◆上川あや

初めに、浸水想定区域の仮庁舎に都市整備部門の職員等をほぼそのまま移すリスクについて伺います。

本庁舎の改築計画に伴い、二期工事終了までの四年と八カ月、住宅課を除く都市整備領域の五つの部を全て、環境政策部、施設営繕担当部を丸ごと浸水想定区域内の旧玉川高校跡地に移転する計画ですが、大丈夫でしょうか。同地に移る職員数は約五百名弱、玉川総合支所の全職員三百名を優に上回る計算となります。
区長は先月末の記者会見で、台風十九号で起きた多摩川沿岸での水害について、堤防が破堤する危険さえあったとの厳しい認識を示し、こういった災害は繰り返し起きそうだとして、排水ポンプ車二台の配備を含む水害対策の強化を打ち出しました。同ハザードマップでは、仮庁舎予定地はすっぽり多摩川沿岸の浸水想定区域内に含まれております。

そこで、想定される浸水の深さ、浸水深を都が公開している防災アプリで見ますと、同校跡地の東京都公文書館の表示をタップして六・八メートル、正面道路の上野毛通りをタップして八・四メートル、西に隣接する玉川総合支所の二子玉川庁舎で十三・三メートルまで水没することとなります。区が借り受ける旧校舎は、渡り廊下で四つの建物が各階同じ高さでつながる三階建て。これに想定される浸水深を合わせると、どうなるでしょうか。旧校舎のスペックが非公表ですので、ここでは仮に苫小牧市の公表する津波防災の資料から同市内の公立高校九校の平均値を用いて類推します。

地盤面から校舎二階の床面までの高さは九校平均で四・四六メートル、同じく三階の床面は八・三二メートルです。旧玉川高校の地盤面は前面の上野毛通りから約五十センチ高いと聞くので、校舎の正面の上野毛通りの浸水深八・四メートルからこの平均値を差し引くと七・九メートルの水没です。つまり一階部分は完全に水没、二階部分もほぼ水没となり、三階の床面近くまで水が来ることとなります。より浸水深の低い東京都公文書館の水深六・八メートルを採用しても、一階部分は完全に水没、二階も床面から二・三メートルまで水没です。つまり二階の物品はほぼ水没で使えず、人が滞在することもほぼ不可能でしょう。
では、どういう対処をするのかと区の担当に伺うと、浸水想定区域に仮庁舎が入るということはあっさりお認めで、最初に浸水リスクにさらされる一階部分には会議室等を多く配置し、止水板などを備えたいとの返答ですが、とても大丈夫とは思えません。

そこで、以下、伺います。
まず、区が借り受ける旧玉川高校の校舎、各階の地盤面からの高さについて報告を求めます。また、これを京浜河川事務所の浸水想定と照らすと浸水深はいかほどか、何階部分まで水につかるのか、区の想定を問います。その上で、区が備える止水板の高さは何メートルであるのか、出水に備えた改修は事前計画に織り込み済みであるか、特に出水時の非常用電源はどこに置かれるか、また、それらの改修は来年度の予算案に織り込み済みであるのか、確認を求めます。

次に、区の地域防災計画【風水害編】から水防組織図を見ると、水防本部長を務めるのは副区長です。以下、水防担当の副本部長を土木部長が、その下の土木対策総括班長をみどりとみず政策部長と道路・交通政策部長が務め、さらに、その下に来る水防担当組織にはずらりと都市整備部門の各部各課が並びます。つまり、五つの土木公園管理事務所を除く区の水防組織は、全て浸水想定区域内に含まれるという計画です。
整備担当に伺うと、多摩川の出水時は玉川総合支所に重要機能の一部は移されるといいますが、そのようなキャパシティーが同支所にあるでしょうか、あるとすれば、どの機能をどこに置き、何を仮庁舎に残すのか、また、一部のみを移して水防体制に問題が出ないのか、課題があるとすれば何か、その課題への対策は考えられているのか、問います。
また、区が災害時に利用できるボートについて災害対策課に伺うと、現在備えはないそうです。来年度予算での購入を予定しているといいますが、配備先はどこになるのでしょう。また、一階が水没した時点で、仮にボートがあっても仮庁舎は機能しないと考えますが、いかがですか。あわせて見解を問います。

浸水想定の最大値まで水が出た場合、少なくとも仮設庁舎の一、二階はほぼ水没することとなりますが、それらに備えた資料、物品等の配備計画、避難計画もつくるべきではないでしょうか。それらの用意があるのか、確認します。加えて、そのような場合、仮庁舎の水没による都市整備部門を初め、各部各課の業務への中長期的影響は避けられないのではないですか。当区に風水害時の業務継続計画はいまだない状況ですが、どう考察をするのか、問います。

◎松村 庁舎整備担当部長

私からは、浸水想定区域の仮庁舎に移すリスクについて四点お答えいたします。

まず、旧玉川高校校舎各階の地盤面からの高さと浸水想定と照らし合わせた場合の浸水の深さについてお答えをいたします。
本庁舎等整備におきましては、工事期間中の執務面積の確保と円滑なローリング、駐車場不足の対応、工期短縮などのため、一期及び二期工事終了までの約四年半の間、都市整備領域、環境政策部、施設営繕担当部の仮庁舎として、旧玉川高校の校舎及び敷地の一部を東京都より借り受ける計画としておりまして、現在都と協議を行っております。
議員御質問の旧玉川高校校舎の各階の地盤面からの高さにつきましては、一階で〇・五メートル、二階で四・一メートル、三階が七・七メートルとなっておりまして、国土交通省京浜河川事務所が平成二十八年度に公表しております多摩川洪水浸水想定区域図による当該地の多摩川堤防決壊時の最大六・八メートルの浸水が発生したと仮定しますと、二階の天井近くまで浸水することとなります。
なお、昨年の台風十九号の際は、敷地内の一部で浸水があったものの、施設の利用には影響のない範囲だったことを確認しております。

次に、出水に備えた改修計画と来年度の予算案の反映について、また、多摩川の出水時は玉川総合支所の機能の一部を移すことについて御答弁申し上げます。
旧玉川高校を仮庁舎として使用する際の災害対策としましては、まず、短時間の集中的な降雨、いわゆるゲリラ豪雨対策としまして、高さ一メートルの止水板を開口部十六カ所に設置いたします。また、不要な開口部につきましては閉鎖をし、浸水に備えます。さらに、停電時にも区民対応等を可能とするため、ガソリンエンジン式の非常用発電機を屋上の塔屋部分に設置しまして、必要なパソコンや電話への電源を供給する改修工事を計画しております。これらの改修工事の経費につきましては令和二年度の予算案に反映をしております。
そうした上で、台風の直撃が予想され、玉川高校の浸水のおそれが高い場合、水防本部等の活動場所は玉川総合支所にすることを想定しております。改築後の玉川総合支所では、水防本部の活動場所として必要な気象情報や雨量、河川水位情報を収集するためのインターネット環境やモニターなどの配備が可能なため、現在準備を進めているところでございます。場所につきましては、水防に従事する職員数十名を収容できる支所内の会議室などの活用を想定してございます。

次に、浸水想定の最大値まで水が出た場合に備えた配置計画、避難計画について、また、仮庁舎が水没した場合の各部各課の業務への中長期的な影響への対応について、二点あわせてお答えいたします。
多摩川洪水浸水想定区域図によれば、多摩川の堤防決壊時には最大六・八メートルの浸水が発生するとされておりますけれども、これ以下の浸水があった際にも、仮庁舎が受ける被害を最小限に抑えるよう部署配置を計画してございます。
具体的には、執務室、文書庫などは上階の三階へ配置し、一階には会議室や物品倉庫、ロッカーなどを配置する計画としております。しかしながら、多摩川の堤防決壊といった大きな水害が発生した場合には、業務継続はできなくなることが想定をされます。災害により庁舎が利用できなくなった場合の各部署の業務継続計画につきましては、平成三十年三月策定の世田谷区業務継続計画〈震災編〉においては、都市整備領域等はせたがやがやがや館や代田区民センターといった代替施設の活用を想定しておりますが、多摩川の堤防決壊などを想定した水害時の業務継続計画は策定しておりませんので、令和二年末の都市整備領域等の移転までに、危機管理所管を初め関係所管と検討を進め、避難計画を含めた対応について整理してまいります。以上でございます。

◎関根 土木部長

私からは、二点についてお答えいたします。

まず、水防本部の活動拠点が玉川総合支所新庁舎に移る際の課題と対策についてです。
課題でございますが、まず、水防や土砂災害警戒等の担当者がそれぞれ活動することができるスペースを玉川総合支所内に確保する必要がございます。また、雨量・水位観測システムなど情報システムの稼働確保を初め、浸水被害などに迅速に対応するため、庁内や関係機関との連絡に必要な電話や防災無線などの通信機器の確保、さらに、水防現場等への出動に使用する公用自動車の駐車場の確保などが挙げられます。現在、これらの課題について、玉川総合支所や庁舎整備担当部などの関係部署と連携して、活動環境の確保に向け取り組んでいるところです。
なお、水防活動の現場体制は土木公園管理事務所が担っており、水防作業への影響はないものと考えております。

次に、災害時に利用できるボートの購入についてです。
区ではことしの台風シーズン前までに二隻のゴムボートの購入を予定しており、土木部所管の中町水防倉庫に保管する予定です。このボートは浸水被害に遭った区民を救助する際に地域水防本部において利用することを想定しているほか、平時においては河川管理用のボートとして活用する考えでございます。
以上です。

◆上川あや

仮庁舎のことなんですけれども、止水板の高さが一メートルということでした。仮に庁舎の一階に水が入ったら、もう基本的には機能しないということだと思うんですが、四百名を超える職員の次の受け皿の想定はなく、庁舎の人員や機材、費用等の避難計画もなく、庁舎が水没した後の業務継続計画もないままやっていることはおかしいと思いますよ。しっかりしてください。
終わります。