◆上川あや

平成23年度の世田谷区各会計決算認定、5件に賛成する立場から意見と要望を申し上げます。

私から要望することの第一は区長の掲げる「情報公開」など現状では全くの絵空事であり、しっかり取り組んでいただかなければ困る!という点です。
保坂区長は就任後、初の定例会となった昨年6月の議会招集挨拶で「取り組んでいきたいこと」の第一に情報公開と区民参加の推進を掲げました。区長は「情報公開の徹底は、金と時間がかからない行政改革の道具である。ふだんから監視、そしてチェックを受けてこそ、予算の効率的な執行や行政組織の肥大化をとめることができる」とも語られました。
ところが保坂区政の誕生から1年半、どこに進展が見られるのでしょうか? 傍目にわかる変化など何一つなく、区政の隠ぺい体質の垢がボロボロと零れ落ちるばかりです。

これまでの質疑でも明らかな通り、区のデジタルコンテンツ産業集積事業を巡っては区から不誠実な嘘が繰り返されてきました。あるはずの文書を所管部にリクエストしても出てこない、公式に開示請求しても出てこない。文書がどこからかリークされ、議会側から示されて初めて「それは私的なメモで公開するべき公文書とは考えてこなかった」などとシラを切る始末です。区長の掲げる情報公開の徹底などそのカケラもないではありませんか。

また先の補充質疑で私が取り上げた通り、重度身体障害者の介護支給をめぐっても条例違反の文書の隠ぺいが明らかとなりました。
国が平成19年の通知で否定し廃棄したルールに、65歳以上の介護保険対象年齢に入った全身性障害者に対し、引き続き障害者施策から必要なサービスを提供するに当たっては「介護保険の訪問介護を、基準額の概ね5割以上使う場合に対象とする」というものがありました。しかし世田谷ではこの廃止されたルールが不当に残置され、介護支給を抑制する根拠として使われ続けてきました。しかも事態が深刻なのはこのルールを記した課長通知が区条例に反し「非開示」とされたまま、介護支給の抑制だけが図られてきたことです。
この点、私からの補充質疑での追及に区もようやく「認識が足りなかった」と条例違反の非を認めましたが、こうした隠ぺい体質の悪癖は区政のどこまで広がっているのだろうと気は重くなるばかりです。

先の私の総括質疑でも指摘した通り、また他会派の質疑でも指摘された通り、行政の都合に基づいた公文書の管理はすぐにでも見直されるべきです。
本来、区長が掲げる情報公開の徹底と公文書管理の見直しは車の両輪であるはずです。ところが新区政のもとでは前者の掛け声だけが大きく、肝心な公文書管理に全くメスが入れられてきませんでした。
この点、私からの総括質疑に答え「公文書管理法」に基づく区に課された努力義務――昨年施行された「公文書管理法」の趣旨に則った施策の策定等を履行していく方針が区長から示されたことは重要でした。それこそが情報公開を謳う上でメスを入れるべき主要部分であり、しっかり事務改善が図られなければならないと考えます。また文書管理手法の改革にあたっては、情報公開が民主主義のインフラであることを踏まえ「公文書管理条例」の制定も視野に区民のチェックを経たうえで決められるべきことを申し添えておきます。

次に、企画総務領域で取り上げた区の公益通報制度の手前味噌なルールもいいかげん改めていただきたいと考えます。
この件では私から過去2度にわたりその隠ぺい体質を追及し区はようやく昨年秋、国のガイドラインで求められた外部の通報窓口を置きましたが、これとて私の追及をかわす表層的なトリックに過ぎないというのが私自身の見方です。
今回の改変で弁護士の担う役割は単なるメッセンジャーに過ぎません。不正の告発を受けた外部の弁護士がその情報を従来通り、区の総務部に伝えれば役目は終了です。区の不正を調査するのも区、結論を出すのも区、処分を決めるのも区、事件公表の要否を決めるのも区――こうしたお手盛り制度はもう沢山です。都内3区が既にそうであるように不正の告発を受けた第三者の弁護士、あるいは第三者機関がその後の調査までを担える制度とするべきです。また調査の結果も公表されるべきで区民にも広く通報の権利を認めてゆく制度改革が望まれます。改善を求めます。

続いて決算書を通して感じたことのひとつに区の実績評価が甘すぎるのではないか?という点がありました。
区の「各会計主要施策の成果」を開くとその評価欄には「概ね計画通り推進することができた」などの高評価が並びます。なるほど現行の年次別計画に照らせば一定程度、計画を達成したと見えるのかもしれません。しかしこの数字には落とし穴があります。
現行の目標値は「時点修正」を経て、平成19年度末、策定の当初計画から大きく切り下げられ、後退したものであるからです。本来望まれる水準との乖離を忘れるべきではありません。たとえばユニバーサルデザインの街づくりを例にとってみましょう。平成19年度に策定された当初計画での「安全に歩ける道路延長」の整備目標は23年度までに8620mでした。一方、23年度の実績値は4227mと半減したままです。それでいながら「概ね計画通り推進することができた」と慢心しているのが現在の評価です。
超高齢社会を迎え自由に体を動かせない人たちが増え続けている今、本来あるべき政策目標はどこにあるべきか、今一度、冷静な検証が必要であることはいうまでもありません。前出の重度身体障害者に対する在宅介護支給の抑制もそうですが、このところの区政では財政状況を気にするあまり区が本来担うべき役割が軽視されているように思えてなりません。そのことは重ねて申し上げ、各所管に再考を求めたいと思っています。

次に災害対策の遅れについてです。
都市整備領域の質疑で指摘したとおり、都の取りまとめによれば区内の「急傾斜地崩壊危険個所」は57か所と、23区でもワースト・スリーに入る規模となっています。またこの4月、都が取りまとめた首都直下地震の被害想定によれば区内に点在するこれら急傾斜地の殆どが崩壊危険度のランクA、崩壊「危険性の高い」急傾斜地であることが明らかとなっています。土砂災害に巻き込まれる可能性のある家屋数は区内にざっと500棟。うち100棟が集合住宅であることを踏まえれば、巻き込まれる可能性のある区民は優に1000人を下らない規模となります。ところが世田谷では区の「組織規則」にも斜面地崩壊防止対策に関する記述が一切無く、質疑をしようにも担当部がどこなのかすら判らないありさまです。これを反映して2度にわたる災害対策総点検を経てもなお、当区の対応は無策なまま。ほとほと呆れるほかないという状況です。
質疑でも指摘した通り、都内では既に新宿、大田、目黒、板橋、台東、北の各区が斜面地改修費助成事業に取り組んでいます。港区、杉並区にも独自の改修資金貸付あっせん制度や利子補給制度が整えられています。ハッキリ申し上げて区内に多くの崖地を抱えながらその崩落防止対策に何一つ手を打っていない区など世田谷区しか残されていない状況です。早急に担当部を定め、対策の強化を図っていただくよう改めて求めます。

最後に財政が厳しい中だからこそ、内にこもるだけではない「打って出る新展開」を考えていただきたいと思います。
先の一般質問で私からは寄付を活かした奨学金給付制度の構築、公共建築物の寄付受け入れの促進と寄付公園制度の展開を求めましたが、他の自治体で実現できているこれらの策がこの世田谷区で実現できないハズがないと考えております。また、文教領域で取り上げたICタグを使った図書館サービスの全面リニューアルも、すでに都内半数の区で実現できているか、着手をされています。図書館サービスを大幅に向上させつつ経費の削減も図れるこうした策が世田谷区でどうして実行に移されないのかが不思議でなりません。こうした時代だからこそアンテナを高く掲げ、事務改善にも果敢にチャレンジしていただきたい、そのことを最後に申し上げ私の意見といたします。