◆上川あや

世田谷代官屋敷の活用方針について伺います。

かねて文教委員会で報告のあった積極的な内部公開と活用を進めていくとの方針と現状との違いに戸惑いを持っています。平成二十九年六月の文教委員会に、代官屋敷の保存・活用事業の御報告がありました。代官屋敷は、平成二十八年度の調査で耐震補強の必要性が明らかになっていた。これを受け、代官屋敷保存会を事業主体に耐震補強及び修理の工事を行い、これと併せて保存活用方針を策定し、文化庁、東京都、世田谷区で協力し、事業を進める趣旨から御報告するとのことでした。
そこでは、耐震補強工事と併せて今後の活用に必要な設備として、これまでなかったガスや水道についても補完し、土間や外見だけでなく建物内部の公開も行えるようにする。内部での展示等も可能になることから、事業の充実を図り、当時の歴史や文化の理解を深めるとともに、代官屋敷周辺の文化財等も含めて一体的に活用し、まちなか観光等に生かしていくといった御報告でした。その後、工事は二か年にわたり行われ、令和元年十一月末に終了しております。同工事には三か年度かけ、区からも千八百万円の区費が投じられました。
以後、代官屋敷は公開を再開しましたが、ふだん見学できるのは相も変わらず土間までです。土間から上、お座敷部分まで公開されたのは、私の知る範囲では二回だけ。おととし十二月と昨年十二月のそれぞれ一日だけの特別公開イベントだけは承知をしておりますが、全体としてのこの公開状況はいかがでしょうか。

◎林 生涯学習部長

代官屋敷の土間から上までの公開につきましては、改修完了時の令和元年十二月の特別公開と、令和二年二月にお香体験等の親子ワークショップを実施、また、十二月に特別見学会を実施しており、計三日の公開となっております。

◆上川あや

私の知らない公開日があと一日あったわけですけれども、それにしても低調という印象です。

同じく、区教委で管理している区立の民家園二園、また二子玉川公園内の清水邸書院では、コロナ禍でも積極的に座敷以上の公開が維持されており、イベントも次々開かれております。古民家は現代建築に比べて圧倒的に通気性がいいですから、コロナ禍でも密に人を入れない限り活用すればよいと私も考えます。
両民家園では、この春も例年どおり、三月三日までお座敷にひな壇が展示され、世田谷の各民家で行われていたひな祭りについての解説会も開かれました。また、この一週間は春の彼岸に当たり、十七日は入りそば、二十日は中日ぼた餅、二十三日は明けだんごと、季節に合わせた興味深い展示が続いております。
なのに、代官屋敷だけはお座敷に上がれず、季節を活用したイベント開催もほとんどないというのは、大変に残念です。この点はいかがでしょうか。

◎林 生涯学習部長

代官屋敷の公開につきましては、所有者の大場代官屋敷保存会と協力しながら進めております。新型コロナウイルス感染拡大防止に努めるための保存会の人員の体制や感染対策を十分配慮する点から、限られた公開となってございます。

◆上川あや

人員面での課題もあるようなんですが、区は人材面でも貢献できるのではないでしょうか。
区教委ではこの間、長く途絶えていた学芸員の採用を再開し、新たな人材も育ってきたと認識をしております。ここ最近の人員状況も御説明をいただければと思います。

◎林 生涯学習部長

学芸員の退職に伴いまして正規職員の採用を計画的に進めております。平成二十九年度、歴史一名、平成三十年度、民俗一名、平成三十一年度、考古一名採用、また、令和三年四月に建築一名の採用を予定としております。
また、学芸員の体制は正規、再任用を合わせまして、令和元年度は考古四名、民俗一名、歴史二名の計七名、令和二年度は考古三名、民俗一名、歴史二名の計六名、令和三年度は考古三名、民俗一名、歴史二名、建築一名の計七名となっております。

◆上川あや

せっかく採用を進めてきた専門人材で、働くのも代官屋敷のすぐお隣の郷土資料館です。これを生かさない手はないと考えます。

区は、平成三十年十一月の文教委員会で、代官屋敷の改修工事の着手について次のように述べています。
今回の耐震化と修理を実施することにより、これまで外観と土間部分のみを公開していたのですが、内部の座敷についても見学できるようにいたします。また、新たに土間にかまどを設置しますので、餅つきや日々の生活の様子、年中行事などの再現など、当時の暮らしを体験できるような事業や暮らしぶりや、代官の職務が理解できるような展示を行うなど事業の充実に取り組みます。このように言い切り型で説明をしております。

この御報告に、私も工事後を楽しみにしていた一人なのですが、この二年、当初のお約束とその後の状況は大いに違うと感じます。代官屋敷の今回の工事には、国指定重要文化財の公開活用を前提とした国の助成金も使われていると認識していますが、いかがでしょう。

◎林 生涯学習部長

委員御指摘のとおり、重要文化財建造物保存修理公開活用事業の国庫補助を活用しております。

◆上川あや

公開活用を前提とした国の助成金も得ている。ならば、積極的な座敷以上の公開と、郷土資料館が保管する豊富な歴史資料、また地域の歴史、民俗に精通した学芸員を生かした積極活用を希望いたします。区教委の見解を伺います。

◎林 生涯学習部長

現在は新型コロナウイルス感染状況を見ながら実施時期を調整しておりますが、今後区では、解説会や好評であったお香体験等親子ワークショップなどの事業、また、社会科見学の充実を郷土資料館を中心に検討してまいります。また、所有者である大場代官屋敷保存会では、今後、茶道などの日本文化や歴史文化を学ぶ場としての開放などの活用も検討されていると伺っております。

区では、平成二十八年度に策定いたしました文化財保存活用基本方針におきまして、世田谷区の郷土を学べる場や機会の充実を進めております。大場家住宅主屋及び表門は区内唯一の重要文化財建造物であり、隣接する郷土資料館とともに、世田谷の歴史文化の中心的な施設として活用していくこととしてございます。
また、代官屋敷保存会では、地域の歴史、伝統文化を後世に伝えていくため、平成三十一年度に大場家住宅主屋及び表門保存活用計画を策定しております。今後も代官屋敷の積極的な公開、活用を図ってまいります。

◆上川あや

積極公開を望みます。終わります。