◆上川あや

区民共有の財産の管理について伺います。

平成二十九年三月に区が策定した公共施設等総合管理計画では、施設類型ごとの基本方針で関連各施設の課題を次のように列挙しています。
まず、世田谷美術館、分館では、美術品等の寄贈の申出に対しては精査した上で受領しているが、保管場所が不足している。
次に、宇奈根の考古資料室とその分室では、埋蔵文化財資料・出土品を管理する施設は、その資料や出土品などの増加により保管場所が不足している。作業スペースに資料や出土品が保管されており、整理作業に支障を来している。
最後に、郷土資料館についても、設備の老朽化が進み、空調機の不具合等が発生している。建物は特殊な構造であるため、長寿命化には特段の検討を要する。歴史資料を適切に保管するために、館内収蔵庫を確保し、湿度調整をする必要がある。引用は以上です。

各施設共通して保管場所の不足や不具合というものが課題だったのですが、計画策定から六年、なお残る課題は多いと考えていますので問います。
まず、世田谷美術館とその分館の保管場所不足の課題については、船橋公文書庫の一部を改修して使用する計画で、来年度予算にも計上があると伺いました。
しかし、美術品収蔵庫なら当然備えるべき収蔵品を汚損、水損させずに消火できるガスによる消火設備が同文書庫にはありません。また、新たな改修計画にも同設備の導入予定はないそうです。このため、同文書庫にある消火の備えというのは、消火栓に消火器だけ、しかも夜間は無人で人がおりません。
同文書庫の防火対策の脆弱性については、以前、私から議会で取り上げた結果、区は重要な公文書等を同所から引き揚げ、ガス消火設備の整った民間倉庫へと移しました。そこに置くことはリスクという判断は正しいと思います。そのような場所に、その防火性能を高めることもなく美術品を移すというお話なので不安です。
区の重要公文書同様、美術品でも、その価値が高く厳格な管理を要するものは、同文書庫には置かないといっためり張りある対処が最低限必要だと考えますが、いかがでしょうか。

◎渡邉 生活文化政策部長

美術品の保管には、作品の劣化や消失を防ぐため、常時の温湿度管理や防犯対策等の設備が整っていることが不可欠でございます。水を使用せず、酸素濃度を低下させて消火するガス消火設備は、万一の火災から美術品を守る有用な設備であり、世田谷美術館において附帯している収蔵庫には、これは当初から設置しているものでございます。
船橋公文書庫については、公文書のほか、選挙物品や区民貸出し物品の保管など、様々な用途で使用しており、各フロアの気密性も考慮されていないことなどから、現在ガス消火設備の導入に適していない建物であると認識してございます。
こうした中で、美術館はレストラン等の厨房設備があるのに対し、船橋公文書庫の火気は一階の事務室のみで使用していること、また、入館するには届出が必要で、容易には入れず、火災のリスクは極めて低い施設であると考えております。
しかしながら、万一に備え、新たに整備する収蔵庫での美術品等の保管に当たっては、作品の材質や価値等も十分考慮して、保管する作品や場所を選定するなど、区民の貴重な財産である美術品の適切な保管・管理に努めてまいります。

◆上川あや

国営公園の全体で火気の使用が禁じられていた沖縄の首里城でも、実際には火災が起こって、正殿ほか六棟が全焼したことは記憶に新しいところですが、一階の一部でしか火気を使用しないから安全だとする区の判断は大変甘いと感じます。区の重要公文書を置くには危険だと引き揚げた場所に、美術品は安全だとして置くということが矛盾であり、私には理解できません。ぜひ適宜見直しをお願いいたします。

次に、宇奈根の考古資料室とその分室でも、保管場所の不足は顕著で、作業に支障を現に来しているということでした。同所が管理する埋蔵文化財については、ここだけでは足りずに栃木県佐野市と区内烏山の倉庫にも分散保管があるということですが、本来、遠方での分散保管は望ましくない上に、宇奈根の資料室も、あと数年で受入れ不能になると聞いております。
加えて、同資料室は多摩川の浸水想定区域内にありますが、最大何メートル水没するのでしょうか。考古資料室という特性から考えれば、立地そのものから見直すべきであり、将来的には再配置も視野に検討するべきと考えますが、いかがでしょうか。

◎知久 教育政策・生涯学習部長

宇奈根考古資料室及び同分室は、区内で発掘された埋蔵文化財を保管、調査、整理する施設であり、多摩川氾濫時には五十センチから最大三メートルの浸水想定区域に位置しております。
貴重な考古資料である遺物等が浸水によって失われないよう、令和二年の委員御指摘後に、止水板の配置のほか、出水が見込まれる際に、遺物等を資料室二階へ移すなどの対応をすることとしております。
現在改訂中の世田谷区公共施設等総合管理計画で、当施設は、現施設規模を基に施設を更新するとされていることから、望ましい環境下で保管等ができるよう、関係所管とともに検討してまいります。

◆上川あや

三メートル水没する場所に高さ五十センチの止水板を置くというのは付け焼き刃で、小手先の対処でしかありませんので、ぜひ浸水想定区域外への展開をお願いいたします。

最後に、郷土資料館の収蔵庫についてです。
以前の区議会で私より、同収蔵庫は池を埋めた跡にあり、その地下空間にあり、周囲は湧水が豊富で、停電などで常設されているくみ上げポンプが止まれば数時間で水没のおそれがあると指摘すると、区は新たに非常用発電設備を整備しました。
ところが、昨年の大量降雨時では、建物の老朽化もあるのか、同館の地下に雨水が浸入しまして、地下収蔵庫の文化財を急ぎ職員が上階に上げるということになったそうです。
郷土資料館の立地は代官屋敷にも近接し、ベストとは感じますが、その収蔵庫を湧水豊富な地下空間に置くということは明らかにリスクです。将来的にはこちらも再配置を検討するべきと考えますが、いかがでしょうか。

◎知久 教育政策・生涯学習部長

郷土資料館では、湧水槽にたまった地下水の排水ポンプヘ、停電時でも最大連続三十一時間、電力を供給できる自家発電機の新設工事等を昨年度に実施し、地下収蔵庫の浸水被害リスクの低減を図ったところです。
一方で、御指摘の昨年六月の豪雨時に生じた本館地下室床面の水たまりは、湧水槽からの浸水とは違う事象と判断しており、壁面等からの漏水と思われるものの、現在、現場確認でも、特定の雨水浸入経路の発見には至っておりません。郷土資料館の資料室、今後改めて適切な保管管理に十分留意してまいるとともに、今後、築六十年を迎えますことから、今後、関係部署と連携を図りつつ、リスクを回避し得る収蔵資料の保全にさらなる検討を進めてまいります。

◆上川あや

こちらも、電源を喪失しても、またポンプ自体存在しなくても水没しない、そんな収蔵庫になることを期待して、私の質疑を終わります。