◆上川あや

最後に、区が素案を取りまとめた個人情報保護条例の全部改正についてです。

昨年五月に公布されたデジタル改革関連法により個人情報保護法が改正され、従来、国と自治体、民間で異なっていた個人情報のルールも一本化されることが決まりました。しかし、全てが一律というわけではなく、区の裁量で条例化できる部分も残されています。その一つが、条例要配慮個人情報の設定です。
改正個人情報保護法では、その中で明示的に規定されていない個人情報でも、自治体においてその保有が想定され、その地域性に応じて不当な差別、偏見、その他の不利益が生じないよう特に配慮を要する場合には、その自治体が適正な取扱いを確保できるよう、条例で条例要配慮個人情報として定めることができる規定が設けられています。

しかし、この条例要配慮個人情報に対する区の考えを最新の常任委員会資料から確認しますと、具体的な想定事項がないことから現時点では規定を置かないこととすると、あっさり素通りです。本区は、男女共同参画と多文化共生を推進する条例を制定し、全国で初めて民族・国籍差別を禁ずるとともに性的指向、性自認に基づく差別も禁じた人権擁護の先進自治体の一つです。
また、お隣、渋谷区と共に、全国に先駆け同性カップルを認める同性パートナーシップ宣誓制度をスタートさせ、この七年で利用者は四百名を超えています。こうした中、既に国の個人情報保護制度の見直しに関するタスクフォースによる最終報告でもLGBTに関する事項、一定の地域の出身である事実等が条例要配慮個人情報の例として示されているところです。

ならば、ぜひ区には条例要配慮個人情報の整備を目指していただきたいと思うのです。区外を見渡せば、二〇一八年四月施行の国立市条例を皮切りに、性的マイノリティーの性自認や性的指向などを第三者が勝手に暴露するアウティングと呼ばれる行為を禁止する条例制定が増えており、都内では港区、豊島区、江戸川区でも成立をしております。こうした中、世田谷区の個人情報保護条例での対応が劣後に置かれることがないようにと願っています。

そこで、最初の質問です。
条例要配慮個人情報を規定した法第六十条第五項が前提とする地域の特性その他の事情には、本区が独自の施策として取り組んできた同性パートナーシップ宣誓や性的マイノリティーに特化した電話相談等の個人情報も含まれ得るように考えるのですが、いかがでしょうか。

二点目に、関連規定の解釈をめぐる国の個人情報保護委員会とのやり取りから、現状では条例要配慮個人情報にLGBTや国籍等の違いを追記することが難しい場合でも、それに代わる内部規定はしっかり定めると、お約束をいただきたいと考えております。この点、いかがお考えになるのかを伺い、壇上からの質問を終わります。

◎池田 総務部長

私からは二点、まず個人情報保護条例における条例要配慮個人情報についてです。

改正個人情報保護法は、各自治体が保有する個人情報のうち、地域の特性その他の事情に応じて本人に対する不当な差別、偏見、その他の不利益が生じないように、その取扱いに特に配慮を要するものとして、条例で要配慮個人情報を定めることができる旨を規定しております。
御指摘のとおり、世田谷区では同性パートナーシップ制度をはじめ、独自の政策に基づき様々な個人情報を取り扱っており、また、男女共同参画と多文化共生を推進する条例において差別を禁じていることからも、LGBTの方などに関する個人情報には十分な配慮が必要であると認識しております。

一方、国の個人情報保護委員会からは、法律の規定は、主にその自治体が個人情報保護の観点において他の自治体とは異なる地域特性を有している場合を想定したものであるとの回答を得ており、審議会でもLGBTの方の個人情報の取扱いについて丁寧な議論をいただいたところですが、現時点で法に規定する地域の特性、その他の事情に該当する個人情報とまでは言い切れないことなどから、条例素案では区独自に要配慮個人情報を定める規定は設けてございません。
改正法の該当規定については、いまだ国の解釈にも不確定な部分があることから、引き続き、国や他自治体の動向に関する情報収集に努めるほか、現在実施しておりますパブリックコメントや今後の審議会の議論なども踏まえ、条例案の整備に向け、引き続き検討を重ねてまいります。

次に、条例に係る内部規定についてでございます。
今回の条例改正に際し、情報公開・個人情報保護審議会からは、条例に区独自の要配慮個人情報に関する規定を設けることは見送ることが相当であるとしつつ、LGBTの方やDV被害者の方などに関する個人情報には特段の配慮が必要であり、現場での対応にそごが生じないよう、可能な限り具体的な内部規定の整備を検討すべきとの趣旨の御意見をいただいております。
今後の検討を通じて、条例に区独自の要配慮個人情報に関する規定を設けるか否かにかかわらず、内部規定の整備を通じてLGBTの方やDV被害者の方の個人情報が保護されるよう取り組むべきものと考えております。内部規定の具体的な内容などにつきましては、改めて審議会に諮問をさせていただき、その御意見を十分踏まえて整備してまいりたいと考えております。以上でございます。