◆上川あや

第三の課題は、区の養育里親認定基準の不適切な運用についてです。

先日、私の元に区のパートナーシップ宣誓を利用しているカップルより落胆のメッセージが届きました。
区の里親認定をサポートしている団体に自分たちの事情も打ち明け制度の利用を問い合せたところ、同性カップルも収入等条件を満たせばオーケーと説明された一方で、両方の親族の同意がなければ里親認定はできません、残念ですがとはっきり告げられ、大変驚き落胆したと言います。
これでは親族とのつながりのない、あるいは良好な関係にない児童養護施設出身者や養育世帯出身者は、本人の意欲や適性にかかわらず真っ先に排除されるほかなくなります。加えて、同じく本人の意欲や資質以前に、自分が自分であるというだけで親族の理解を得られない性的マイノリティーの多くも断念を余儀なくされるでしょう。明らかに差別的であり、不適切なルールです。

性の多様性をめぐっては、ここ数年急速に理解が進んだ一方で、まだまだ身近な家族が当事者だった場合に、拒否感が強いことが調査からも明らかになっています。
国立社会保障・人口問題研究所の研究者を中心としたグループが、二〇一五年、厚生労働省科学研究費事業の一環で調査した結果からは、職場の同僚が同性愛者だった場合に、嫌だ、またはどちらかといえば嫌だと答えた回答は合わせて四一%と半数に満たなかったのに対し、自分の兄弟が同性愛者だった場合の嫌だと、どちらかといえば嫌だの合計は六六・九%、自分の子どもが同性愛者だった場合のそれは七二%へと跳ね上がりました。身近な家族の無理解に苦しむ性的マイノリティーの当事者は、その無理解ゆえに親族の同意を取ることは当然に厳しく、区の里親制度からも排除されかねない構図です。

ところが区に問うと、そもそも区の里親認定基準の一覧にそのような要件はありません。聞けば、明文化されていないながらも存在し続けてきた判断基準の一つであるという説明です。
区の行政手続条例第五条第一項及び第二項は、審査機関に対し、申請に対して許認可等するかどうかの判断基準をあらかじめ定め、その基準は、できる限り具体的でなければならないとしています。続く第三項では、特別の支障があるときを除き、その審査基準は公にしておかなければならないとも定められています。
つまり許認可基準はあらかじめその詳細まで明文化されていなければならず、かつオープンでなければいけません。ところが、前出の口頭ルールは全く明文化されていない裏ルールというべきものであり、同条例に反するものです。加えてその内容も不適切です。親族の同意は望ましい基準とはなり得ても、必須要件とするべきものではなく、その確認をルール化するにしても判断に柔軟性を持たせた上での明文化が必要です。
以上、事務の改善を求めますがいかがでしょうか。区の見解を問います。

◎知久 子ども・若者部長

私からは、養育里親認定基準について御答弁させていただきます。

これまで、里親登録後に親族からの反対によって登録を取り消し、養育委託された子どもの委託が中断された事例がございましたことから、慎重を期すために都区共通の取扱いとして、里親登録に当たり親族の同意の有無を確認させていただいております。
このような趣旨により確認をさせていただくものであり、必須条件とするものではなく、親族の同意が取れない事情のある家庭であっても、同意が取れない理由や、それによって子どもの養育委託後に問題が生じないかなどを丁寧に確認の上、問題がなければ里親登録する扱いとしております。
こうした親族の同意確認の趣旨や個別の事情に応じた扱いが、児童相談所や里親登録業務を委託している事業者に徹底されていなかったことについては大変申し訳なく思っており、改めてこれらの扱いについての周知徹底を図ることで、同様の事例の再発防止に努めてまいります。以上です。

◆上川あや

里親認定基準について質問いたします。
あらかじめ明文化もされていない判断基準、欠格条項とも聞こえるようなものが区民に対して示されたことは、行政手続条例に反した行いだと考えますがいかがでしょうか。
あと、今回明らかになった一件以外にも、同様に不適切な御案内をした方々がいたのではないかと思っています。その場合の対処はどうするのか。また、今回取り上げた以外、不文の裏ルール、そういったものはもうないと言い切れるのか確認いたします。

◎知久 子ども・若者部長

再質問にお答えをいたします。

まず、行政手続条例に反した行為ではないかという御質問です。
議員御指摘のとおり、条例等の定めに従って判断するために必要とされる審査基準として位置づけるものについては、区の行政手続条例にのっとり、これを明文化し、公にしなければならないものと認識しております。本件につきましては、委託事業者への親族同意確認の趣旨についての説明や指示が不十分であったことに起因するものであり、反省を踏まえ、今後は適切な運営の徹底を図ってまいります。

二つ目の今回の事例以外にも不適切な案内をしているケースがあるのではないかということは、これまで親族同意確認について不適切な案内がされてきた実態があることから、これまで里親登録についてお問合せや御相談をいただいた方々に対しまして改めて御案内をしたいと考えており、その方法について急ぎ検討してまいります。

三つ目、親族の同意確認のほか、確認の趣旨が徹底されていないような事項がないか、改めて確認をしたところでございますが、そのような事項はございませんでした。以上です。

◆上川あや

あらかじめ里親認定基準、うやむやにすることなくオープンにしておくべきだと私は考えています。ホームページ等で公開する考えはないのでしょうか。

◎知久 子ども・若者部長

再々質問にお答えさせていただきます。
議員御提案を踏まえまして、ホームページ等において里親登録の認定基準を明らかにお示しすることで、適切な事業運営を図ってまいります。以上です。