◆上川あや

続けて、障害者日常生活用具給付事業の給付基準額について伺います。

直腸がん、膀胱がんなどの手術で排せつ機能を損ない、腹部に人工の排せつ口、ストーマを造設したオストメイトと呼ばれる方々は、排せつケアに要するストーマの装具類を一生使い続けなければなりませんが、その日常生活用具給付事業における給付の基準額が約三十年間据え置かれている問題について、まず問います。

現在、本区の一か月当たりの給付基準額は、都内二十一区と同じで、消化器系が八千八百五十八円、尿路系が一万千六百三十円です。これは同給付事業が市区町村に移管される以前、国の給付事業だった三十年前の基準額、消化器系八千六百円、尿路系一万千三百円とほぼ変わらず据え置かれたままとなっています。また、全国的にも当区と全く同額の自治体が半数を占めるなど、その固定化は明らかです。
このため、オストメイト当事者でつくる日本オストミー協会が二〇二一年に行った全国調査では、これら基準額では間に合わないとの回答が八四%と大多数を占め、その割合は二〇一七年の前回調査時より一八%以上も増加、また、不足額の平均も三千九百二十円と、前回調査に比べ五百円以上も増加しております。

これら窮状から、同協会の東京支部では、消化器系、尿路系ともにその基準額を一万三千円に引き上げるよう求める要望書を、一昨年から二年続けて二十三区の全ての区長に出しております。その後の検討状況を所管部に問いました。この間の消費税の変動分のみ考慮し、来年度は消化器系、尿路系でそれぞれ百五十円、二百円程度値上げをしたい考えで予算要求したと説明をされますが、必要額との乖離は大きく納得できるものではありません。

他方、私が他区の区議会議員並びに当事者団体から得た情報によりますと、新宿区では、区内のオストメイト当事者に対しアンケート調査を実施し、併せて事業者への実態調査と確認も行い、負担額の実態をしっかり把握しております。その結果、オストミー協会の要望どおり、来年度は消化器系、尿路系ともに一か月一万三千円の増額で予算案も組まれていると承知をしております。この動きを受け、お隣、杉並区でも約六百人のオストメイトについて、来年度、実態把握の調査を検討しており、引上げの要否を見極める考えと聞いております。

ストーマ装具のメーカーは現在六社あり、昨年十月に二社が値上げをし、来月にも一社、再来月にも二社が値上げを予定していると聞いており、区も悠長な模様眺めをするべきではありません。当区も新宿区、杉並区同様、区内オストメイトへのアンケート調査も含めた実態把握に努め、必要な額との間に乖離があればそれを埋める努力を求めますけれどもいかがでしょうか。

最後に伺うのは、一旦決めた基準額の見直しはほぼ行わないという制度運用の硬直性についてです。
オストメイト装具の過去三十年間の給付基準額の据え置きを通して強く疑問に思うのは、なぜこれほどまでに長期間、当事者が払い続ける超過分について実態把握もせず、基準額を据え置くことができるのかという硬直性への疑問です。
本来、日常生活用具の給付基準額の設定は、実際の必要額に応じて変動することこそが当然で、当事者団体から窮状を訴える声が繰り返し届いても、なお実態把握を行ってこなかったと知った以上、ストーマ装具以外にも実態からかけ離れた基準額があることを懸念いたします。
この実際に障害当事者が必要とする額をまめに確認するという部分、定期的に点検するよう事務の改善を求めますけれども、いかがでしょうか。

◎須藤 障害福祉部長

私からは、障害者日常生活用具給付事業の給付基準額について二点御答弁申し上げます。
 
まず、オストメイトへのアンケート等も含めた実態把握、基準額との乖離がある、それを埋める努力についてです。
障害者日常生活用具は、障害者総合支援法の地域支援事業の一つで、自治体の要綱等により実施されている事業となります。機能障害による日常生活での不便を軽減するため用具等を給付する事業で、自治体が品目ごとの基準額を決めることができる制度となっております。

区では、ストーマ装具の給付に当たり、皮膚の保護や皮膚へ装具を密着させるための用具類についても認めており、ストーマ装具は非課税で、用具類は課税物品に当たりますが、消費税率が変わった際にも税率を考慮した基準額の変更は行っておりませんでした。このため、令和五年度予算要求に当たりましては、ストーマ用具類の消費税額の変更分に相当する額を上乗せした基準額となるよう算定をしている状況です。
ストーマ装具のように消耗品に分類される日常生活用具では、使用状況を考慮した基準額の設定が必要と考えられますので、今後、実態把握に向けて、当事者やストーマ業者へのアンケートの実施等を含め検討し、障害者日常生活用具の給付が、障害者の円滑な日常生活につながるよう取り組んでまいります。

次に、定期的に必要額を把握し、基準額が適正であるか点検するなどの事務改善について御答弁申し上げます。
障害者日常生活用具給付事業では、用具の品目ごとに対象や性能、基準額、耐用年数等を定めています。
日常生活用具は一般商店等で販売されているものではないため、基準額は事業者による標準価格を参考に自治体が定めています。オストメイトの方は、ストーマ装具の基準額の範囲内で、個々の障害状況等により、御自身に合うストーマ装具が使われていると考えられ、使用状況の把握が難しく、長い間、基準額が据え置かれてまいりました。
区では、総合支所や関係機関とともに、毎年夏頃に日常生活用具に関する検討会を行い、用具の見直しや新製品の取扱い等について確認をしておりますので、今後はこの検討会におきまして、用具の使用状況も踏まえた基準額についても点検し、適宜必要な見直しが図れるよう検討してまいります。以上です。