせるよう指定管理者制度のガイドライン自体も改定する。
以上六つのお約束のうち、答弁履行が確認されたのは、三の別添資料一枚の記述を変更するとした一つだけ、残る五つの打つべき手はいまだ打たれてなどいないのです。

そこで問います。
第一に、らぷらす運営事業者内の規定です。御答弁から一年、規定そのものに変更はなく、ただ解釈変更により、職員の処遇の平等にも、ソジハラスメントの禁止にも現行規定で対応可能と判断したと伺っています。しかし、本来求められるのは区としてのいっときの都合による解釈変更ではなく、明文規定に基づく権利の保障、ソジハラスメント抑止の明文化ではないのですか。また、さきの御答弁どおり、単年度契約における仕様書も改善されたのか、併せて問います。

第二に、御答弁にあったLGBTQ対応を含めた職場環境づくりの指針もいまだ未策定となっています。この間、LGBT理解増進法が成立したという環境変化はありますが、同法第六条、事業主等の努力に照らしても、LGBTQ対応に配慮した就業環境の整備はますます重要で、区の指針づくりを妨げるものではないはずです。そこに区が込めるべき要素やスケジュール感を含め、区の策定方針を問います。

第三に、契約書内の特記事項にも、同性パートナーに配慮した諸権利の平等、ソジハラスメント禁止が盛り込まれるべきですが、ここでの答弁もまた不履行です。改めて策定の目途と対応方針を問います。

第四に、指定管理者制度のガイドラインにおいても、事業者選定と施設の管理運営の双方で、同性パートナーを含めた諸権利の平等、ソジハラスメントの禁止は必須要件とされるべきですが、ここでも肝腎の答弁履行はありません。毎年行うモニタリングにも加味されるべきと考えますがいかがか、併せて区の対応方針を問います。

◎渡邉 生活文化政策部長

私から、三点御答弁申し上げます。

初めに、らぷらすにおける権利保障の明文規定化でございます。
区は運営事業者に対し、LGBTQを含むジェンダー平等に向けた人事、給与、福利厚生制度の構築や同性パートナーの処遇平等、ソジハラスメントの禁止に関して具体的に明文化し規定の整備を進めるなど、差別のない職場づくりを積極的に促していくこと、協力を求めていくことが重要であると認識してございます。

議員お話しのらぷらすにつきましては、さきの御答弁以降、運営事業者である社会福祉法人共生会SHOWAと協議を重ねており、性の多様性に応じた処遇の平等とハラスメント禁止等に資する規定の整備に向けて検討をしていることを確認してございます。また、受託者は法人内の職員向け研修を定期的に実施しており、その中で、昨年八月には性の多様性研修を実施するなどLGBTQの方を含めた誰もが働きやすい職場づくりにも取り組んでいるところでございます。
委託契約において、受託者内部の規範である就業規則等の規定整備を義務化することをその契約の仕様書に含めることはなじまないことから、らぷらすの仕様書においては、その他の項目として、義務ではなく事務所内において率先して誰もが働きやすい環境づくりに取り組み、区内事業者に模範を示すよう努めることと追記したところでございます。今後、らぷらす運営事業者とともに、多様性尊重への理解を深めながら、条例の実効性を担保できるように取り組んでまいります。

次に、職場環境づくりの指針についてでございます。
令和二年度に実施した区内企業の意識実態調査では、性的マイノリティーへの配慮の取組で、約七割の事業者が実施していないと回答しております。一方で、まだ実施していないが検討中と回答した事業者が一割程度おり、区としてはまずはこうした事業者が実施に向けて行動を起こすことを推し進めるためにも、お話にありました行動指針等を示しながら、具体的に協力を求めていくことが大変重要になってくると考えております。
今後策定する行動指針には、LGBTQの基礎知識や、当事者が職場で直面する困り事、職場環境整備の必要性の説明とともに、処遇平等や差別的取扱いの禁止等の規定整備、社内で推進していくための方針の策定や体制づくり、研修の実施など事業者として取り組んでいただきたいことと、それから、国等を含めた活用できる支援制度について分かりやすく記載し、令和六年度中には策定する予定としてございます。
また、性的マイノリティーへの取組を実施していないと回答した事業者に対しましても、様々な機会を捉え行動指針の周知に努めるとともに、協力を求めてまいります。

最後に、契約書への特記事項への対応でございます。
区と契約を締結する事業者には、世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例第六条、事業者の責務及び第七条、差別の解消等を着実に取り組んでいただくことはもとより、区として明確に求めていくためには、現在契約書とは別に配付している履行上の留意事項を契約書の特記事項に盛り込むことが有効であると考えております。
ただし、条例第六条に規定する事業者の責務は訓示的、抽象的な表現による努力規定となっており、区と契約する事業者に規定を整備するなど、具体的行動を義務化することは困難でございます。
そこで、障害を理由とする差別の解消の推進に関する特記事項を仕様書に添付する手法と同様に、条例の遵守と併せて、同性パートナーに配慮した諸権利の平等やソジハラスメントの禁止など、今後策定する行動指針等に基づき取りまとめを行い、契約書の中に添付することで、その具体的対応を求めていくこととしてございます。添付に当たりましては、行動指針策定後、これは速やかに契約事務所管である財務部と調整してまいります。
以上でございます。

◎有馬 政策経営部長

私からは、指定管理者制度のガイドラインにおけるLGBTQの対応についてお答えいたします。

区の指定管理施設におきましては、公の施設として、区民の平等で公平な利用の確保や、事業者の安定的な運営を継続するためには、多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例に沿った運営を行うことは大変重要でございます。区では、毎年度の指定管理者との年度協定締結も含めた全ての契約時において、条例で規定する事業者の責務や差別の解消に向けた周知啓発を行っております。
また、指定管理者制度運用に係るガイドラインにおいても、同性パートナーを含めた職員の人事、給与、福利厚生制度といった職員の処遇の平等や性的指向、性自認に係るハウスメントの禁止などについて今年度中に明記するなど、指定管理者に対して改めて条例の遵守を求めてまいります。御指摘のモニタリングによる評価につきましても、こうした条例遵守の観点から必要な要素であると認識しております。次期選定の加点減点要素にもなることから、選定条件への反映等について、区の契約全般における考え方や国の動向なども踏まえ、関係所管と引き続き検討を進めてまいります。
以上でございます。

◆上川あや

区が直営しない区立施設の管理運営なんですけれども、条例が成立してからこの春でもう六年になります。事業者に対して責務として求めていることを自らが、区が管理委託、あるいは指定管理に任せる施設でやっていただかないというのは全く成り立たないと思うんですね。議員に言われなければやらないということ自体はもともとおかしいということを最後に申し上げて、私の質問を終わります。