具体的な成果

★等々力渓谷でシュロを減らす管理が始まりました。

 

温暖化で武蔵野の在来植生ではないシュロの繁茂が各地で問題化。在来種を脅かしています。
等々力渓谷も例外ではなく、上川の提案でシュロの密度を落とす渓谷公園の管理が始まりました。

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◆上川あや

区立公園の管理について取り上げます。先手先手で対処しないと、かえって行政コストの増大を招きかねない案件だと思っております。

まずはパネルを御覧いただければと思います。最初に種明かしをしますと、この写真は現在の等々力渓谷の公園内の写真です。ヤシ科の植物、シュロばかりが繁茂している光景なんですが、区長はこれを見て、まずどのような感想をお持ちになるでしょうか。

◎保坂 区長

写真を拝見すると、一見沖縄とか南国の光景かなというふうに見ましたが、等々力渓谷ということでございます。シュロがかなり繁茂しているということでございます。古くから生活に密着してきた植物であるということでもありますので、このボリューム全体を景観に見合ったものにしていく必要があるのかと思います。
等々力渓谷保存会の皆さんが、長い年月この渓谷の手入れをして大事に環境保全をしていらっしゃいます。区としてもこれまで維持管理に努めてきましたが、今後、保全手法の見直しなど対策が必要だと考えますので、保存会の皆様とも相談しながら対応してまいりたいと思います。

◆上川あや

このところお会いする課長さんごとに写真をちょっとお見せしていたんですけれども、今の等々力渓谷なんですよと言うと皆さん一様に驚かれまして、東南アジアのようみたいな御感想も次々に聞かれました。

等々力渓谷は、区内唯一の都指定の名勝です。緑濃い良好な住宅街を印象づける、区を代表する観光スポットの一つですが、この状況です。等々力渓谷公園内の案内看板には植生に関する案内もありまして、等々力渓谷の植生は武蔵野台地の崖線の潜在自然植生と考えられると説明をされますが、実際にはこの状況です。

目黒の国立科学博物館附属自然教育園の資料では、ヤシ科のシュロは、もともと中国の亜熱帯地方に生育するもので、日本には平安時代鐘木、鐘をつく木や縄の材料として移入されたと説明をされます。つまり、武蔵野の、等々力の自然植生ではないことは明らかです。加えてシュロは、国立環境研究所の侵入生物データベースでは、在来種との競合が明記をされている要注意樹木です。そのようなシュロが等々力渓谷公園内に繁茂して、一部では優占種のような光景です。
在来植物の圧迫も懸念されますが、現在区ではどのように管理をしているのか、まずは御説明をお願いしたいと思います。

◎笠原 みどり33推進担当部長

お話しの等々力渓谷公園でございますが、二十三区内とは思えない鬱蒼とした自然林と生息する生き物が一体となった、奥深く物静かな景観が評価され、平成十一年に都の名勝に指定されております。

御指摘のシュロは、中国や九州地方南部が在来分布とされるヤシ科の植物ですが、昭和四十年の調査結果でも既に等々力渓谷内での生育が確認されております。シュロは、シュロ縄、たわし、ほうきなどに使用されるなど、人の生活との関係が古く、かなり以前より生育していたものと考えられます。

維持管理につきましては、等々力渓谷の優れた環境を将来に残していくため名勝指定を受け、平成十五年三月に管理方針を定めております。この方針に基づき維持管理に取り組んできておりますが、樹林全体は植生を自然の遷移に任せていく一方で、その阻害要因ともなるシュロなどについては、全てを除くのではなく密度をコントロールするとしております。この数年は台風による被害の復旧や生育旺盛なツタ類、枯れ枝などの除去に重点を置いておりますが、これまでも部分的にはシュロへの対応を行ってきているところでございます。

◆上川あや

部分的に対応しているという御答弁なんですが、適正な管理とはなっていないから現在があるわけですよね。
今御説明になった等々力渓谷の管理方針を拝見しました。
基本的考え方の第一は、固有の地形、地質、湧水、植生などの要素とその秩序の維持、回復ですが、現状は同方針から逸脱しつつあります。加えてこの中では、在来の植物の生育を阻害するシュロ等についてはその密度をコントロールすると明記をされていますが、適切なレベルでの管理はない、そういうことだと思います。

先ほど御紹介した自然教育園によりますと、一九六五年、園内で観察されたシュロはたった二本だったそうです。しかし、二〇一〇年の調査では二千三百二十四本、園内の全体の木の二割に急増しまして、十年後にはその倍増が予想された。そこで、現在では同園でも園路を中心に積極的にシュロを取り除く管理が行われているそうです。同園は、シュロが増えた原因を、温暖化で土壌が凍結しなくなったためだとしています。シュロの木は亜熱帯性で、冬の間も光合成をやめません。地面が凍結すれば水を吸い上げられずに枯れたのですが、現在の東京では土壌が凍結せず、成木に成長できるようになっている。成木になれば、当然実が落ち、シュロの周辺密度は増します。その実を食べたヒヨドリが他の場所でふんをすれば、その場所でも生着をし密度は増します。その繰り返しであるようです。

こうしたシュロの急増は、えべっさんの愛称で知られる商売の神様、兵庫県西宮市の西宮神社の社叢林二・六ヘクタールでも起きています。かつてはクスノキの大木で知られてきたこの森ですが、二〇〇三年、神戸大学大学院の調査では、千五百本以上のシュロに覆われて、在来種の幼木が育たなくなったことが観察をされた。このため、同大大学院の森林生態学の専門家、石井弘明准教授を中心に、シュロの除去と在来種の植え付けで在来の森を守る取組というものが進められているそうです。宅地に囲まれ孤立をした自然は、人の手が入らないと維持はできないというのが准教授の見立てだということです。
これらの取組と同様に、等々力渓谷でもより積極的にシュロを取り除く管理が本来あるべき植生の回復と景観の保持に必要ではないのでしょうか。いかがでしょうか。

◎笠原 みどり33推進担当部長

お話しのとおり、シュロの個体数が大変増加傾向にあることは確かだと思います。在来分布を超えて広がっているシュロなどの植物を樹林地内の優占種とせず、在来植物の成長に影響しない程度までコントロールしていくことは、樹林地管理において大変重要な視点だと認識しております。
今後の対応ですが、複数年かけて密度を減少させていく中で、その後も実生で増え続けるシュロについて、大きく成長させ過ぎないように、作業手間と費用を軽減させながらコントロールできるよう努めてまいります。引き続き、等々力渓谷保存会、地元大学など、様々な主体との連携協力の下で、一緒にふさわしい風景維持に取り組んでまいります。

◆上川あや

シュロの繁茂は、世田谷線に面した若林の樹林地、峰松緑地などでも一部に見られます。ほかの公園樹林地にも広がりを持つのではないかと危惧をしています。若木のときにはすぐに抜けるんですけれども、大きくなったら毛が絡まって、これは伐採が大変なんですね。行政コストがかかりますので、早め早めに対処していただくことをお願いいたしまして、私の質疑を終わります。