◆上川あや

今定例会でたびたび話題になっている課題、性的マイノリティーに対する区立学校の対応について伺います。

まず、区立学校に実際に寄せられている御相談対応についてです。
文部科学省は、二〇一五年四月、同性愛や性同一性障害などを含む性的マイノリティー全般の子どもたちについて配慮を求める通知を全ての小中学校に出しております。従来、文科省の対応は法律上の定義のある性同一性障害のみに限られてきましたが、それ以外にも配慮の必要性を明記したことは初めてのことでして、NHK等でも報道されました。
これに先立ち、二〇一三年、国は性同一性障害についてのみ学校でどのような配慮がなされているかの調査を実施しています。その結果、全国で少なくとも六百六人の相談事例が確認をされ、うち、心の性別での制服着用が認められるなど、学校側の配慮が確認できた事例は約六割の三百七十七人にとどまりました。
その後の文科省の通知では、子どもが相談しやすくなるよう教員が心ない言動を慎むことや、子どもの服装や髪型について否定したりからかったりしないよう明記、また、学校は原則として児童生徒の事情に応じた対応をするべきとして、医療機関との連携も視野に対応するよう求めたところです。

区教委では、この調査以降も性的マイノリティー全体について毎年度相談事例の実情について調査を実施していただいてきました。その結果、今年度もLGB、つまり、同性愛や両性愛の可能性のある子どもたち、またT、つまり、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの可能性のある子どもたちのそれぞれで、新たに複数の相談事例が把握をされたと承知しています。
小中学校で相談できる児童生徒は極めてレアケースだと思います。
いずれも氷山の一角であることは確実ですが、本人、保護者の意向を踏まえた相談対応の徹底は、いずれの子どもたちにとってもとても大切なことだと考えますし、その実践を求めたいと考えます。区教委の対応方針と状況について伺います。

◎齋藤 教育指導課長

世田谷区教育委員会では、文部科学省が実施した調査以降も毎年調査を実施しておりますが、調査内容も性同一性障害のみならず、広く性的マイノリティーについてを対象としております。
調査を実施することにより、児童生徒の実態や対応等を把握し、対象児童生徒への支援等を検討することに役立てるとともに、教職員への理解啓発を図ることも目的としております。相談件数につきましては、毎年同程度の件数が報告されており、当該校には指導主事が状況を聞き取ったり学校を訪問したりして、個々の状況に丁寧に対応するように指導しております。また、人権教育推進委員会などでも報告し、学識経験者からもアドバイスをいただきながら、各学校において児童生徒や保護者の意向を丁寧に受けとめ、相談対応が行われるように取り組んでいるところです。

◆上川あや

区が昨年実施した当事者に対する実態調査で、自殺念慮の経験割合は四九・七%に上りました。最も死を意識するのは中学時代だということははっきりとわかっていることです。ぜひ丁寧に取り組んでください。

◆上川あや

続いて、昨年六月の一般質問で、性的マイノリティーをめぐる人権教育は、全校でぜひ実施をと具体策について問いました。その結果、来年度から区立各学校の持つ人権教育の全体計画に、性同一性障害と性的指向をともに位置づけ計画的に指導を進めていただけることとなりました。
一方で、これまで先駆的に取り組みを進めてきた区立中学校で、来年度、都の人権尊重教育推進校の指定から外れる事例があると承知をしております。ぜひ先駆的な取り組みは継承し、さらに維持発展させていただかなければならないと考えます。
区立のどの学校に進んでも、性の多様性が人権の素養となるように、教材開発も含めしっかりとした課題認識の共有を求めます。改めて区教委の取り組み方針を伺います。

◎齋藤 教育指導課長

学校の授業や取り組みによって、性的マイノリティーについて理解啓発を図ることは、個別の課題についての知識、理解を深めるにとどまらず、児童生徒が多様性を認め、人権を尊重する教育を進める上で重要であると認識しております。
ことしは、昨年度に引き続き性的マイノリティーをテーマとした公開授業を小中学校において実施いたしました。道徳の時間や各教科における授業を公開しておりますが、全校の人権担当の教員だけでなく、こうしたテーマの授業を参観した経験のない教員に参加を促し、理解啓発を進めております。受講者からは、自分が担任している学年の発達段階において、どんな授業ができるのか具体的に考えていきたいなどの感想がありました。
また、本区では、来年度から区立全小中学校の人権教育全体計画に、性同一性障害、性的指向を位置づけ、性的マイノリティーに関する授業や取り組みが進むように指導してまいります。なお、東京都教育委員会が人権教育を推進するために、都内公立学校の全教員に配付している人権教育プログラムにも、今年度から性同一性障害と性的指向が人権課題の一つとして位置づけられるようになっております。
今後は、児童生徒の発達段階に応じた教材の研究や提供をさらに進めるとともに、公開授業や研修会などを通して、教職員の理解や啓発をより一層図ってまいります。