◆上川あや

初めに、障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例について伺います。

第一の課題は、条例素案の第三条基本理念で区がうたう理念と、第八条合理的配慮で区が求める配慮の内容にそごがあることです。第三条基本理念はその一で、区民は障害を理由とする差別に加えて、性別及び性の多様性に由来する複合的な要因により困難な状況に置かれる場合は、その状況に応じた適切な配慮がなされることと、性別及び性の多様性に起因する複合差別等にも適切な配慮がなされるべきことをうたいます。私は、この高い見識を評価しています。

ところが、第八条合理的配慮の規定案に性の多様性への言及はありません。第八条は、障害者等から現に社会的障壁の除去を必要とする旨の意思の表明があった場合に、障害者等と建設的な対話を行い、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者等の性別、年齢、障害の状態等に応じて社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮をしなければならないと義務規定を定めます。
つまり性については性別にのみ配慮を求め、性の多様性に配慮を求める上では必須であるはずのキーワード、性的指向と性自認を記していません。これでは合理的配慮の対象に性の多様性は含まれず、第三条の規定に反し不適切です。加筆を求めますがいかがか、区の見解を問います。

第二に、第十一条の相談対応についてです。第十一条第一項で、区が、障害者、その家族、その他関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応じるものとするとありますが、何をもって的確とするのか不明です。ここはお役所目線の的確であってはならず、差別を受けた当事者に寄り添う姿勢を明確にし、差別解消の実効性に期待を抱いていただける規定であるべきです。区の見解を問います。
また、都の障害者差別解消条例では、一、障害を理由とした不当な差別的取扱い、二、合理的配慮の不提供の双方が相談対応、相談支援の対象であることが明確です。ところが、本区の規定案では、障害を理由とする差別の相談に応ずると書くだけで、合理的配慮の不提供も含むかどうか不明です。両者が対象になると明記するべきです。区の見解を問います。

第三に、同条第二項で区は、障害者差別に関する相談内容に応じて、一、事実の確認及び調査を行うこと、二、相談者に対して必要な助言または情報提供を行うこと、三、関係機関への通知その他連絡調整を行うことの三点を挙げています。
ところが、それら三つの支援対象が第二条定義でいうところの区民、つまり区内に居所、勤務先または通学先がある者の全体に及ぶのか、また、区民が区外で受けた差別も対象になるのか不明です。区内で起こる障害者差別全体の解消を図るなら、当然、第二条で規定する区民全体が対象であるべきですし、区民が受けた差別全体の解消を図るなら、区外で受けた差別も排除するべきではないはずです。この点、区はいかがお考えなのですか。それぞれ第二項に含めるよう求め、区の見解を問います。

この質問の最後に、同項第三号の関係機関への通知その他に連絡調整も、より具体的で実効性ある規定とするべきです。ここでいう通知とは何を指すのか、また誰に何を連絡し、どう調整するかも不明です。都条例は、この点、都知事による勧告、事業者名の公表など具体的対応まで規定し、支援の中身が明確です。区も当事者の安心に足る支援の具体策を明記するべきです。区の見解を問います。

◎須藤 障害福祉部長

私からは、条例素案、それから住宅用火災警報器の二つの項目について順次御答弁申し上げます。

まず、第八条、合理的配慮の規定案への性の多様性の加筆についてです。
区では障害理解を促進し、障害者差別の解消を図るため必要な施策を総合的に講じて、地域共生社会の実現を目指す条例について、障害当事者や家族、区議会、専門家会議等から御意見をいただき今回素案としてまとめました。地域共生社会の実現に当たっては、地域に暮らす多様な人々が、その多様性を互いに尊重し、異なる価値観を認めることが重要であり、性に対する認識もこの一つであるというふうに考えております。お話しの八条合理的配慮の部分につきましては、基本理念を基に、生物学的な性別、性自認、性的指向など性の多様性に関する記載を検討いたします。

続きまして、相談対応における的確についてです。区では、障害当事者や家族、関係者からの障害者差別に関する相談に対応するため、専門調査員を二名配置し、不当な差別的取扱いの確認や合理的配慮の確保に向けた聞き取り調査、差別解消のための調整等を行っております。お話しの的確という部分については、障害当事者や家族が安心して相談していただき、区が当事者に寄り添った相談支援を提供することが分かる表現となるよう、他事例も参考に検討してまいります。

続きまして、相談対応において合理的配慮の不提供が対象となるかについてです。
障害者差別解消法や東京都の障害者差別解消に関する条例では、障害を理由とする不当な差別的取扱いにより、障害者の権利、利益を侵害してはならないとしており、あわせて、行政機関や事業者に対して合理的な配慮の提供を求めています。不当な差別的取扱いと合理的配慮の不提供は、障害者差別の解消を進める上で大切な考え方であり、本条例においても、双方が相談支援の対象となりますので、今後、より分かりやすい条文にできないか、関係所管と調整、検討するとともに、区民への分かりやすい周知についても検討してまいります。

続きまして、同じく相談対応における支援について、区外の事業者等による差別も対象としているのかということについてです。
障害者差別解消法では、相談対応に当たり障害者の居住地や通学先、勤務先など、どこの自治体が責任を持つのか明確にはされておりません。現在、区の専門調査員に対して障害者差別に関する相談があった際には、障害者の居住地にかかわらず丁寧に対応し、必要に応じて居住地の自治体と連携をしております。例えば区内に住む方の勤務地が隣接区にあり、その事業所内で起こった障害者差別についても、都や隣接区と連携しながら、差別解消に向けた相手先との調整や働きかけなど、区が責任を持って対応し、障害者の安心につなげてまいります。区内に在住、通勤、在学する障害者を対象に、障害者差別に関する相談に適切に対応していくことについて、明確化できるよう検討してまいります。

続きまして、相談対応における通知、連絡調整、障害当事者に安心に足りる具体策の明記についてです。
障害者差別に関する相談内容には、雇用に関わる労働問題や障害者虐待の疑いが見受けられることがあります。障害者虐待防止法では、虐待の通報を受けた自治体が都道府県に通知を行うことなどが定められております。連絡調整につきましては、障害当事者の状況により、本人の同意を得た上で、支援機関や居住自治体と連絡を取り、区の専門調査員と役割分担をしながら、差別解消に向けた相手方への調整などを行ってまいります。区といたしましては、こうした具体的対応を相談者に分かりやすく説明できるよう、区の専門調査員に関する要綱に明記することや、区ホームページでの案内などについて検討し、このたびの条例の基本理念を踏まえ、障害当事者の安心を確保しながら、障害者差別の解消に取り組んでまいります。

◆上川あや

障害者差別の御相談対応について再質問いたします。

区民が区外で差別を受けた場合の御相談について、区は区外の自治体とも連携を取って相手方の調整等に動くという御答弁だったんですが、区外の自治体からしますと地域の住民でもないわけで、区の連携の呼びかけに応じる義務ももとよりないわけです。御協力が得られない場合、区は単独でも区民被害者の差別の解消に向け動かれるお考えがあるのかどうか、再確認できればと思います。

◎須藤 障害福祉部長

障害者差別の御相談対応について、再質問にお答えいたします。

区の専門調査員は、障害者差別に関する相談について、区内に在住、通勤、通学する障害者を対象として相談に応じておりますので、区内に在住する障害者の方が区外の事業所で差別を受けた場合であっても、その事業所での合理的配慮の確保や差別解消のための調整等を行っております。区がお受けした障害者差別の相談については、相談者が支援の隙間に落ちることがないよう責任を持って対応してまいります。以上です。

◆上川あや

今の御答弁を伺って安心いたしました。しっかりその安心が障害当事者に伝わるように、規定の整備ですとか、案内の充実に取り組んでいただくよう求めまして、私の質問を終わらせていただきます。