具体的な成果

★給水拠点の耐震率は0%! 水の確保に向けた対策にとりかかりました。

 

都の震災時の想定で区の断水率は最大46%。断水しても給水車があるから大丈夫…? ところが、調べると都がもつ給水車はわずか10台、さらに給水拠点は設備が古く耐震率は0%。上川の議会質問をきっかけに区は車に乗せやすい500Lポリタンクを大量購入、水備蓄も強化されました。また、23区の課長会で都水道局に対し施設の耐震化要望が伝えられました。

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◆上川あや

本日は、災害時、非常時の安全な飲み水の確保に向けてと題しまして、世田谷区の水対策の意外なもろさについて明らかにしていきたいと思います。

課題提起の第一は、都水道局が運営する浄水場、給水所の耐震性、業務継続能力を区が安易に信頼し過ぎていることへの懸念です。
区の地域防災計画は、災害時の給水拠点の整備を都水道局の役割と位置づけ、現状を次のように記述しています。飲料水の給水拠点となる浄水場、給水所等に、エンジンポンプ等の応急給水用資器材を整備する。また、近くにこれらの施設のない地域には、おおむね二キロメートルの範囲内に給水拠点を確保する目的に応急給水槽を建設する。平成十一年度には、中町二丁目公園に応急給水槽を建設したことにより、区内のほぼ全域が給水拠点から二キロメートルの範囲内となった。

この文面だけを見れば、区内の災害時給水ネットワークはさもしっかりと確保されているかに見えます。給水拠点は十二カ所、貯水量の合計は七万一千平方メートルに上り、一人一日最低三リットルの水を必要であるとして、区内在住者八十八万人に二十七日間、給水できる計算となります。
ところが、都水道局公表の水道事業ガイドライン業務指標から安全面の指標を見ていきますと、この安心はあっさりと裏切られます。肝心な給水施設そのものに耐震性がないのです。二十一年度の給水施設の耐震率は何とゼロ%、発電機の燃料備蓄も二日分しかありません。給水所等の配水池の耐震施設率もようやく五三%です。この脆弱な施設群で本当に区民の命を守る水を確保できるのでしょうか。
そこで今回、改めて区に各給水拠点の耐震性の確認を求めたところ、七カ所ある浄水場、給水所等のうち、耐震化を終えている施設はただ一カ所であることがわかりました。これを補完する五カ所の応急給水槽で耐震性は確保されているとのことですが、貯水量から見た耐震率はたった三七%、残る六割以上の水の耐震性は確保されておりません。

そこで伺います。各給水拠点の耐震性について、改めて区に報告を求めます。また、これを補う応急給水槽の燃料備蓄についても現状をご報告ください。その上で、現状の給水拠点十二カ所で安全確実な備えと言えるのか、区の見解を求めます。
関連して、今後の改善策とその見通しについてもお聞かせください。

課題提起の第二は、安全な飲み水の供給方法です。
震災時の給水に関する都区間の取り決めでは、給水拠点の整備は都、給水は専ら区が担うとされておりますが、区はこれをどのようにカバーするおつもりであるのか、また、でき得るのか大いに疑問です。私たち区民の多くは、いざ災害が起きて水道がとまったとしても最終的には給水車が出動し、必要最低限な水は運ばれてくるものとの期待感を持っています。
ところが、現実には東京都が保有する給水車は都内全体でたったの十台です。しかも、その災害時活動は医療拠点、福祉拠点への給水が主で、一般都民への給水ははなから想定されておりません。前出の給水拠点は半径二キロに一カ所開設の予定ですが、くみに行くのはあくまで我々区民です。
東京湾北部を震源とするマグニチュード七・三の地震で想定される区内の断水率は二五・五%。実に十一万五千世帯、二十二万四千人の水供給が絶たれると予測されています。阪神・淡路大震災では、上水道の完全復旧までに実に三カ月もの期間を要しましたが、こうした復旧までの間、どれくらいの区民が重たい水を連日数キロ運び続けられるのでしょうか。高齢者、障害者の世帯を中心に水を運び切れない世帯が続出すること、水の運搬に負担の重過ぎる地域や避難所が出ることは避けられないと考えます。
今回の震災で飲料水の確保が各所で困難になった事態を受け、東京北区は、先ごろ二十三区初の給水車を導入したと言います。一方、当区は依然、十四台のリヤカーで水を運ぶとしています。
私は、北区の三倍の面積を要する当区でこそ、給水車の導入が必要ではないかと考えておりますがいかがでしょうか。また、区の防災備蓄には大型ポリタンク一トンが五個しかない等、その装備にも不安がありますが、その増強も必要と考えます。それぞれ区の見解を伺います。

課題提起の第三に、区の水ペットボトルの備蓄量が少な過ぎると考えます。
本年一月現在、区の保存水の備蓄量は一・五リットルボトルで二万五千六百本です。一見多い数にも見えますが、これは五十万人人口が少ない北区の四分の一の備蓄量です。なぜ当区の保存水がこれほど少ないのか理由を尋ねると、そもそもこの備蓄は、防災備蓄の粉ミルクを溶き、アルファ米をふやかすことを目的としているとの回答でした。つまり、そもそも区民に対する飲み水の備蓄はゼロなのです。
広域水道の一部が汚染されれば、途端に二十三区全体で飲み水に事欠くことは、さきの放射能汚染でも実証されたリスクです。公共水道に依存しない保存水の備蓄も進めていくべきと考えますがいかがでしょうか、区の見解を伺います。

課題提起の第四に、世田谷区のBCP、震災時の業務継続計画は極めてナンセンスであると申し上げます。震災時に司令塔となるこの本庁舎から最寄りの給水拠点、駒沢給水所までは直線距離でも一・五キロメートルの距離があります。しかも、駒沢給水所の耐震率と言えばゼロ%です。ところが、区の職員用の飲み水の備蓄はたった一日分だと言います。昨年十一月に策定された区の業務改善計画は、この水の不足を認め、発災二日目以降も含めて職員用の飲料水及び食料を確保することが必要であると課題を記しましたが、今に至るまで具体的な対策は何一つとられてはおりません。
BCPの想定では、震災発生から二十四時間後には千二百五十七人、七十二時間後には二千二百六十二名、一週間後には三千三十一名もの職員が本庁舎に参集するとしています。人は水が三日なければ死ぬと言われています。発災一週間後からは、毎日最低でも九トンの水を庁舎に運ばなければ、職員の命すら危うくなると考えます。結局のところ、水が確保できなければ、すべての業務が停止すると考えますが、区はこれにどう対処するつもりなのでしょうか、見解を伺います。

質問の最後に、区の本庁舎に地下水を活用した分散型水源を確保することを提案いたします。
BCPを重視する病院、大学、ホテル等で、近年、地下水浄化設備を設置し、専用水道を開設するケースがふえてきました。安定した水質、水量を確保できる深井戸を敷地内に確保し、特殊な膜で地下水をろかし、良質な水を得ることで災害時の断水に備えるとともに、水道料金の大幅削減により大きなコストカットを実現させています。こうした取り組みは、既に東京大学、名古屋大学、山形大学、大分大学など国立大学の四十校、国立水戸病院など数百の医療機関にも広がりを見せており、既に世田谷区の近隣区、また千葉県の某市でもその検討を始めたと伺っています。
近隣の調布、狛江両市でも、同様の設備を開いた慈恵医大第三病院と災害時協力協定を市が結び、一日九万三千人分もの水道水の供給余力を市民の安全確保に生かしています。また、産業技術総合研究所は先ごろ、福島原発の事故を契機に、水源としての深井戸の優位性を指摘、地表の汚染に強い水源だとしています。さらに放射線医学総合研究所も、検証の結果、逆浸透膜が唯一放射性物質をこし取れる方法だと発表しました。武蔵野市では、独自の水道事業により、市内二十七カ所の深井戸から市民が使う水道水の八割をつくり供給しておりますが、懸念される地盤沈下等は起きておりません。
以上、深井戸を使った地下水の活用は環境とも調和し、科学的にも正しい結論だと考えますが、いかがでしょうか。本提案に対する区の見解をお伺いして、壇上からの質問を終わります。

◎内田 危機管理室長

それでは、私から五点にわたりましてご答弁いたします。

まず、都水道局の浄水場、給水所の耐震安全性、供給継続能力につきましてご答弁いたします。
区民が利用する給水拠点は十二カ所ございます。東京都水道局によりますと、下馬二丁目にあるこどものひろば公園内等にございます五カ所の応急給水槽につきましては一〇〇%耐震化されておりますが、給水所や浄水場等の七カ所のうち、耐震化が完了しているのは玉川給水所のみと伺っております。
一方、給水拠点のうち応急給水槽につきましては、モーターで水をポンプアップするということで、非常用発電装置が設置されておりまして、給水所や浄水場も同様で、稼働時間はいずれも五十時間と聞いております。給水拠点の維持管理は都の水道局が行っておりまして、非常用発電装置の燃料は災害時協力協定を締結している石油商組合から東京都が調達するとのことです。なお、応急給水槽につきましては、万が一、自家発電装置の燃料がなくなっても、高低差を利用して給水槽の下にございます蛇口から給水可能となっております。
東京都水道局では、このたびの大震災を踏まえ、給水拠点の耐震化は課題であると認識し、施設耐震化のスピードアップに向け、検討に着手したと伺っております。区といたしましても、東京都に対して災害時に水の供給が十分に図られるよう働きかけをしてまいります。

次に、給水配水の体制は万全か、給水車の確保、関連資器材の増強につきましてご答弁いたします。
飲料水の給水につきましては、東京都が応急給水に必要な資器材等の設営を行い、区が被災者への応急給水を行うこととなっております。区としては、災対地域本部――これは総合支所、災対物資管理部――財務部が連携し、給水拠点から避難所への搬送や、給水は区職員を含め防災区民組織、ボランティアが行うこととしております。また、毎年東京都と区が協力して給水の具体的な手順を確認する訓練を実施しております。給水拠点からの水の運搬につきましては、学校にございます避難所運営倉庫に配備しておりますリヤカーとポリタンクを使用することになっております。また、区内四カ所の応急給水槽につきましては、区が三リットルの災害給水袋を五千枚用意しております。これを活用いたします。しかし、被災者にとって水の確保運搬がかなりの負担になります。区といたしましては、例えばポリタンクを軽トラックに積んで避難所に安定供給するなど、必要な備品の強化に努めてまいります。

次に、保存水、水ペットボトルの備蓄量が少な過ぎないかにつきましてご答弁いたします。
お話しの北区でございますけれども、北区は、区内に三カ所の給水拠点がありまして、区民五十万人分の三日程度しか貯水量がないため、備蓄の水ペットボトルと給水拠点の水を併用して断水時の給水を行うと聞いております。
一方、世田谷区内には十二カ所、杉並区の部分も含めまして十二カ所の給水拠点がございまして、常時七万一千立米の貯水量がございまして、八十数万人の区民が一人当たり三リットル必要だといたしますと、約二十八日程度の貯水量が確保されております。ペットボトルの備蓄につきましては、先ほどお話にありましたとおり、現段階では、区民への給水は給水拠点を中心に、備蓄の水ペットボトルにつきましては乳児のミルク用及びアルファ米に使用することを予定しております。
しかしながら、飲み水確保につきましては区民だけでなく職員にも大変重要な問題ですので、ペットボトル備蓄の増量等につきまして、災害対策総点検の中で積極的に検討してまいります。

次に、世田谷区の業務継続計画の中で、本庁の水の備蓄は一日分である、そのことについてご答弁いたします。
お話にありますとおり、災害対策本部の職員用飲料水の備蓄につきましては一日分でございます。二日目以降につきましては、地域防災計画では、十二カ所の給水所、応急給水等により調達することになっております。お話しの三日分の飲料水の確保につきましては、BCP業務継続計画の検討部会の中で検討させていただきます。

最後に、深井戸の確保につきましてご答弁申し上げます。
飲料水の供給に向けては、水道事業者である各自治体がそれぞれの地域の特性に合わせ工夫を凝らしていると認識をしてございます。深井戸につきましては、現在、比較的規模の大きい病院、介護福祉施設等、水の消費量が多いところで設置されていると聞いております。お話にありました深井戸の活用につきましては、飲料水供給の手法の一つであると考えられますが、導入に当たりましては、容量制限であるとか、プラントを設置する敷地、水質等の課題があると考えております。
区といたしましては、東日本大震災で中長期にわたる自治体が影響を受けたことから、ご提案の深井戸を初め、飲料水の確保のあり方など、費用対効果等も含めまして関係所管とも検討してまいります。

◆上川あや

部長のご答弁を一通り聞きまして、どこかぴりっとしないというか、人ごとのように聞こえる部分がありました。

区長に伺いたいと思います。結局のところ、災害時の給水拠点そのものの多くに耐震性がない、つまり前提条件そのものに予断がある。また、ここのBCP、庁舎で采配を振るうといっても、二日目以降の水の確保が非常に危うい。まず、ここにも前提条件に予断がある。こうした現状についてどのようにお考えなのか、指導力を発揮していただきたいと思いますけれども、ご見識をお願いしたいと思います。

◎保坂 区長

上川議員にお答えいたします。
災害対策総点検に当たり、あらゆることを想定しようという中で今回のご質問の水の備蓄、そして区民への供給がどうなっているのかと、多角的にご指摘されたことをまず正面から受けとめたいというふうに思います。水の供給、これがなければ幾ら備蓄が――備蓄についての量があるというのはご指摘のとおりですけれども、この水が生活現場、高齢者も多い世田谷区ですから、その路地のところまで来て給水を受ける、あるいは避難所に給水の運搬があるということについて、よりきめ細かい多様な備えをしていくべきだろうというふうに思います。
リヤカーで運ぶということも、これは活用してもらわなければいけませんけれども、リヤカーだけではなくて、例えば先般、危機管理専門家の木村拓郎さんという、略するとキムタクなんですが、この方のご指南、ご指導を受けました。
世田谷区のようなところで、実は軽トラに折り畳み式のポリタンクを常時しまっておいて、これを水の運搬に使うというのは、実はかなり現実的じゃないだろうかというご指摘も受けましたし、また、給水車についても、都内で十台しかないということでありますので、給水車の確保についても検討していきたいというふうに思います。また、ワンボックスの車などで、一・八リットルのいわゆる石油タンクサイズの水タンク、そういうものを小分けして積んで運ぶようなことも含めて、さまざまな形、要は被災時の区民に水がきちんと届くという形を速やかに整備をしていきたいと思います。
災害対策の中でも、電源の問題に加えて、この区庁舎が防災機能の指揮所になる、水がなくてどうなるんだという指摘はごもっともですので、これに対しても、優先的に時間をかけずに取り組んでまいりたいというふうに思います。

◆上川あや

危機感を共有していただいているようで、非常に心強く思いました。質問するだけでは終わりませんで、半年後に私、必ず執行体制をその後チェックしていますので、よろしくお願いいたします。終わります。