◆上川あや

続けて、性的マイノリティーをめぐる人権教育の全校実施を求めて伺います。
2009年2月、私の議会質問に対し区教委は、特に若年層で自殺念慮や不登校割合が高いと指摘をされている性的マイノリティーの人権について、保健の授業などを通し、科学的な知識を持ち、人権尊重、男女平等の精神に基づく望ましい行動がとれるよう児童生徒を指導してまいりますとお約束になりました。また、2010年10月の質疑でも、例えば性的少数者にかかわる道徳の教材等を作成し、それをもとに各学校において学級担任と養護教諭が連携して指導を進めることができるよう検討すると全校での実践をお約束になりました。
ところが、当初の約束から七年以上たつ今も、これら取り組みは一部学校の試行的な授業にとどまっており、全校実施というお約束は一向に守られておりません。

一方、この間、全校で実施するべきすぐれた教育実践も生まれています。都教委指定の人権尊重教育推進校、駒沢中学で昨年度行われた教育実践は、学習指導要領に基づき、その発展的内容として性の多様性に関する知識を関連各教科で取り扱うとしたもので、中学校一年では保健体育で、二年生では家庭科で、三年生では社会の授業で関連する人権課題を扱い、さらにその二カ月後の道徳の授業でも一年生から三年生まで性の多様性を含め人権教育を受けるというものです。同規模、同地域の中学校と比較してもはっきりと偏見が和らぐ効果が確認できており、高く評価できる取り組みです。
こうした教育実践は、引き続き同校で行っていくべきでありますし、効果にすぐれた実践として全校実施を目指し、取り組んでいくべきものと考えます。それぞれ区教委としてどう取り組む考えか、全体実施に向けた今後のスケジュール、ステップも含め、区教委の考えを伺います。

また、昨年四月、文科省は、初めて法律上、定義のある性同一性障害のみならず、同性愛も含めた幅広い性的マイノリティーの児童生徒に配慮を求める通知を各教育委員会に出しております。同通知では、いじめや差別を許さない人権教育の推進も掲げられており、今後は各学校の人権教育の全体計画に性的マイノリティーをめぐる課題がしっかり位置づけられるべきものと考えます。区教委の見解を伺います。

◎工藤 教育政策部長

私からは、性的マイノリティーをめぐる人権教育は全校で実施しろという御趣旨の二問の質問にお答えいたします。

まず一点目でございます。性の多様性に関する知識を関連各教科で取り扱うものとする教育実践を全校実施すべきと考えるが、区教育委員会としてどのように取り組む考えか、また、全校実施に向けた今後のスケジュール、ステップもあわせ、区教育委員会の考え方を問うという御質問でございます。
性的マイノリティーについての児童生徒への教育は、多様性を認め、人権を尊重する教育を進める上で、その対応や適切な支援が大変重要であると認識しております。教育委員会では、この間、全校長を対象として性的マイノリティーについて造詣の深い講師を招き、その理解や具体的な対応について研修を行うとともに、全ての小中学校の人権教育担当教員に対しても性的マイノリティーを取り上げた研修を行い、教員の理解を図ってまいりました。また、昨年度は、これまで中学校のみで行ってきた性的マイノリティーを主題とした授業公開を小学校にも拡大するとともに、人権教育担当以外の教員にも参観させ、自校にも悩みを抱えている子どもがいるのだという認識を持つ必要があるといった反応が多くありました。
駒沢中学校の取り組みについては今後も継続して実施していくとともに、すぐれた実践例として各学校にも広めてまいります。
また、児童生徒向けといたしましては、わかりやすい教材や指導案の紹介などのさらなる工夫が必要と考え、昨年度は授業公開をした際の資料をまとめ、全小中学校に配付いたしました。今年度もさらに資料の充実に努め、その資料を全校に周知し、性的マイノリティーに関する授業の充実と普及に努めてまいります。

二点目の御質問でございます。各学校にある人権教育の全体計画にも性的マイノリティーはきちんと位置づけられるべきものと考えるが、区教育委員会の見解を問うという御質問でございます。
第二次世田谷区教育ビジョンにおいては、人権尊重の精神を基調とし、全ての教育活動を通して人権教育を推進するようにしております。各学校では、子どもが人権尊重の理念を正しく理解し、思いやりの心や社会生活の基本的なルールを身につけ、社会に貢献しようとする精神を育む人権教育を進めております。
東京都教育委員会では、人権教育を進めるための実践的な手引きである人権教育プログラムを作成しており、都内公立学校の全ての教員に配付しております。本冊子は、性同一性障害者、性的指向が今年度から新たに独立した課題として取り上げられるようになりました。今後、各学校における人権教育の全体計画に位置づけ、意図的、計画的に指導を進めるよう指導してまいります。ここでは、全ての教員が自分の学校にも性的マイノリティーについての悩みを抱える子どもがいるんだという前提に立ち、子どもたちが性の多様性を認め、差別や偏見のない社会を実現していくことができるよう、人権教育をしっかりと推進していくことが重要です。
教育委員会といたしましては、今後も教職員への理解や啓発をより一層図るとともに、教員研修の充実や適切な教材の周知などを通して、各学校が計画的に実践を進められるよう取り組んでまいります。御答弁は以上です。