◆上川あや

生死にかかわる医療の現場で、同性パートナーが家族として扱われない課題を取り上げます。

先月四日の毎日新聞にあるショッキングなデータが紹介されました。
記事のタイトルは、性的少数者医療対応進まずというもので、石川県立看護大学の三部倫子講師が、東京、石川、静岡、一都二県の病院の看護部長にアンケートを送付し、二百五十二人から回答を得た結果として、同性パートナーの病院内での取り扱いについて次のように書いています。
成人の患者が病気や事故で意思表示ができなくなった場合、手術の同意を得る対象を誰にするかは、親族のみが四五%、親族に加えて内縁の異性パートナーまでが一〇%で、内縁の同性パートナーも含めるとの回答は三一%にとどまった。終末期の患者のみとりの際に病床にいられる人についても、内縁の異性パートナーを認めていない割合は二二%だが、同性パートナーになると三一%にふえる。つまり、手術の同意に関し、内縁の異性までを含める回答が四一%あったのに対し、同性パートナーまで認める回答は三一%にとどまりました。また、同性パートナーがみとりの場に立ち会うことさえ認めない病院も三割以上に上るなど、大変深刻な数字です。

ところが、この記事は次のように続いています。厚労省は二〇〇七年に策定した終末期医療に関するガイドラインで、ケアの方針を伝えるべき家族について、解説の中で、法的な親族関係のみを意味せず、より広い範囲の人を含むとしている。昨年三月の改定版では、記述が家族等と変わり、親しい友人等も対象になると明示された。
しかし、アンケートでは一九%がこのガイドライン自体を知らなかった。つまり、手術の同意にも、患者をみとる家族にも、同性パートナーは含まれ得る見解が既に国から示されているのに、当の病院に理解と受け入れは浸透していない。この現実を変える御努力を今回区にはお願いしたいと思っています。

区の男女共同参画と多文化共生を推進する条例第五条の区の責務で区は、区民及び事業者の協力を得るとされています。
また、第六条の事業者の責務で、医療機関を含む事業者は、条例の理念を踏まえ、その事業活動において必要な措置を講じるとともに、区の施策に協力するよう努めなければならないとされています。さらに、第七条の規定により、同性カップルへの差別は禁止です。
こうした事業者の責務と区の施策であるパートナーシップ制度、さきの記事でも触れられた厚労省のガイドライン、それぞれをしっかり区内の医療機関にも御理解をいただき、家族として受け入れるよう求めていただきたいと考えております。
区のお考えを伺います。

◎加賀谷 調整・指導課長

お話がありました国のガイドラインでございますが、人生の最終段階で本人の意思が確認できない場合において、本人の意向を推測し、最も望むであろう意思決定を行うものを家族等として、法的な親族関係だけでなく、親しい友人等も含め、広い範囲の人と説明してございます。
この間、区では、平成二十七年度のパートナーシップ宣誓制度開始に伴いまして、差別や偏見の解消のための確かな一歩となるよう、性的マイノリティーの方々の直面する生活上の課題、制度の趣旨を両医師会に説明をし、配慮を依頼したところでございます。区条例に基づき、ガイドラインの趣旨とあわせて、同性パートナーに家族と同様の対応をすることなど、関係者へ再度協力を働きかけてまいりたいと考えております。
また、来年度ですが、ガイドラインに沿って区民、関係者に同性パートナーを含む家族等とどのような治療を受けたいかなどをあらかじめ話し合っておくことの大切さを伝えるための在宅療養ガイドブックを作成しまして、医師会会員、非会員にかかわらず、在宅療養資源マップの更新に協力いただいた医療機関へ配付をする予定でございます。
こうした取り組みを通じまして、ガイドラインや区条例、パートナーシップ宣誓制度の普及を図ってまいりたいと考えております。

◆上川あや

前向きな御答弁に感謝いたします。

一方で、区が男女共同参画の条例規定に基づき、区内の医療機関に理解と協力を認めていただいたとしても、実のところ一方的にお願いをしたというだけでは、相手方の反応がわからず、区民にとっては安心できる医療機関は地域にないままです。同性パートナーも家族として等しく扱われる地域の病院、家族としての説明の場に同席、また、手術にも同意でき、みとりにまで参加できるような医療機関の見える化を希望いたします。
さきの本会議では、障害者、高齢者、LGBT等に理解のある協力不動産店のリスト化、見える化の御努力をお願いし、基本、了承をいただいたところですが、同様の工夫をこの分野でも手がけていただきたいと考えます。区の御見解を伺います。

◎加賀谷 調整・指導課長

例えば横須賀市などでは、市立病院における取り扱いとしまして、同性パートナーなど、患者自身が事前に決めた者が手術に同意できることなどをホームページに掲載している例などがございます。
先ほどの国のガイドライン改定の趣旨を踏まえれば、患者が成人の場合、同性パートナーも家族等として手術に同意できるものであり、医療現場において、区が発行するパートナーシップ宣誓書の受領証、こちらを御活用いただけると考えてございます。このことを医療機関への周知のほかに、特に世田谷区病院長会に向けて協力依頼を行ってまいりたいと考えております。
この推進条例に基づき、パートナーシップ宣誓制度が医療現場も含め、さまざまな場面で有効に活用されるよう、委員の御提案も参考に、効果的な取り組みについて条例担当所管と連携して、アプローチの方法を検討してまいります。

◆上川あや

最後に、来年度からスタートします区立の児童相談所について、他の全国の児童相談所がそうなんですが、養育里親の認定対象に同性カップルを含めていただけるのかどうかの確認をいたします。いかがでしょうか。

◎長谷川 児童相談所開設準備担当課長

特別区は、児童相談所の移管に向けた共通の課題といたしまして、里親の認定基準の検討を進めました結果、里親が都区間の転居を行った場合も登録が続けられるよう、都の認定基準を引き継ぐこととしてございます。区におきましても、都の基準を引き継ぐこととし、設置運営計画案においてこのことを示してございます。
こうした中、昨年十月、都は事実上、同性カップルの御家庭も里親登録できるよう、里親の認定基準を変更したところでございます。
区は、検討の経過や子どもの最善の利益の観点から、家庭の形を画一的なものと捉えるのではなく、愛情深く家庭的に養育される環境であることが認定の基準であるべきと考えます。同性カップルの御家庭も里親登録を可能とした改正後の都と同一の認定基準としてまいります。

◆上川あや

同性カップルの子育ても、異性のカップルと比べて遜色のないことは、欧米の先行研究で何度も確認されていることですので、ぜひ差別のない対応を重ねてお願い申し上げまして、私の質疑を終わります。