◆上川あや

区営住宅の管理について伺います。

昨年十二月の都市整備常任委員会に、区営住宅の明渡しと使用料等の支払いを求める訴えの提起が御報告されたのですが、その御説明を伺うと、現状の区営住宅の管理では困難を抱える入居者を福祉的支援につなげる感度や姿勢が乏しいのではないかと不安を抱かざるを得ませんでした。
本件の相手方は、小さなお子さんを抱える母子家庭で二〇一五年三月に入居。翌年から五年間延滞が続き、二〇二一年に一度、分割納付に御同意いただくも履行はされず、延滞金がたまりにたまった昨年八月、弁護士対応に切り替わると連絡がつき、支払うとの御回答。ところが、その後も支払いはなく、区は昨年十月、使用許可の取消し通知書を送付し、損害金も加え計二百三十四万円余を請求したという案件です。

この御報告で私が引っかかったのは、退去が決まった後の御説明です。
会議録から該当部分を読み上げます。
住宅管理課長による説明です。「弁護士からは、御本人と先週、接触をした結果、やはり収入がありながらも、必要なこういった支払いができていないというところは、家計の管理、収支の管理があまり上手にできていない。例えば、食費であるとか携帯代であるとか、御本人は支払わなければいけないと思いながらも、ついそっちのほうに使ってしまったというようなことをおっしゃっていたそうです。ですので、例えば、今後は、そういった家計の管理ができるような支援とかということであれば、ぷらっとホーム世田谷とかいう支援の手段もありますので、そういった様々な支援のメニューをたまがわ子ども家庭支援センターのほうでも考えてくれておりますので、直近、こういった状況もまた改めて向こうのセンターとも共有しながら、一緒に連携をして支援をしていきたい」云々と、引用は以上です。

ここで、私は二つの疑問を抱きました。一つは、ぷらっとホーム世田谷や世田谷社協による家計管理の支援の紹介は、延滞金が重なり、その金銭管理能力に疑義が生じた当初でもできたものではないのでしょうか。それに御同意されていれば、家賃の滞納は生じず、この母子家庭は区営住宅を出なくて済んだ。また、借金も背負わせることなく済んだのではないでしょうか。区の御見解はいかがでしょうか。

◎白木 住宅管理課長

区では、区営住宅等の使用料について滞納があった場合に督促を行うとともに、滞納が続いた際は御本人に事情をお聞きし、支払いについての協議を行っております。その際、滞納額を一括して支払うことが難しい場合には分割で支払っていただくようにするほか、生活困窮が認められる場合には福祉相談を案内するなど、丁寧な対応に努めているところです。
一方で、お話しいただいた方につきましては、区からの電話や訪問、また、郵送などによる再三の連絡になかなか応答していただけなかったため、御本人の金銭管理についての課題を早期に把握できなかったこと、また、区としても金銭管理に関する支援についての意識が希薄だったこともあり、結果として支援につなぐことができなかったことは反省するべき点であったと認識しております。

◆上川あや

率直な御答弁だと思います。

次に、軽度の知的障害や境界知能と言われる方々に区営住宅は適切に対処できるのだろうかという疑問です。
この方がそうであるとは申しませんけれども、お金の使い方の説明を聞いていて、私は似た部分を感じました。
ここで言う境界知能とは、IQに関連して専門家の間で使われ始めた言葉です。平均的とされるIQと障害とされるIQのはざま部分を指し、グレーゾーンとも呼ばれます。該当者は、何と人口の一四%、国内では千七百万人に上るとされ、見分けることは困難で、その多くは通常の学校に通い、一般就労も可能です。
しかし、記憶や注意、判断や推論には弱点がやはりあり、計画的にお金を使うことも難しいといいます。障害者手帳が出るわけでもない一方で、当人は通常のIQの人と同じ生活態度を強いられます。しかし、皆と同じ課題はやはりこなしづらく、コミュニケーションにも難があることがあります。区営住宅がこうした困難に気づかず、適切な支援につなげることもなく努力で変えられないレベルの対処まで求めていないのかどうかということが気になります。
所管課に伺いますと、現在、区営住宅の管理に当たっている事業者もこうした知的障害、精神障害領域の研修は受けていないということです。この点、対応力を強化していく必要があると考えますけれども、いかがでしょうか。

◎白木 住宅管理課長

区営住宅等の使用料の滞納理由は様々ですが、滞納者の一部には金銭管理に課題のある方もいらっしゃいます。このため、滞納の解消に向けては、これらの方に金銭管理に関する支援を行うことは重要であると認識をしております。
区といたしましては、今後、滞納者について金銭管理の課題を確認した場合は福祉所管とも連携し、ぷらっとホーム世田谷などの支援機関を紹介するほか、指定管理者とも協議し、知的障害や精神障害などについての研修を実施するなど、障害についての理解を深め、金銭管理に困難のある方に対する支援を強化するとともに、適切な債権管理に努めてまいります。

◆上川あや

よろしくお願いいたします。