◆上川あや

男女共同参画と多文化共生を推進する条例第十一条に規定する苦情処理制度について伺います。
同条例の特徴の一つは、被害者救済に役立つ苦情処理規定があるところです。これは基本的には国の上位法、男女共同参画社会基本法第十七条の苦情の処理等の規定を引き継いだものだと理解をしていますが、いいでしょうか。

◎山戸 人権・男女共同参画担当課長

世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例は、男女共同参画基本法との整合が図られており、法第十七条に規定されている苦情の処理についても条例に規定しております。そのため、そのように御理解いただいてよろしいかと思います。

◆上川あや

同法第十七条は国の施策について規定したもので、自治体を直接縛るものではないとはされています。しかし、同法第九条の地方自治体の責務では、地方自治体には国の施策に準じた施策を行う責務があり、この国の施策には苦情の処理等も当然含まれてくるということから、本区の条例でも同趣旨での苦情処理規定が設けられたと、こういうことですね。

◎山戸 人権・男女共同参画担当課長

御案内のとおりでございます。

◆上川あや

内閣府が公開をしている同法の逐条解説があります。

この第十七条の趣旨にはこうあります。男女共同参画社会の形成を促進するためには、苦情の処理等が重要であることから、国は政府の施策についての苦情の処理のために必要な措置及び人権が侵害された場合における被害者の救済を図るために必要な措置を講じなければならない旨規定したものである。ややわかりにくいんですが、言葉をかえますと、ここには二つの措置が含まれていると言われています。

一つ目に、行政施策に対する苦情の処理に対し、必要な措置を講じなければならないこと、二つ目に、市民の人権が侵害された場合における被害者の救済を図るために必要な措置を講じなければならないこと、以上の二つです。本区の条例の苦情処理規定にもこの二つが漏れなく含まれていると理解をしていますが、よろしいでしょうか。

◎山戸 人権・男女共同参画担当課長

世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例では、第十一条において「区民又は事業者は、男女共同参画・多文化共生施策に関する事項について、区長に対し苦情若しくは意見の申立て又は相談をすることができる。」と苦情の申し立て等について規定しております。
また、いわゆる民対民の人権侵害等の御相談につきましても、条例第八条において、性の多様性に起因する日常生活の支障を取り除く支援並びに国籍、民族等の異なる人々の文化的違いによる偏見または不当な差別の解消を区の基本的施策として掲げていることから、これに基づき具体的な必要な措置を講じることとなります。

◆上川あや

つまり区は、区の直接の事務に対する苦情を受け付け、処理するのみでなく、区民が区の条例に基づき禁止をされている差別、性別、性自認、性的指向、民族、国籍等を理由とした不当な差別により権利を侵害されたと御相談をされてきた場合でも、同条例に基づき、苦情処理委員会に諮問することも含め、被害者の救済に当たる用意があるということですね。この理解で間違いないでしょうか。

◎山戸 人権・男女共同参画担当課長

世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例第十一条では、「男女共同参画・多文化共生施策に関する事項について、区長に対し苦情若しくは意見の申立て又は相談をすることができる。」としております。性別等や国籍、民族等の違いに起因する差別的取り扱いなど、区の男女共同参画・多文化共生施策の障害となるような人権侵害により、具体的な被害や不利益を受けた場合でも、きちんとお話を伺い、内容に応じて適切な専門機関を御案内するとともに、条例第十一条二項に基づき区長が必要と認めるときは、苦情処理委員会に諮問することとなります。

◆上川あや

加えて、同条例の第八条の基本的施策には次の二つが列挙をされています。
第五号に性の多様性に起因する日常生活の支障を取り除く支援、第十号に国籍、民族等の異なる人々の文化的違いによる偏見または不当な差別の解消です。つまり不当な差別の解消と被害者の救済は、本来、区の施策そのものであると言える。その点で、苦情処理委員会の諮問も何もプレミアなサービスではないと私は理解をしていますが、よろしいでしょうか。

◎山戸 人権・男女共同参画担当課長

委員御質問のとおり、性の多様性や文化的違いに起因する不当な差別を受けることがないよう支援することは、条例第八条の区の基本的施策に掲げる性の多様性に起因する日常生活の支障を取り除く支援並びに国籍、民族等の異なる人々の文化的違いによる偏見または不当な差別の解消に該当いたしますので、施策上具体的な支援が必要と判断された場合には、苦情処理委員会の諮問も含めて対応するものです。

◆上川あや

確認できました。ならばぜひ改善をしていただきたいと思います。

現在、区のホームページにあります苦情処理委員会のページでは、申し立て等をすることができる事項に区の男女共同参画・多文化共生施策に関する事項が対象ですと言い切るように書かれております。民対民の人権侵害による被害者救済も、実際にはこの施策に含まれていることがわかりましたが、条例規定をよくよく読み込まないと全くわからない説明なんですね。一般区民にわからないこの表現をぜひ変えていただきたい。
現状では、苦情処理委員会が被害者救済に全く役立たない広報で、不適切だと考えています。これを役立つ広報に改善するよう求めますけれども、いかがでしょうか。

◎山戸 人権・男女共同参画担当課長

委員御指摘のとおり、ホームページ上の苦情処理委員会のページでは、対象事項について条例上の規定に基づき施策への苦情等のみを記載しております。一方、苦情、意見の申し立て、相談の受け付けについてというページを別に設けており、こちらには性別等や国籍、民族等の違いに起因する差別的取り扱いなど、人権侵害を受けたときにも御相談に応じる旨の御案内を掲載するとともに、苦情処理委員会のページにリンクをさせているところです。
しかしながら、委員御指摘のように、苦情処理委員会のページには同様の御案内はしてございませんので、同様の記載をするなど広報の改善をしてまいります。

◆上川あや

ぜひ相談を受けた後の苦情の処理、紛争解決に役立つということを書いてください。

最後に、同条例は国内で初めて民族、国籍の差別を禁止した条例だとされています。この点からも当然当事者に伝わる広報をするべきなんですが、日本語を母語としない区民への広報努力が全く見えません。この部分、多言語化の工夫をするなり、「Life in Setagaya」に書くなり、外国人相談リーフレットを置くなり、変えていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

◎梅原 国際課長

日本語を母語としない外国人等の方々に、本条例の苦情処理制度を十分に周知し、御利用いただくことは大変重要であると認識しております。
今後はホームページに英語版の条例文を掲載するほか、外国人向け生活情報誌「Life in Setagaya」への掲載など、広報を工夫するとともに、関係窓口での周知にも取り組んでまいります。

◆上川あや

存在を知らない制度は使えませんので、使える制度にぜひしてください。お願いいたします。