◆上川あや

初めに、教育ビジョン・調整計画(素案)について伺います。

九月に示されました同素案では、最上位に掲げる教育目標の冒頭で、全ての教育活動を通して人権教育を推進すると書いています。ところが、同計画の体系の一覧で、取組項目の一つに人権教育の推進とあるにもかかわらず、当該ページを開くと丸々表題ごと、「いじめ防止対策及び不登校支援等の総合的な推進」に置き換えられています。都教委の人権教育プログラムが掲げる十五の人権教育課題など、みじんもないことに驚きます。ビジョンでは最上位の教育目標に人権教育の推進と掲げながら、取組項目の人権教育は全くの空文です。おかしくないでしょうか。

問題が大きいと思うのは、区の男女共同参画と多文化共生を推進する条例が規定をする教育活動にも全く触れず、通り過ぎる点です。同条例第八条第一項で、区は、性的マイノリティーの性等の多様な性に対する理解の促進や、国籍、民族等の異なる人々の文化的違いによる偏見又は不当な差別の解消等を基本的施策に掲げ、同第二項では「区長は、前項に定める基本的施策を効果的に推進するため、必要な教育又は啓発を積極的に行うものとする。」と規定をしています。ところが、これに対応する規定、記述もないのです。
区が掲げる多文化共生社会実現に向けての差別解消の教育、また、性の多様性理解に向けての人権教育等については、条例規定がある以上、その記述がなければおかしいと考えますけれども、いかがでしょうか。

◎毛利 教育指導課長

第二次世田谷区教育ビジョン・調整計画(素案)については、現在最終の見直しを進めているところです。人権教育の推進については、乳幼児期から小中学校における質の高い教育に関わる内容のため、リーディング事業としての位置づけや内容について検討しています。
また、子どもたちが全ての教育活動において人権や生命を貴び、重んじる精神を学ぶことは重要ですので、世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例等を踏まえた人権教育、道徳教育のさらなる充実を図っていくことが必要であると考えております。
今後、委員御指摘の性の多様性理解や、国籍等の異なる人々への偏見、差別の解消などの視点を踏まえまして、具体的な個別の取組を作成してまいります。

◆上川あや

続いて、教育実践について伺います。

二〇一七年策定の、区の第二次男女共同参画プランでは、課題十二に「性的マイノリティ等多様な性への理解促進と支援」を掲げ、その施策に沿った事業展開では教育指導課が行う事務として、次の三つが明記されています。一つ目に、区立学校教職員を対象とした人権教育推進に関わる研修の実施、二つ目に、実践的な人権教育の計画的な実施、三つ目に、性的マイノリティの理解の授業のための教材の検討です。この二つ目、実践的な人権教育の計画的な実施では、区教委の従前からの答弁や御説明とは全く異なる実情を区立学校の先生方から聞きました。
区教委はかねてより、全ての区立学校の人権教育の全体計画に性同一性障害と性的指向を位置づけ、現場を指導していると答弁を繰り返してきました。また、私に対しては、それらに加え、より具体的な年間指導計画にも両者を位置づけてきているともしてきました。

ところが、先週末、区立学校の先生方にお会いをし、実際の資料の御提示を受けますと、当該の人権教育の二つの計画にそれらの記述が全くないということが分かりました。同計画は二年に一度、区教委にも提出をしており、しかし、是正を求められたこともなく、当然、性の多様性に触れた人権教育も行っていない。加えて、区立の学校では区内での異動が多く、他校から異動してきた先生方に尋ねても、そうした教育実践はないというのです。
これは一体どういうことでしょうか。区教委の従前の御答弁や御説明、男女プランの記述も全ては空手形でしょうか。実態を調査し、従前の御説明どおりに善処することを求めますけれども、いかがでしょうか。

◎毛利 教育指導課長

学校における人権教育については、全ての学校において教育全体計画に性同一性障害、性的指向などの人権問題についての理解を位置づけるよう指導しておりましたが、委員の御指摘を強く受け止め、各学校の取組の状況を点検し、今後このようなことがないようにしてまいります。

年間指導計画につきましても同様に、記載内容を確認するとともに、計画や実施内容が形骸化することがないよう、今後も各学校の教育課程の編成、実施の際に指導助言を行うとともに、指導に当たる教員の人権教育に対する課題認識を一層高めてまいります。あわせて、人権教育推進校の研究成果や教材開発した資料を広く共有し、区内全ての学校で、より質の高い人権教育が実施できるよう、取組方法や内容などを検討してまいります。

◆上川あや

最後に、現に区立学校に在籍する性的マイノリティーの子どもたちについてです。

区教委では、私の提案を受け、二〇一四年度以降、毎年区立学校における性的マイノリティーに係る相談対応について調査をしています。近年、LGBTへの認知が進む中、その相談件数も増加傾向にあるようです。その最新の御報告では、区立の幼小中合わせて三十一名の相談事例があるようです。
御提示いただいた概要を見て気になるのは、学校が個別の御相談に応じ柔軟に対処する様子がうかがえる一方で、少なくない現場でどう対応するべきか苦慮し、戸惑われている様子が見て取れる点です。

そこで提案です。区教委の人権教育推進委員会には、多様な性に対する臨床心理学的支援が御専門の佐々木掌子明大准教授もいらっしゃるのですから、ケースに応じてスーパーバイズを受けてはいかがでしょうか。子どもと保護者、学校との間に共通理解を育て、適切な支援にもつながる、他の教育委員会にはない、よい取組になると考えますけれども、いかがでしょうか。

◎毛利 教育指導課長

世田谷区では毎年、学校における性的マイノリティーに係る対応に関する調査を継続的に実施しております。委員御指摘のとおり、調査によって明らかになった課題については、個に応じた指導が実現できるよう、人権教育推進委員会の専門家に適宜相談を行い、御意見を伺いながら、カウンセラーなどの活用も含めまして、学校全体で適切な支援に努めてまいります。

◆上川あや

ありがとうございます。
 
昨年、区が実施した男女共同参画に係る区民意識調査では、自分の性の在り方、好きになる相手の性別や、自分自身の性別への違和感などに悩んだことがあるという回答は二・八%でした。これは四十人学級に当てはめれば、クラスに一人はいる計算になります。性的マイノリティーの可能性のある人は決して少なくないんですね。それでいて、区が以前、性的マイノリティーの当事者、約一千人を対象に行った調査で、自殺したいと思った割合、四九・七、子どもの頃、ジェンダー、セクシュアリティーに関する正しい情報の不足で困ったという回答が六六・六です。性的マイノリティーの子どもがいないのではなく、いることを前提に御対応いただくことを求めまして、私の質疑を終わります。