◆上川あや

土砂災害対策について伺います。

今月九日、区内の三十七カ所が土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域に指定されました。
また、このうち三十三カ所が土砂災害特別警戒区域に指定をされました。それぞれイエローゾーン、レッドゾーンと区分けをされておりますが、それぞれが示す意味、危険性について御説明を求めます。

◎笠原 拠点まちづくり第一課長

まず、土砂災害警戒区域、いわゆるイエローゾーンでございますが、傾斜度が三十度以上、高さが五メートル以上の急傾斜地、急傾斜地の上端から水平距離が十メートル以内、また、下端から急傾斜地の高さの二倍の範囲内――これは五十メートルという限度がありますけれども、こちらが一律に指定されるもので、住民への危険の周知、それから警戒避難体制の整備を図っておく必要のある区域でございます。
また、土砂災害特別警戒区域、いわゆるレッドゾーンでございますが、先ほどのイエローゾーンの区域において急傾斜地が崩壊したと仮定した場合に、土や石が流れていって、一般的な建物、建築物にぶつかったときの耐力も計算して、土砂の移動によって建築物が壊れて、住民の生命に著しい危害が生ずるおそれのある区域が指定されるものでございます。
ただ、いずれの区域につきましても、指定される個々の区域、急傾斜地の崩壊の危険性が高い、低いというものを示すものではございません。例えば住民への区域の周知や避難体制の整備、建築物の構造規制などのさまざまな対策によって、崩壊があった場合に備えておくこと、こちらが法律の趣旨となってございます。

◆上川あや

両区域とも傾斜度三十度以上、高さ五メートル以上の崖、擁壁から抽出されたということがわかりました。つまり、逆に言いますと、高さ五メートル未満の崖、擁壁は、このチェックのふるいからこぼれ落ちたことになると思います。
区が今般まとめた世田谷区がけ・擁壁等防災対策方針素案によれば、区は、崖、擁壁の総数を推計するため、先行的に十二のモデル地区から約五百件を調査し、その結果、区内全体で約九千五百件の崖、擁壁があると推定をし、亀裂、膨らみ、傾斜等の変化、いわゆる変状の見られる崖、擁壁が約五百件、現行法令で認められていない種類、構造の擁壁も三千五百件あると見ているということでした。この変状のある崖、擁壁で、高さ五メートル未満のものがどれだけ多くを占めるのかお答えいただければと思います。

◎笠原 拠点まちづくり第一課長

こちらの調査結果に基づきます変状のある崖、擁壁でございます。今回のモデル調査においては、いずれも軽微な変状というものでございましたが、全体の推計数五百のうち、五メートル未満の崖については九九%、ですから、四百九十カ所ほどは何らかの変状のある崖、擁壁であると推定されます。

◆上川あや

モデル地区の場合には軽微な変状しか見つからなかったというお答えなんですが、だからといって、全ての地点が軽微な変状とは全く限らないと思います。変状のある崖、擁壁の九九%、数にして、そのまま掛け合わせれば四百九十五カ所になりますが、五メートル未満なんです。ところが、区は、今回、土砂災害防止法に基づき指定されたレッドゾーン三十三カ所についてのみ、国の補助制度を用いて改修費助成を出すとしています。逆に言うと、区内で変状があると見られる崖の九九%の対策は見殺しなんですね。区が考えている改修費助成、これはどういった支援策なのか、また、区がまとめた対策方針は、アドバイザーの派遣制度を創設するとしていますが、どれくらいの規模の崖、擁壁を対象に、いつごろから派遣の予定であるのかお伺いいたします。

◎笠原 拠点まちづくり第一課長

まず、いわゆるレッドゾーンにございます建築物の改修に対する支援でございますが、こちらは土砂災害――先ほどの土、石等が崩れてきた場合に対応する建物の安全性確保が目的でございます。そのために、崖と建物の間に保護するための壁を築造したり、また、建物自体の壁を補強するなどの改修をする場合に、その工事費に対して、国の補助金制度を活用して、区でも支援をあわせて行っていくものでございます。また、専門家、いわゆるアドバイザーの派遣制度についてですが、崖や擁壁の改修、つくりかえを検討している方、または、御自身の敷地内にある崖、擁壁等の崩壊等に不安を抱かれている方、こういった方々に対して、その高さにかかわらず支援するための制度でございます。
いずれの支援策につきましても、この方針の策定後、速やかに制度設計等を行っていきまして、平成二十九年度から実施していく予定でございます。

◆上川あや

高さ五メートル未満の崖、擁壁についても、区はその危険性を考えて、アドバイザーを派遣するということですね。しかし、その結果、たとえ危険な変状があるとわかったとしても、区の助成制度は一切準備されておりません。危険は知らせたから、あとは自腹でお願いねというのが現状のスキームなんです。余りに中途半端な対処で、大いに疑問を感じます。

今回、二十三区全体について、急傾斜地の崩落防止対策にどのような施策を展開しているのかの調査を行ってみました。
その結果、山の手エリアの大半の区、九つの区に高さ五メートル未満の崖、擁壁に対する改修費助成制度がございました。港区、新宿区、文京区、台東区、品川区、目黒区、大田区、北区、板橋区の九区です。新宿区、台東区、北区では高さ一・五メートル以上から、その他の区でも二メートル以上から改修費の助成は出るそうです。また、助成額の上限も、少ないところで百万円、港区では五百万円、新宿区では六百万円まで出すとしています。
ところが、都内で最も急傾斜地の多い区の一つ、世田谷区は、レッドゾーンに指定された三十三カ所以外、助成はびた一文出さないというのが今の想定です。全く解せない対処です。
高さ五メートル未満の崖、擁壁が九九%を占めているというのが当区の現状です。アドバイザー派遣の結果、その危険性が確認されたのならば、改修費用の一部助成は、他区同様、やはり出すべきだろうと思います。それが区の取り組みの真剣味を伝え、持ち主の改善意欲を刺激し、減災の実効性を上げるということにつながるだろうと考えます。アドバイザー派遣後の支援策について再考を求めますが、いかがでしょうか、区の見解を伺います。

◎笠原 拠点まちづくり第一課長

支援策の検討についてですが、お話しのとおり、港区や新宿区などの区において、比較的小規模な崖にも助成制度を設けていること、こちらは確認しております。区においても、このたび、この方針の素案をまとめるに当たりましては、民有地への支援に関するこういった他自治体の事例も含めて検討してまいりました。
その上で区としましては、先ほども御質問がありましたレッドゾーンへの助成、また、アドバイザー派遣制度、また、一人一人の方々に崖の様子を確認していただくためのチェックシートの作成や、公園、道路などの公共施設の管理、また、土砂災害に対する警戒避難体制の整備など、ソフト、ハード、さまざま多面の対策を一つの方針としてまとめて、区全体で横断的に確実に実施していくことが最も適当であろうと考えて、まとめてきたところでございます。
いずれにいたしましても、今後、ただいまいただきましたような区議会の御意見や四月に予定しておりますパブリックコメントでの区民の意見等で……。