区が直営しない区立施設のLGBTQ対応は酷すぎる、というテーマで質問します。

問題の核心は何かと言えば、区が区立施設の運営を事業者に委ねるにあたり、「性の多様性」という人権上、重要な視点を欠いてきたことです。
その結果、区に代わり区立施設の管理運営を担う「指定管理者」及び「委託事業者」の大半が、同性をパートナーとする同施設の職員を平等に扱わず、LGBTQ差別を禁止するハラスメントの禁止規定もないままに事業者選定され、その後の区のモニタリングでもLGBTQ対応は全くの不問。
区は私から議会で問われるまで各施設運営者の対応にも全くの無関心。無為無策で平気でした。
加えて、私の議会質問に答え、ようやく打ち出した改善策さえもご答弁から1年以上を経て点検してみれば、実行されていないものばかりと散々です。

2018年に成立した区の多様性尊重条例は、性的指向、性自認への差別を禁止しています。
その差別の禁止には同性カップルへの差別も含まれる、と区は明確に答弁しています。
おととし区が公開した同条例解説のウェブページでは、第六条(事業者の責務)について次のように書いています。

「区の掲げる男女共同参画及び多文化共生の理念に理解を深め、区の施策に積極的に協力していただくよう定めています。
特に事業者の皆さんには、働く全ての人がそのライフスタイルに応じて多様な生き方を選択できるよう、募集、採用及び昇進など、あらゆる場面で性別や性自認、性的指向、国籍、民族の違いによる不当な取扱いがないよう配慮し、事実上、生じている不当な取扱いについても積極的に改善するようお願いします」——引用は以上です。

LGBTQ差別を禁じる区である以上、ここに書かれた事業者の責務は真っ当です。
ところが、おととし11月の私の議会質問をきっかけに区は初めて指定管理者のLGBTQ対応を調査し、外郭団体を除く31の指定管理者で職員の人事、給与、福利厚生制度の一部にでも同性パートナーやその親族を対象にした制度を持つ者は、僅か3事業者で、性的指向や性自認への差別を禁ずるソジハラスメント禁止規定を整備した事業者も5事業者に留まると判りました。つまり、指定管理者の殆どは区条例の責務を忠実に守ってなどおりません。

同様の状況は区の委託業者にも見られます。
昨年、区が私の求めに応じ、初めて行った委託事業者への調査でも、50事業者中、44事業者から回答を得て、その一部にでも同性パートナーへの処遇平等があったのは僅かに2事業者で、ソジハラスメントの禁止規定を整備したのも9事業者だけだと判りました。前者の整備率は僅か4.5%。後者も2割に過ぎません。
区の無為無策が、このような事態を引き起こしてきたことは明らかです。

一連の調査で、最も事態の深刻さを印象づけたのは、本区のLGBTQ支援の拠点、らぷらすの運営事業者、共生会SHOWAさえもが同性パートナーに配慮した人事、給与、福利厚生制度を一切持たず、そのハラスメント禁止規定に性的指向、性自認の明記もなかった事実です。まさに区の無策を象徴しています。

これら事態を受け区の指定管理者については一昨年11月の4定で――
委託事業者についても昨年2月の一定で改善を求めると、区からはおおよそ次のような改善策が示されたはずでした。

1.従前のらぷらす運営事業者の選定では同性パートナーへの処遇の平等やソジハラスメント禁止規定の整備まで義務付けてなかったが今後は要件化を検討する。
2.らぷらす運営事業者の選定は、なお有効だが、契約自体は単年度なので1の要件検討を待たず、契約の仕様書内での改善を急ぎ調整する。
3.区が従前、契約事業者に配布してきた契約履行に当たっての留意事項に、多様性尊重条例第6条(事業者の責務)規定も追記する。
4.契約書内の特記事項でも、あるべき対応を「責務」に位置づけられるよう内容を精査する。
5.4の責務の前段としてLGBTQを含めた誰もが働きやすい職場環境づくりにつながる指針づくりを検討し、事業者にも示す。
6.4、5の環境を整備した上で、指定管理者の選定や施設運営に活かせるよう指定管理者制度のガイドラインも改訂する。

以上、6つのお約束のうち、答弁履行が確認されたのは3の別添資料1枚の記述を変えるとした1つだけ。 
残る、5つの「打つべき手」は、未だ打たれていないのです。そこで伺います。

第1に、らぷらす運営事業者内の規定です。
ご答弁から1年、規定そのものに変更はなく、ただ解釈変更により、職員処遇の平等にもソジハラスメントの禁止にも現行規定で対処可能と判断したと伺っています。
しかし本来、求められるのは組織の一時の都合による解釈変更ではなく、明文規定に基づく権利の保障、ソジハラスメント抑止の明確化ではないのですか?
また先のご答弁通り、単年度契約における仕様書も改善されたのか併せて確認します。

第2に、ご答弁にあったLGBTQ対応を含めた職場環境づくりの指針も未策定となっています。この間、LGBT理解増進法が成立したという環境変化はありますが、同法第6条(事業主等の努力)に照らしてもLGBTQに配慮した就業環境の整備はますます重要で区の指針作りの妨げにはならないはずです。 そこに区が込めるべき要素やスケジュール感も含め、区の策定方針を問います。

第3に、契約書の特記事項にも同性パートナーに配慮した諸権利の平等、ソジハラスメント禁止は盛り込まれるべきですが、ここでの答弁も不履行です。あらためて策定の目途(もくと)と対応方針を問います。

第4に、指定管理者制度のガイドラインにおいても、事業者選定と施設の管理運営の双方で、同性パートナーを含めた諸権利の平等、ソジハラスメントの禁止は必須要件とされるべきですが、ここでも肝心の答弁履行がありません。毎年行うモニタリングにも加味されるべき要素と考えますがいかがか、併せて区の対応方針を問います。