◆上川あや

健康と福祉に関する区の計画案に関して伺います。

今、私が手にしているのは、先月七日発行の「区のおしらせ」健康・福祉に関する計画(素案)特集号です。
区民の皆さんの健康、福祉にとって大切な四つの計画を新たにつくりますという大見出しの下で四計画の概要を紹介し、パブコメ募集をしています。

掲載案の一つ目は、保健福祉部の地域保健医療福祉総合計画(素案)、二つ目は、高齢福祉部の高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(素案)、三つ目に、障害福祉部の(仮称)せたがやインクルージョンプラン(素案)、最後の四つ目に、世田谷保健所の健康せたがやプラン(第三次)(素案)です。これらの素案を拝見し、すぐに気づかされるのは、性の多様性に関する悲しいほどの無関心、無計画と無配慮です。

二〇一八年、春に成立をした区の多様性尊重条例で、区はLGBT差別を禁止しました。また、性別等の違いに応じた心及び身体の健康支援並びに性の多様性に起因する日常生活の支障を取り除くための支援の二つを区の条例施策として明記をしたはずです。ところが、LGBTQには特有の健康格差や医療アクセスのバリア、福祉制度の使いづらさがあるにもかかわらず、いずれの計画案も、これらの記述がないままに素通りしています。

例えば、婚姻できない同性カップルは医療機関で家族として扱われず、進行がんの患者さんが、がん拠点病院という選択肢を失い、実際に亡くなられていたり、長年連れ添う同性パートナーが危篤となっても、結婚はできず、親族ではないと、病院から連絡一つ受けられないといった私の友人、知人の悲劇は、昨年お話しいたしました。こうした医療現場の無理解は、区内も例外では全くないということは、区が実際行った区内医療機関に対するアンケートの結果からも明らかです。加えて、最近の調査では、トランスジェンダーの四二%が、その性の在りようをめぐり、たとえ体調が悪くても病院を受診できていないという深刻なデータがあります。ところが、世田谷保健所のプランでは、課題認識も、施策の一つもなく、全くの素通りをしました。
また、同性カップルでは、一方が要介護となったとき、残る一方がスムースに主介護者として周囲に認められ、介護に関われる保証もありません。こうした環境を変えていただきたいと区に求め、区もLGBTQに焦点を当てた介護職研修をスタートさせてくださいましたが、高齢福祉部のプランにも何一つ記述がないまま素通りです。

加えて、昨年、成立した障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例で、区は、障害を理由とする差別に加えて、性別及び性の多様性に起因する複合的な困難に対しても、合理的配慮の提供を区民、事業者に対して求めました。
他方で、LGBTは過去十年以内に四一%が鬱病、パニック障害などの精神障害を来したという深刻なデータもあります。LGBTQは、その社会的困難ゆえに、精神障害においてもハイリスク層だと見られています。ところが、区民、事業者に性の多様性への合理的配慮を区は求める一方で、自らのインクルージョンプランでは全く何一つ書かずに素通りです。これは一体どういうことでしょうか。性の多様性にまつわる様々な困難を全く素通りしながら、各所で多様性の尊重や誰一人取り残さないなどとうたう世田谷区の姿勢には、底の浅さを見せつけられるようで大変に悲しいです。
四つの計画案それぞれに性の多様性も取りこぼさない基本方針の確認と、具体的施策の記述を求めます。保健福祉領域の事務方トップである副区長より見解を伺います。

◎中村 副区長

ただいまお話しいただきました性の多様性にまつわる様々な困難について、大変重く受け止めさせていただきました。
今般、素案をお示ししました保健医療福祉分野の四つの計画では、基本理念として、全ての人が自分らしく生きることができる環境をつくること、これを第一に掲げて、年齢、性別、国籍の違い、障害等の有無にかかわらず、互いの差異や多様性を認め合う社会的包摂の考え方を示しています。
しかしながら、御指摘がありましたとおり、性の多様性も、全ての人が自分らしく生きることができる環境をつくる上での重要な要素であるにもかかわらず、それぞれ明確な記述のない計画素案となりましたことを大変申し訳なく思います。
性の多様性への配慮、また、必要となる支援を明確にするため、各計画の基本理念や施策への考え方など、性の多様性について今後明記をしてまいります。

◆上川あや

しっかりお願いいたします。