◆上川あや
本日、私からは、外国籍の人に対して極めて閉鎖的、排除的な特別区の職員採用選考について伺います。
まず、全体状況を把握するために、三点お伺いします。一点目に、特別区人事委員会のもと実施をされている二十三区一体の職員採用選考で、日本国籍であることを必須とした国籍条項は、一般事務職員ほかどれだけの職種に残されているでしょうか。
二点目に、特別区では、一見、外国人に門戸を開いている職種でも、実際には昇任試験は受けさせず、管理職には決してなれない等の任用制限がなお残ると考えますが、どのような状況でしょう。
三点目に、当区で採用する非常勤については国籍を問わないと理解しておりますが、よろしいでしょうか。
以上三点、お伺いいたします。
◎田中 総務部長
特別区の職員採用における国籍要件は、個々の職種における公権力の行使または公の意思形成の参画に携わる蓋然性の度合いなどを考慮して決定されております。現在、国籍要件が付されているのは二十九ある職種のうち、事務職や土木・建築職などの技術職、衛生監視など八職種で、区職員の割合で申し上げますと、約五八%となります。その他の職種については国籍要件はございませんが、在留資格等の一定の要件が必要とされております。
御質問の二点目、採用後の任用、昇任についてでございますが、まず採用後の任用については、外国籍の職員は公権力の行使または公の意思形成への参画に該当する職務には従事させないことが基本とされております。また、昇任につきましては、同様の職務に携わる蓋然性が極めて高いとの考えから、管理職としての任用はしないこととされております。
三点目の非常勤職員の採用につきましては、委員の御認識のとおり、国籍要件は設けておりません。
◆上川あや
今の御説明だけを聞きますと、外国人を地方公務員の職から排除することも一定の合理性があるように聞こえますが、特別区を除くほかの自治体の現状と特別区とを比較しますと、特別区が飛び抜けて閉鎖的、排除的であることは明らかです。
特別区が旧態依然とした国籍条項を一般事務職という根幹の部分で保持をしているのに対して、多摩地域の二十六市は、一般職員の採用について国籍条項を全廃しています。一つもありません。その後の昇進に関しても一切差をつけない市が、このうち十九市に上りました。つまり多摩地域の大部分の市では、国籍を問わず職員採用試験は受けられ、能力に応じて採用もされ、昇進もできる。当然、幹部職員にもなることができ、特段の不都合も生じていず、国から文句も出ていない。こうした実績が長年積み重ねられております。一般事務職の採用試験の入り口から排除し続けている特別区との差は非常に大きいと考えます。
しかも、議会事務局を介して都内二十六市全てを調査したところ、国籍条項を削除した時期も、もはや古過ぎて答えられないという回答が大半でした。加えて、今回、全国の政令指定都市二十市も調べましたが、同じく十三市で国籍条項はもはやありません。ここでも特別区の閉鎖性が際立っています。そもそも法律上、日本国籍を必須とする公務員は警察や消防など、ごく一部にしかありません。地方公務員法にも排除するべき規定は存在しません。
終戦から八年後、国が公の意思形成や公権力の行使には日本国籍が必要なのは当然の法理という見解を示した経緯はありますが、もう六十六年が過ぎ、時代は地方分権、共生社会へと大きく変化を遂げています。多摩地域ではとっくに全廃をされて問題のない国籍条項が、なぜ今日に至るまで特別区に残るのか説明を求めます。
◎田中 総務部長
特別区における国籍要件は、昭和六十年度以前に、技能系職種や医師、歯科医師の職について削除が行われ、その後、昭和六十年代には保健師や看護師、栄養士、平成に入って福祉や心理職に拡大するなど、順次削除が進められてきた経緯がございます。
その後、平成十年に特別区人事委員会から国籍要件を削除する場合の考え方として、職種の本来業務が専門的、技術的であることや、公権力の行使または公の意思形成への参画に携わる蓋然性が低いことなどを検討の基本とすることが示されております。現在もこの考え方に基づき、国籍要件を取り扱っており、先ほど御答弁申し上げたとおり、事務職や土木・建築職などの技術職、衛生監視の職には国籍要件が付されておりますが、整理すべき課題もあると認識しております。
◆上川あや
二〇〇一年、全国で初めて全ての職種から国籍条項を取り除き、配置、昇任などの任用制限までを撤廃した福井県、旧武生市では、九八年十月から総務課長を中心に職員採用要件見直し研究会を設置して、検討を重ね、半年後、公権力を持つのは市町村長など責任者だけとして、助役まで外国人も就任可能と結論をし、全国的な国籍条件撤廃の流れを生み出しました。
一方で、在日韓国人女性の管理職試験の受験を拒んだ都の対応を容認した二〇〇五年の判例もあり、一部職種について、任用制限を残すべきかどうか、なお多くの自治体は揺れております。しかし、一般事務職の採用試験の入り口から外国籍を一律に排除している特別区の現状というものは、非常に差別を助長する不適当なものだと私は考えております。世田谷区は、全国で初めて民族・国籍差別を禁止する条例をみずから提案し、施行しております。区は、区民、事業者に対しても国籍差別を認めておりません。外国人であるというだけで採用を拒否することは条例の精神に反します。みずから襟を正すことなしに、どうして区民、事業者に対して平等を求めることなどできるのでしょうか。
二十三区一体の人事制度だからと、多摩の二十六市では全廃されて久しいこうした国籍条件の残置を看過せず、特別区の担当者会議で積極的に課題提起していただくなどの行動を求めます。区の見解を伺います。
◎田中 総務部長
区では、基本構想において、国籍などにかかわらず、多様性を認め合い、自分らしく暮らせる地域社会を築くことを、また、多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例の基本理念においても、全ての人があらゆる分野の活動において、ともに参画し、責任を分かち合うことをうたっております。
国際化が進展する中、現在、区には多様な言語や文化的背景を持つ約二万二千人の外国籍の方がお住まいになっており、今後も増加が見込まれる中、基本構想等に掲げる地域社会の実現に向け、国際交流や多文化共生などへの取り組みは一層重要となります。
このような観点から、区職員として、国籍等にかかわらず、意欲のある方が受験できる環境を整えることは重要であると考えております。一方で、国籍要件の削除に向けては、先ほど御答弁申し上げた採用後の配属先、職務内容などの任用面や、昇任に関する課題もございます。
委員御指摘のとおり、この間、時代も大きく変化しており、社会的な背景や実情も踏まえながら、まずは今挙げた課題等を整理し、議論を深めることが必要であり、その上で特別区人事委員会と協議してまいりたいと考えております。
◆上川あや
ぜひ撤廃に向けて頑張っていただきたいと思います。