区営住宅の管理について伺います。
昨年12月の都市整備常任委員会に、区営住宅の明け渡しと使用料等の支払いを求める訴えの提起が報告されましたが、そのご説明を伺うと、現状の区営住宅の管理では、困難を抱える入居者を福祉的支援につなげる感度や姿勢が乏しいのでは? と不安を抱かざるを得ませんでした。
本件の相手方は、小さなお子さんを抱える母子家庭で2015年3月に入居。
翌年から5年間、延滞が続き、2021年に一度分割納付に合意いただくも履行はされず、延滞金が溜りにたまった昨年8月、弁護士対応に切り替わると連絡がつき、支払うとご回答。
ところがその後も支払いはなく区は昨年10月、使用許可の取り消し通知書を送付し、損害金も加え計234万円余を請求したという案件です。
このご報告で私が引っかかったのが、退去が決まったあとのご説明です。
会議録から該当部分を読み上げます。 住宅管理課長による説明です。
「弁護士からは、御本人と先週、接触をした結果、やはり収入がありながらも、必要なこういった支払いができていないといったところは、家計の管理、収支の管理があまり上手にできていない。例えば、食費であるとか携帯代であるとか、御本人は支払わなければいけないと思いながらも、ついそっちのほうに使ってしまったというようなことをおっしゃっていたそうです。
ですので、例えば、今後は、そういった家計の管理ができるような支援とかということであれば、ぷらっとホーム世田谷とかいう支援の手段もありますので、そういった様々な支援のメニューをたまがわ子ども家庭支援センターのほうでも考えてくれておりますので、直近、こういった状況もまた改めて向こうのセンターとも共有をしながら、一緒に連携をして支援をしていきたい…云々」と引用は以上です。
ここで私は2つの疑問を抱きます。
1つは、ぷらっとホーム世田谷や世田谷社協による家計管理の支援紹介は、延滞金が重なり、その金銭管理能力に疑義が生じた当初でも、できたのではないですか?
それにご同意されていれば、家賃の滞納は生じず、この母子家庭は区営住宅を出なくて済んだ、借金も背負わせずに済んだのではないですか? 区のご見解はいかがですか?
次に、軽度の知的障害や「境界知能」とされる方々に区営住宅は適切に対処できるのだろうかという疑問です。
この方が、そうであるとは申しませんが、お金の使い方の説明を聞いていて、私は似た部分を感じました。
ここでいう「境界知能」とは、IQに関係して専門家の間で使われる言葉です。
平均的とされるIQと「障害」とされるIQの狭間部分を差し「グレーゾン」とも呼ばれます。
該当者は人口の14%。国内では1700万人に上るとされ、見分けることは困難で、その多くは通常の学校に通い一般就労も可能です。しかし記憶や注意、判断や推論には弱点があり、計画的にお金を使うことも苦手です。
障害者手帳が出るわけでもない一方で、当人は通常のIQの人と同じ生活態度を強いられます。しかし皆と同じ課題はやはりこなしづらく、コミュニケーションに難があることもあります。
区営住宅が、こうした困難に気付かず、適切な支援につなげることもなく努力で変えられないレベルの対処まで求めていないかが気になります。
所管課に伺うと、現在区営住宅の管理に当たっている事業者も、こうした知的、精神障害領域の研修は受けていないということです。 この点、対応力を強化してゆく必要もあるのではないですか? いかがですか?