◆上川あや

昨年の第4回定例会に引き続き、区の多様性尊重条例の実効性を高める取組について伺います。

区の多様性尊重条例は性的指向、性自認への差別を禁止しています。また、その差別の禁止には、同性カップルへの差別も含まれると区は明確に答弁しています。
昨年四月一日公開の区の多様性尊重条例の紹介のウェブページでは、第六条事業者の責務について、次のように書いています。

「区の掲げる男女共同参画及び多文化共生の理念に理解を深め、区の施策に積極的に協力していただくよう定めています。特に事業者の皆さんには、働く全ての人がそのライフスタイルに応じて多様な生き方を選択できるよう、募集、採用及び昇進など、あらゆる場面で性別や性自認、性的指向、国籍、民族の違いによる不当な取扱いがないよう配慮し、事実上、生じている不当な取扱いについても積極的に改善するようお願いします」、引用は以上です。
LGBT差別を禁じる区ですから、ここに書かれた事業者の責務は真っ当であり、立派です。

ところが、昨年質問した時点で、区の外郭団体を除く三十一の指定管理者で、職員の人事、給与、福利厚生制度の一部にでも同性パートナーやその親族を対象にした制度を持つ者は僅か三事業者で、ハラスメント禁止規定に性的指向と性自認を明記した事業者も僅かに五事業者しかありません。
つまり大多数の指定管理者は区条例の責務を忠実に果たす事業者ではないのです。

このため、昨年四定の一般質問では、区立施設の管理運営に当たる指定管理者の職員についても、性の多様性に応じた処遇の平等やハラスメント禁止を徹底するよう求めました。
これに対して、区も、条例にのっとった運営を行うことは大変重要との基本認識を示した上で、指定管理者制度運用におけるガイドラインの改定などで条例目的に沿った制度運営を推進すると応じましたが、同じ課題は、区施設の管理運営を担う受託者等にもあるものと考えております。

例えば区立の男女共同参画センターらぷらすは、LGBTQのための交流スペース事業や電話相談事業、年に一度、らぷらす全館を用いて開かれるセクシャルマイノリティーフォーラムの開催も担うなど、区のLGBTQ支援の一大拠点です。ところが、それら事業の委託先、共生会SHOWAは、その本拠を世田谷区内に置きながらも、第六条の責務を果たす事業者ではありません。

今回、同団体のLGBTQ対応について私が区に問合せると、区も初めて同団体に確認し、同性パートナーのいる職員に配慮した人事、給与、福利厚生制度は一切なく、ハラスメント禁止規定にも性的指向、性自認の明記もない、ないないづくしの事業者であると分かりました。それでいて、昨年三年ぶりに行われたらぷらすの委託事業者選定では、それらLGBTQ対応の欠如は不問のままに、素知らぬ顔で委託運営先に再度選定をされており、区と共生会SHOWAの無策と無関心に驚き、落胆しております。

そこで以下伺います。
まず、一点目、区のLGBTQ支援の拠点らぷらすの委託事業者の選定と契約に当たっては、同性パートナーのいる職員処遇の平等やLGBTQへのハラスメントを許さない規定の整備は本来必須要件とするべきものではなかったのですか、いかがですか。

二点目に、本件の履行期間は三年ですが、契約自体は単年度ごとに結ぶとされております。ならば、今からでも契約時の特記事項とする、また仕様書に定める等、確実かつ速やかに、らぷらす運営事業者の質が改善される策を講じるよう求めますが、いかがでしょうか。

三点目に、らぷらす以外の委託者等についても、性の多様性に応じた職員処遇の平等とソジハラスメントの禁止は徹底されるべきだと思います。今後の議論の前段に、まず取組状況についての報告を求めます。

第四に、区の公共施設管理のデータベースによれば、二月二日時点で、区の直営ではない区の施設は五百二十に上ります。このうち、指定管理者を除く三百二十二施設の運営者について、職員の家族に係る人事、給与、福利厚生制度の一部にでも同性パートナーを含む事業者がどれだけあるか、またハラスメント禁止規定に性的指向、性自認を明記した事業者がどれだけあるのかを明らかにし、考察を述べるよう求めます。

この質問の最後に、今求めた答弁で明らかとなる条例第六条の責務を果たさない区施設の運営者について、区はどのように改善を図る考えか少なくとも、らぷらすがそうであったように、事業者選定の評価項目にすらその対応は入らず全くの素通りという状況はすぐにでも改めるよう求め、区の対応方針を伺います。

◎片桐 生活文化政策部長

私からは、区の多様性条例について順次お答えいたします。

初めに、らぷらす運営事業者の規定整備等についてです。
男女及び多様な性を含めた全ての人が自分らしく暮らすことができる社会を実現するための拠点施設を運営する事業者には、多様性尊重への深い理解とその実行力が高い水準で求められると考えております。また、区として、運営事業者にLGBTQを含むジェンダー平等に向けた職場環境づくりに積極的に取り組んでいるかを確認することは重要であり、人事、給与、福利厚生制度やハラスメント禁止規定の整備は、ぜひとも進められるべきと考えております。

らぷらすの運営事業者選定や契約締結に当たっては、世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例を遵守するよう仕様及び特記に定めておりますが、同性パートナーのいる職員の処遇平等やLGBTQへのハラスメント禁止規定の整備を義務づける内容になっておりません。
今後、どこまでを要件とするかが望ましいかについて、財務部等など関係所管と協議の上、男女共同参画・多文化共生推進審議会の意見も聞いた上で検討を進めてまいります。

次に、らぷらすの仕様要件についてです。
選定時に区から企画提案書作成用に示した参考仕様書には、事業所内部のLGBTQを含むジェンダー平等に関する規定の整備を要件として義務づけておりませんでしたので、契約に当たっての要件の整備の検討を待たずに、急ぎ事業者と調整を行ってまいります。

続きまして、性の多様性に応じた処遇の徹底についてです。
二月三日開催の外郭団体連絡協議会において、政策経営部等と連携し、人事関連制度等について処遇平等に必要な見直しを行うことができないか調整を行っているところです。また、区と契約を締結する事業者に配付している契約履行に当たっての留意事項について、令和五年度契約分より、条例第七条、差別の解消等に加え、第六条、事業者の責務も特に遵守していただく条項として取り上げるよう修正を図り、今後、庁内及び外郭団体への周知を行う予定です。
あわせて、現在この内容を契約書の特記事項への記載も視野に入れまして、事業者への具体的な指針策定に向け、国の指針やガイドライン等の収集を行っているほか、これと並行して事業者に対する効果的な働きかけの機会の創出や充実に向けまして、依頼内容の精査に加え、働き先の情報の収集なども行っているところです。

次に、施設運営事業者へのハラスメント禁止規定の実態把握と事業者への区の改善策につきまして、まとめてお答えいたします。
現在、LGBTQを含むジェンダー平等への取組について受託事業者へのアンケート調査を行い、実態の把握に努めております。昨日の時点で、五十事業者中四十一事業者からの回答があり、そのうち二事業者が同性パートナーの処遇平等、七事業者がソジハラスメント禁止の規定を整備しているとの回答があり、一層の働きかけが必要と認識したところです。
その結果を踏まえ、働く全ての人が募集、採用及び昇進など、あらゆる場面で性別や性自認、性的指向、国籍、民族の違いによる不当な取扱いがないよう対応を求め、事実上生じている不当な取扱いについても積極的に改善に取り組んでいただくための方法を、契約上または例規上の観点から、財務部等とも協議の上、審議会の意見もお聞きしながら検討を行い、条例第六条に規定する事業者の責務を実効性ある規定とするよう、着実に進めてまいります。以上でございます。

◆上川あや

先ほどの御答弁で、区の施設の運営を担う受託事業者の大部分が同性をパートナーとする職員処遇を平等としておらず、また不当なハラスメントを抑止する規定も持たないという現状が明らかになりましたが、議会から質問が出されるまで実態把握も行わないという区の無策は看過できません。LGBTQを含むジェンダー平等等に、事業者の協力を得ることそのものは、条例第四条に定められた区の責務であるはずです。まずは、自らが条例を守って、しっかり点検してください。お願いします。