◆上川あや
次に、区の多様性尊重条例の実効性を高める取組についてです。
本年四月一日公開の、区の多様性尊重条例の紹介のウェブページでは、第六条、事業者の責務について次のように書いています。
区の掲げる男女共同参画及び多文化共生の理念に理解を深め、区の施策に積極的に協力していただくよう定めています。特に事業者の皆さんには、働く全ての人がそのライフスタイルに応じて多様な生き方を選択できるよう、募集、採用及び昇進など、あらゆる場面で、性別や性自認、性的指向、国籍、民族の違いによる不当な取扱いがないよう配慮し、事実上生じている不当な扱いについても積極的に改善するようお願いします。
この記述は、区がウェブページで公開している同条例の解説(第三版)における事業者の責務規定の説明や、区の第二次男女共同参画プラン後期計画の具体的な施策の記述とも整合するものです。
ところがです、区は事業者と契約書を締結する際、同条例に基づく契約履行に当たっての留意についてという資料を添付します。これには、条例第七条、差別の解消等の規定を特記する一方、第六条、事業者の責務の規定は特記もせず素通りです。事業者に渡す資料なのですから、まず事業者の責務こそ特記をするべきではないですか、加筆を求めますが、いかがでしょうか。
また、区の契約事業者に対する性的マイノリティーを含めたジェンダー平等等の責務の伝達について、所管部からは従来の別紙の添付よりレベルを上げて、契約書内の特記事項とすることで財務部とも調整中だと伺っていますが、これが掛け声倒れにならないかを懸念しています。この点、条例の趣旨が忠実に履行されるよう丁寧に検討を進め、着実に前進させるよう求め、区の決意を伺います。
最後に、区立施設の管理、運営に当たる指定管理者の職員についても、性の多様性に応じた処遇の平等やハラスメント禁止を徹底させるよう求めます。
区の多様性尊重条例は、性的指向、性自認への差別を禁止しております。また、その差別の禁止には同性カップルへの差別も含まれると区は明確に答弁をしております。ところが、現状では区の指定管理者の多くが、職員の家族に係る人事、給与、福祉厚生制度に同性パートナーを含めず、実質排除しております。また、それぞれのハラスメント禁止規定にも性的指向、性自認の明文化が乏しい状況です。
現在、百八十七の区立施設が三十七の指定管理者により管理されています。このうち、区の外郭団体である六事業者は、処遇の平等とハラスメント禁止の双方で一定の改善があるため、本議論からは除きます。
残る三十一の指定管理者で、職員の人事、給与、福利厚生制度の一部にでも同性パートナーやその親族を対象とした制度を持つものは僅かに三事業者です。残り二十八の事業者に同性カップルの職員への平等はありません。
また、ハラスメント禁止規定に性的指向や性自認を明文化した事業者も五つにとどまり、残り二十六の指定管理者にソジハラスメントの禁止規定はないままです。区は第二次男女共同参画プラン後期計画の課題十二で、性的マイノリティー等多様な性への理解促進と支援を掲げ、取組を推進するためには、企業による理解、協力が欠かせません、就労や働く場、提供するサービスにおいて性的マイノリティーへの公平な扱いや配慮がされるよう進めますと書き、その施策には働きかけまで明記しております。
ならば、区立の施設で働く職員の処遇は、当然、パートナーが同性でも平等であるべきですし、性自認、性的指向でのハラスメント禁止も明示をされなければ、他の区内事業者に対し示しがつかないというものです。
この点、改善に向けて事業者が何をするべきか、対応要領等、事業者の責務に関する下位の規定も整備の上、指定管理者制度運用ガイドラインにも反映させるよう求め、見解を問います。
以上で壇上からの質問を終わります。
◎片桐 生活文化政策部長
私からは、条例の加筆の修正の提案と条例趣旨の契約書への反映の二点について併せてお答えいたします。
多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例第六条に規定する、事業者の責務を実効性ある規定とするため、区は、その必要性のみならず、事業者にとって行動に移しやすい具体的な指針や手法、活用できる支援制度を丁寧に示し、働きかけていく役割があると考えております。
現在、区と契約を締結する事業者に対して、契約履行に当たっての留意事項として資料を配付することで、条例全体の周知とともに、第七条、差別の解消等の規定を特に取り上げて啓発を行っております。契約書と併せて交付することによって、幅広い事業者の皆様に履行上の留意事項として認識を深めていただけることが期待できるため、こうした機会を生かし、まずは御提案のとおり、第六条、事業者の責務の規定も盛り込むことで、より実効性を高める取組に着手してまいります。これと並行して、らぷらすや経済産業部と連携し、事業者に対する効果的な働きかけの機会を開拓、充実するとともに、契約書の特記事項についても、契約上の責務として位置づけられるよう内容を精査しつつ、事業者にとってLGBTQを含むジェンダー平等に向けた、誰もが働きやすい職場環境づくりに生かせる指針を設定することができるか、財務部等とも丁寧に検討を進めてまいります。以上です。
◎加賀谷 政策経営部長
私からは、指定管理者制度運用ガイドラインへの対応について御答弁いたします。
区の指定管理施設におきまして、区民の平等で公平な利用を確保し、事業者が安定的な運営を継続するためには、同性パートナーを含めた職員の処遇の平等や性自認、性的指向に係るハラスメント禁止をはじめ、多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例にのっとった運営を行うことは大変重要と認識しております。
こうした観点の下、協定締結に当たり条例規定を周知し、契約履行に当たって留意を促す文書を指定管理者に交付しているところでございます。
その上で、さらに条例の実効性を高めるために、指定管理者に対し事業者がなすべき個別具体的な取組事項を明示した上で対応を求めていくことが重要と認識しております。条例には、事業者の責務として、具体的に取り組むべき事項が規定されておらず、区で公表している条例解説も、一歩踏み込んだ説明のみとなってございます。今後、分かりやすい対応指針等を定めていくことで、事業者に具体的に実行すべきことを明示していくよう対応を図ってまいります。
区としてそうした環境を整えた上で、指定管理者の選定や運営における具体的な取組を指定管理者制度運用に係るガイドラインに定めるなどで、条例目的に沿った制度運営を推進してまいります。以上です。