加齢に伴う難聴者が非常に多いのに、区政の聞こえの支援が不十分である現状について伺います。

令和元年度の「世田谷区高齢者ニーズ調査」によると「聴力に支障がありますか?」という問いに29.6%。およそ30%の高齢者が「はい」と答えています。
この割合を1月現在の高齢者人口に掛けますと、5万5000人以上と大変な数に上ります。ところが、それに見合った配慮があるといえない区政の現状がとても悲しいです。

この問題を単に「だったら補聴器をすればよい」と個人の問題にすり替える議論は誤りです。補聴器でしっかり聞こえる範囲は一般に1.5mと言われ、雑音の多い会議室や反響の多いホール等では用をなさないとされています。

では、補聴器の限界ゆえ、にできることはないのか、と言えばちゃんとある。
なのに、必要な手立てが講じられていないのです。そこで、改めて求めるのが「ヒアリングループ」などの補聴援助システムの活用です。

例えば、ヒアリングループでは必要な音声だけを直接、補聴器や専用レシーバーに伝えます。補聴器ユーザーはヒアリングループのサインに気づいたら、音声モードをTに切り替えるだけ。これにより会議や講演、コンサート会場での発言者の声、音楽などがクリアに聞こえます。イギリスでは公共施設や駅、病院、教会、果てはタクシーにまで備えられていることが珍しくないそうですが、区ではほとんど使われておりません。

区が昨年12月に開催した人権週間記念事業、「講演と映画のつどい」では、よりユニバーサルな運営を求めた私の質問に応じ、新たに副音声と手話通訳と車いす席が導入された一方で、私が質問の中で言及した「ヒアリングループ」の活用は見送られました。

その理由について所管課は「ループは施設に付随する設備のため導入は難しい」と文書で説明しましたが、おかしな言い訳です。
ヒアリングループには予め床下などに埋設する固定型だけでなく、持ち運び可能な可搬型、携帯型があることが知られます。

区でも、私の議会質問に応え、2005年に世田谷総合支所がこの可搬型のループを購入・整備しています。
先週、その使用の可否を同支所に伺うと、数年ぶりに改めて点検し、何ら問題なく使えるとの回答も得ています。
ところが区の「人権週間」を代表するイベントではこの可搬型ループは使われませんでした。
区の人権週間に、5万5000人を超える加齢性の難聴者は、無関係でしょうか? 
また、今後も同イベントでは、同じ無策が続くのですか? ご見解を伺います。

UD条例を所管する都市デザイン課に伺うと、「情報のユニバーサルデザインガイドライン」でも施設整備マニュアルでも、この補聴援助システムの役割を啓発する一方で、整備するかどうかは所管課次第、全体の整備状況の把握もないとの報告で驚きました。
結局、現在903ある区の施設のうち、いくつの施設に同システムがありますか?
通信方式と固定型か可搬型かも含め、ご報告を求めます。

現在、903ある区の施設のうち7箇所だけにあり、うち5箇所はヒアリングループということです。では、それぞれの施設に設置を示すピクトグラムの掲示はあるでしょうか?
肝心なシステムの存在を知らずして、その利活用を申し出る施設利用者も、補聴器の音声モードを切り替える区民も現れるとは思えませんが、いかがですか?

区の施設への整備状況は、903施設に7か所で、けやきネットの集会施設には1か所も整備がありません。つまり5万5000人を超える高齢難聴者にとって、クリアに音声を聞きとれる施設はどこにもないということです。この現状を副区長はどのようにお考えですか?

足立区など8区では携帯型ヒアリングループを広く貸し出すことで、難聴者の社会参加を助けています。当区も、まだまだ知られていない補聴援助システムの有用性を広く区民に伝え、その整備状況の発信と柔軟な貸出サービスを連動させ、現状を改善するよう求めますけれども、いかがですか?