健康と福祉に関する区の計画案に関して伺います。
いま、私が手にしているのは、先月7日発行の区のお知らせ「健康・福祉に関する計画(素案)」特集号です。

「区民の皆さんの健康・福祉にとって大切な4つの計画を新たにつくります」とのフレーズで、4計画の概要を紹介し、パブコメ募集しています。

掲載案の1つ目は、保健福祉部の「地域保健・医療・福祉・総合計画(素案)」
2つめは、高齢福祉部の「高齢者・保健福祉計画・介護保険 事業計画(素案)」
3つめに、障害福祉部の「(仮称)世田谷インクルージョンプラン(素案)」
最後の4つめに、世田谷保健所の「健康せたがやプラン(第3次)(素案)」です。

これらの素案を拝見し、すぐに気付かされるのは、性の多様性に対する悲しいほどの無関心、無計画と無配慮です。

2018年春に成立した区の多様性尊重条例で、区はLGBT差別を禁止し、「性別等の違いに応じた心及び身体の健康支援」並びに「性の多様性に起因する日常生活の支障を取り除くための支援」の2つを区の条例施策として明記したはずです。

ところがLGBTQには特有の健康格差、医療アクセスのバリア、福祉制度の使いづらさがあるにも関わらず、いずれの計画案も、具体の記述もないままに素通りです。

例えば、婚姻できない同性カップルは医療機関で家族として扱われず、進行がんの患者さんが、がん拠点病院という選択肢を失い、実際亡くなられていたり、長年連れ添う同性パートナーが危篤となっても、結婚はできず親族ではないために病院から連絡一つ受けられないなどの悲劇が繰り返されています。
こうした医療現場の無理解は、区内も例外ではないことは、区が行った区内医療機関のアンケートからも明らかです。

加えて最近の調査ではトランスジェンダーの42%が、その性のありようのために、例え体調が悪くても病院を受診できていないという深刻なデータも明らかになっています。
ところが、世田谷保健所のプランでは課題認識も、施策の1つもなく素通りです。

また同性カップルでは、一方が要介護となった時、残る一方がスムースに主介護者として周囲に認められる保証もありません。こうした環境を変える努力を区に求め、区もLGBTQに焦点を当てた介護職研修等もスタートさせたのに、高齢福祉部のプランにも何ら記述はないのです。

加えて、昨年成立した「障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例」で、区は、障害を理由とする差別に加え、性別及び性の多様性に起因する複合的な困難に対しても合理的配慮の提供を区民、事業者に求めています。

他方でLGBTQは過去10年以内に41%がうつ病、パニック障害などの精神障害を経験したとの深刻なデータも明らかとなっており、LGBTQは、その社会的困難ゆえに精神障害においてもハイリスク層なのです。

ところが、区は区民、事業者に性の多様性への合理的配慮を求める一方で、みずからの計画素案では何ら配慮もなく、素通りばかりしています。
これは、一体どういうことなのでしょうか?

性の多様性にまつわる様々な困難を全く素通りしながら「多様性の尊重」や「誰一人取り残さない」などと各所で謳う区の姿勢には底の浅さばかりが透けて見え大変悲しいです。

4つの計画案、それぞれに性の多様性も取りこぼさない基本方針の確認と具体的施策の記述を求めます。 福祉保険領域の事務方トップである副区長より、ご見解を伺います。