◆上川あや

最後に、区の文化・芸術振興計画に関連して伺います。

現在、策定作業を進めている同計画案では、政策目標二の親しむの中で、年齢、国籍、障害の有無、また経済的状況にかかわらず、身近なところで文化・芸術に触れ、親しむことができる機会の充実に取り組むとしております。私は、この経済的状況にかかわらずという部分が大変新鮮ですばらしいコンセプトだなと感じたのですが、これをどう実践するのかで自治体の姿勢や評価は分かれる気がしています。

一つは、無料のイベントや展示を増やすから金銭的に余裕のない方はそれらだけを利用すればよい、有料の公共施設もあるけれども、それらの垣根を下げるつもりはないというもの。もう一つは、無料のイベントや展示を増やす一方で、有料の美術館等についても、所得状況に応じて住民のアクセス権は保障するという考えです。
区外を見渡しますと、後者の考え方に立つ公共美術館は少なくありません。例えば、北海道、石川県、山口県、茨城県の県立美術館は全て生活保護の方々に無料とあります。常設展はもちろん特別展の場合も無料のケースが多く、私もこの後者を目指すべきだろうと思うんですね。もともと美術館も含めた法規定である博物館法は無料公開を原則とします。料金設定こそが例外です。誰にこの例外を当てはめるかは、まさに区の判断なのです。当区では、郷土資料館を除いて、世田谷美術館とその分館、世田谷文学館のいずれもが有料であり、生活保護受給者等への配慮もありません。区民共用の財産を展示する常設展ですら有料のままとなっています。
この点、再検討される余地もあって、さきのような理想を掲げていらっしゃるのでしょうか。それとも、無料の展示、イベントを増やすから、経済的に苦しい方はそれらで我慢をしてくださいという意味での計画ですか、区の基本姿勢を問います。

◎松田 文化・芸術振興課長

文化芸術基本法の基本理念を踏まえ、区の文化・芸術振興計画では、誰もが参画・協働できる文化・芸術環境の整備を視点の一つとし、年齢、国籍、障害の有無、経済状況にかかわらず、文化芸術を身近に鑑賞、体験ができる機会の充実に取り組むこととしております。
こうした点を踏まえ、区では、美術館や文学館の収蔵品を安価で楽しめる常設展の開催や、開館記念日、敬老の日、小中学生の土日、夏休み期間の常設展無料観覧の実施、また、展覧会の魅力を動画で紹介する世田美チャンネルの公開など、デジタル技術を活用した文化芸術の発信も行うなど、多様な手法を用いて、身近なところで文化芸術に触れ、親しむことができる取組を進めているところです。

お話にございました生活保護受給者の美術館、文学館の無料観覧につきましては、議論を深めていくべき課題であると認識しております。他の自治体の事例も踏まえ、庁内関係所管と協議しながら検討してまいります。

◆上川あや

ぜひ改善していただければと思います。