区の行政計画が書く「多様性の尊重」が、如何に視野が狭く、底が浅く、立ち遅れたものであるかを本日は問いたいと思います。

まず、現在、策定中の基本計画についてです。
同計画は、来年度からの8年間の区政運営の基本的指針であり、各部の行政計画をその下に束ねる最上位計画である。
以上の理解に誤りはないですか?

区は2018年成立の多様性尊重条例 第7条で性自認、性的指向への差別を禁じ、第8条で「多様な性に対する理解の促進及び性の多様性に起因する日常生活の支障を取り除くための支援」を区の条例施策として明記しています。

つまり区の多様性尊重において「性自認」と「性的指向」は欠くことのできない属性であり、区の各部はLGBTQゆえの困難があれば、それを取り除く支援を行う責務を有している。
以上の理解にも、誤りはないですか?

ところが基本計画素案の本文で、性自認や性的指向が出てくるのは、第3章 「基本方針」にただ1か所。言葉としては「LGBTQ」、「性的指向」、「ジェンダーアイデンティティ」の3語が1度ずつ。 「性自認」に至っては、その脚注で1度ふれているだけ。
それでも、第4章「政策」に具体的な記述があるのならまだ分かるのですが、その章にLGBTQ支援とわかる記述は一切、書かれていない。 
以上の認識にも誤りはないですか?

加えて、第4章の2の個別施策21 「多様性の尊重」において、区が対象として掲げるのは、年齢、性別、国籍、障害の有無の4つだけ。
「性自認」も「性的指向」も「LGBTQ」もないのです。
これは、基本計画のみならず、各分野別計画素案も同じで、区が「多様性尊重」で書くのはこの4つだけ。 
現計画の計画年度、10年分の区と社会の大きな変化を全く捉えていないとしか思えず、一体、何十年前の計画案ですか?——と言いたくなるような記述です。
区の「多様性のとらえ方」がいかに時代遅れかは、各対人援助職の倫理綱領等と比較すれば明らかです。

日本医師会の「医の倫理の基礎知識」では2018年からLGBTが登場。
「看護職」「社会福祉士」「ソーシャルワーカー」の倫理綱領でも、「日本社会学会」「情報処理学会」、「日本保険学会」の倫理綱領でも「性自認」と「性的指向」は明記され、その他にも、民族、宗教、出自、家族のあり方の明記もあるなど多様です。
区の基本計画や、各分野別計画における「多様性尊重」の対象は、もっと時代に追いつき、区の独自性、先進性を映したものとするべきです。
また各部が責務を負うLGBTQ支援も施策として明記するべきです。ご見解はいかがですか?

次に、区教委の教育振興計画素案についてです。

基本方針の3、「多様性を受け入れ自分らしく生きる」の記述にあるのは、ここでも国籍、年齢、性別、障害の有無と、文化と言語の6つだけ。
なぜ、「性自認」や「性的指向」を書かないのですか?

昨年、都内の認定NPOが12~34歳のLGBTQを対象に調査したところ、10代では過去1年以内に自殺を考えた割合が48.1%。自殺未遂の経験割合も14%にあったと報じられました。
国の自殺対策大綱でも性的マイノリティの思春期はハイリスク層であると明記され、教員理解の重要性が特記されています。こうした子どもの、いじめや自殺予防に教育の果たす役割は極めて重要であるのに、全く素通りする計画素案を看過できません。
加筆を求めますけれどもいかがですか?

最後に計画素案に書く「多様性尊重」で列挙するべき属性を先に挙げた4つでよいとしたのは、他でもない多様性尊重条例やLGBTQ支援を所管する生活文化政策部だと聞きましたが事実でしょうか? 

LGBTQ支援をけん引すべき所管部が、「性自認」「性的指向」という重要要素を省略して良しとしていることは容認できません。
今後、区の多様性尊重条例の趣旨や、区の多様性尊重の理念を書く際には必ず端折らず、「性自認」と「性的指向」を明記するよう求めますけれども、いかがですか?

各部が自らの所掌の事務で、性の多様性にまつわる困難がないかを真剣に考察、検討し、真摯に取り組むよう改めて求め、私の質問を終わります。