◆上川あや

国が都道府県教育委員会などに通知をしました性同一性障害に関する教育相談の徹底について伺います。

平成二十二年四月、国は性同一性障害の児童生徒への教育相談を徹底するよう求める通知を全都道府県教育委員会に発出しました。この通知は、都の教育委員会を通じて区にももたらされていると確認をしておりますが、区教委では、この通知を全区立小中学校に示したのでしょうか。また、教育相談の徹底、国が求めていることをどう現場に指導したのでしょうか、伺います。

◎平川 教育指導課長

平成二十二年四月に文部科学省が通知をいたしました児童生徒が抱える問題に対しての教育相談の徹底についてという通知につきましては、各学校に文書で通知をいたしますとともに、性同一性障害を取り上げた人権教育研修などでその趣旨を説明するとともに、各学校で日ごろから教職員が児童生徒と向き合い、一人一人の子どもの理解を深めるようにという指導を重ねております。

◆上川あや

教育指導課に確認をしましたところ、区立の小中学校で現在在籍中の児童生徒について、性同一性障害についての具体的な相談事例があるとは承知をしていない。つまり、把握としてはゼロ。この認識でよろしいですね。

◎平川 教育指導課長

お話しの性同一性障害にかかわるような相談事例について、今年度区立小中学校から教育指導課に報告を受けたということはございません。

◆上川あや

一方、教育相談室に伺いますと、現状で来室相談で三件、電話相談で一件、合わせて四件、性同一性障害の可能性のある相談が把握をされているということでした。現状を簡単に御説明ください。

◎小渕 教育相談・特別支援教育課長

教育相談室においてでございますが、今年度から児童生徒や保護者からの心や体に関する性の悩みの相談を受ける体制を整えるとともに、区立学校の児童生徒全員に電話相談カードを配布するなど、PRに努めてまいりました。
これまでの状況といたしましては、友達とのコミュニケーションなど子どもの発達などに関する相談の中で、性に対する違和感や性的指向の話が出たケースが昨年の四月から四件ございました。

◆上川あや

教育相談室に把握があっても、学校の現場を預かっている教育指導課に把握はないということですよね。
これまで区の教育委員会に対しましては二度、私のほうから性同一性障害並びに同性愛を含む性的マイノリティーについて、児童生徒の相談状況の把握を求める質問を行ってきましたが、教育委員会はその都度期待を抱かせる御答弁をくださる一方で、実際に行われた調査は全く実態調査にも役立たず、子どもたちの支援にも役立たない調査でした。
何が問題かといいますと、区教委の調査は、ごく一部の教員を対象にした、数だけをとるサンプル調査なんです。
しかも、性同一性障害に関する相談事例があるか、また、性的マイノリティーに関する相談事例があるか等を教員に聞きつつも、誰が答えたかもわからない匿名調査です。結果、小中とも相談事例があると、これは把握されました。ところが、どの学校の生徒がどう苦しんでいるかもわからない、現場の先生やカウンセラーがきちんと対応できているのか、迷っているのかもわからない。性的マイノリティーの子どもの六割が経験する自殺念慮、四人に一人が陥る不登校、二割が経験する自殺未遂、自傷行為、またいじめの有無、何一つわからないんですね。
結局、区教委の調査は、そこにいる子どもたちの状況を把握し、守り、支えるための調査でも、教職員による教育相談の徹底が行われているかを推しはかる調査でもない。つまり、区教委はそこにある相談に向き合うつもりが全くないというふうに考えますが、この点はお認めになりますか。

◎平川 教育指導課長

まず、学校では、日ごろから一人一人の子どもの様子をよく観察して、心配な様子が見られたらよく見守ったり、声をかけたり、あるいは話を聞いたりしながら、子どもの心に寄り添う指導、支援に努めております。
こうした中、さまざまな人権課題へのより適切な対応を図るために、学校と心理の専門家、学識経験者などによる人権教育推進委員会というものを設置いたしまして、その取り組みの一環として、女性の人権、障害者の人権、自分の性別への違和感、交際している男性からの暴力などの相談を児童生徒や保護者から受けたことがあるかということなどについて、昨年度は約百六十名の教員に、今年度は約二百八十名にアンケート調査を実施いたしました。昨年度は、服装にかかわる相談等を受けた教員がいたことも踏まえまして、区立学校に性同一性障害や性的指向に悩みを持つ児童生徒が在籍しているという認識のもとで、よりきめ細やかな対応を進めるように各学校に指導しているところでございます。

◆上川あや

質問に答えていないんですね。お答えになれないんだと思います。

さきの国の通知を受けました島根県の教育委員会では、その三カ月後、県内全ての小中学校、高校、特別支援学校、四百十四校に実態調査を実施しています。結果、七校に九人、性同一性障害の可能性のある児童生徒が確認されました。世田谷区以下の人口でこの数です。それだけではないんですね。さらに、県教育委員会では、その結果を受けて職員を各学校に派遣し、聞き取り調査を行っています。管理職、養護教諭、スクールカウンセラーと連携した教育相談、国が求めています。これが行われていることを確認して、おおむね適切な相談体制がとられていると議会に報告をいたしました。以後、この調査は毎年行われているそうです。同様の調査は、埼玉県、山形県、高知県でも行われました。
また、同年十月、毎日新聞の報じたところによりますと、公立学校を持つ全都道府県と政令市六十六の教育委員会に確認をしましたところ、在籍する児童生徒について、性同一性障害に関する相談事例があったとした教育委員会は十五都道府県と三市に上ったということで、実際、多くの教育委員会は実態を把握しているんですね。ところが、世田谷区には全く実態の把握はない。子どもの痛みに関心がないんです。
私が実施を求めたのは、サンプル調査ではありません。子どもを支えられる、守れる調査です。国の通知に従って教育相談の徹底を行うと言いながら、何ら実例を把握しようとしない、適切に対処されているか確認もしない、この区教委の管理体制を変えていただきたいと思っているんですけれども、これで三回目のリクエストになります。いい加減、対応していただきたいんですが、いかがでしょう。

◎平川 教育指導課長

今後の実態把握のあり方などにつきましては、毎年定期的に実施をしております健全育成にかかわる調査ですとか、指導主事が学校に頻繁に訪問しておりますので、そういう機会を捉えて、学校で性的マイノリティーにかかわる悩みを持つような児童生徒がいないか、また、相談を受けているかどうか、受けている場合にはどういう対応をしているかを把握するなどの方法について、専門家の御意見もさらにいただきながら、推進委員会において検討し、対応していきたいというふうに考えております。

◆上川あや

これは全学校を対象にしてやっていただけるというふうに理解していいんですね。

◎平川 教育指導課長

全校の状況を把握したいというふうに考えております。

◆上川あや

この後の状況もしっかり見てまいりますので、取り組みをよろしくお願いいたします。終わります。