「東日本大震災、福島原発事故を受け、今、世田谷区がすべきこと」

◆上川あや

平成23年度、世田谷区一般会計予算ほか、4件に賛成する立場から意見を申し上げます。
まず改めまして、このたびの東日本大震災で被災された方々にお見舞いを申し上げますと共に、この災害で犠牲となられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

区の23年度予算案に対する、個々、具体の要望に関しましては、すでに予算委員会の席上、縷々、意見を申し上げましたので、ここでは今回の災害に関連して今後、区で取り組んでいただきたい課題に絞って、意見と要望を申し上げます。

まず要望の第一に、被災者の受け入れの強化と支援策の充実を求めます。
警察庁によると、3月21日現在、東日本大震災で避難生活を強いられている被災者は、約32万人に上るとされています。区でも先ごろ、7箇所の区民センターと地区会館で240名。区営住宅と「せたがやの家」で45戸。川場村の区民健康村で80名。あわせて4~500名規模の避難者の受け入れを表明しましたが、被災した方々の首都圏志向は強いとされており、区としてもなお一層の受け入れの強化を検討するべきです。

先の予算審議の区の答弁に、区内の空き家件数が、約2万2000戸に上るとの報告がありました。こうした空き物件も含め、民間の方々の資産とボランティアの意識を、被災者の受け入れに積極的に結びつけていただきたいと考えます。

奈良県奈良市や大和郡山市、島根県江津市等では、すでに公営住宅の空き部屋だけでなく、民間の空き家や空き部屋まで避難者の受け入れに活用しようと無料で提供してもらえる物件の募集をスタートさせました。
また神奈川県も先ごろ、今回の震災で被災し不自由な避難生活を強いられている小中高生を1年程度、責任をもって預かっていただけるホームステイ・ボランティアを募集、すでに1000件もの応募が寄せられているとのことでした。区でも、これらの取り組みを参考に、さらなる避難者の受け入れに積極的に取り組んでいただきたいと思います。

また、避難者の支援においては、避難してきた子どもの教育をどうするのか、避難者の生活再建に区としてどう関わっていくのか等、数年先を見据えた支援策の検討が不可欠になってくるものと考えます。特に、避難してきた子どもの区立校での受け入れに関しては、スクールカウンセラーによる十分な心のケアが不可欠になると考えます。
この点については先日、三宅島の火山噴火で被災し区部の学校に避難してきた子を預かった経験を持つ学校教員の方から、強くアドバイスを受けました。
被災地で家族や家を失った子の心は本当にひどく傷つき、塞いでいるそうです。
その上、まったく違う環境に身を置いて早く慣れるよう子どもに求めることは本当に酷なことだといいます。先生たちは「みんな仲良く」と指導するものの、子どもたちの間には、よそ者に対する意地悪が絶対にある。学校の先生が片手間に相談に乗るくらいでは全く対応できず、スクールカウンセラーなどのプロの関与が欠かせない。それも被災してきた子どもにピッタリ、カウンセラーをつけるくらいの対応でないと十分なケアにはならないだろう、とのお話でした。この点、区と教育委員会には補正予算を組んででも、ぜひ充分な専門家を確保していただくよう求めます。

要望の第二に、区独自の安全な水の確保策を求めます。
先週、都水道局の金町浄水場の水道水から基準値を超える放射性ヨウ素が検出され、都が、23区と多摩5市の1歳以下の乳児に水道水を与えることを控えるようアナウンスを出したことから、区民の間にも一気に飲み水への不安が広がりました。
昨日、都が3つの浄水場の水道水について検査をした結果では、全ての浄水場で放射性物質は「不検出」とのことでした。しかし、福島第一原発の事故状況が依然、予断を許さない中、安全な飲み水の確保は、なお綱渡りの状況にあるというべきです。

そこで、幼児等への安全な飲み水の確保に向けて、区として深い水脈から飲料用水を確保できる井戸、深井戸の積極的な確保、活用をしてはどうかと考えます。
区が震災対策用に1000箇所以上、指定している民家の井戸のほとんどは浅井戸だと考えます。浅井戸は、地下の第一不透水層(岩盤)より上を流れる地下水を利用した井戸で、環境による影響を比較的受けやすいとされています。一方、深井戸は、不透水層の岩盤より下を流れる地下水を利用しているため、地表からの影響がほとんどなく水質が安定しているのが特徴です。

このため北区では、民家に残る浅井戸を災害時の消防用水源に、区内16箇所に確保した深井戸を、災害時の区民の飲料水の水源にと使い分けています。
千葉県柏市も、今回の水道水汚染騒動を受け、早速、深井戸からくみ上げた地下水を飲用に処理し1歳児未満のお子さんをもつ各世帯に配ったといいます。水道水への不安が長期化する事態に備え、区も積極的に安全な水の確保に動く必要があると考えます。積極的な検討を求めます。

要望の第3に、電力需要が最も伸びる夏に備え、区民の命を守る方策の強化を求めます。
この課題の第一に人工呼吸器使用者、酸素濃縮器使用者への対応を求めます。
先の予算審議で、区はすでに東京電力と連携して区内の人工呼吸器使用者の状況を調査し、数時間の計画停電に耐えうるバッテリーパックの備えがあること等を確認したとのことでした。しかしこの夏、電力需要が大きく伸びた時、最も懸念されるのは、予期せず大規模停電が起きたときの安全の担保が何もないことです。
この週末、ある区民の方から、予期せぬ大規模停電時に、迅速にスイッチを予備電源に切り替えられなければ、途端に命が危うくなる――と痛切なご心配の声をいただきました。

担当のケアマネージャーと相談して緊急時の対応のすべを確認する、災害時要支援者への緊急対応を、町会・自治会との協定の中に位置づける、地域に居住する民生委員に停電時の迅速な対応を求める等、区としての対応策をすぐにでも詰めていただく必要があると考えます。

次に、体温調節能力の弱い、高齢者、子ども等への熱中症対策の検討を求めます。
東京電力社長は25日の記者会見で、夏の電力不足について発表した際、「東京23区にもご協力いただかざるをえない」と計画停電を拡大する意向を示しました。
停電しないエリアの公民館や児童館の開放、学校プールの開放、発電機で冷やすことのできる病院病床の確保等、区としても夏前の早い段階から熱中症対策を固めておく必要があると考えます。ぞれぞれ、しっかりとした対処をお願いいたします。

最後に、今後の震災対策の見直しに、すぐにでも取り組んでいただくよう求めます。
言い古されてきたことですが、天災はいつやって来るのかわかりません。
今回の震災で明らかになった課題については、できるところから早速、改善の手を打っていただくよう求めます。
特に今回の地震では、区の災害時の司令塔となるべき第一庁舎そのものが、一番に被災したという状況に愕然としました。
大小60枚ものガラスが割れ、その多くが管理職の席の真後ろだったと伺いました。また本震につづく余震が続くなか、第一庁舎の安全性を信頼しきれない第一庁舎の職員だけがいつまでも庁舎に戻れず中庭に留まる様子が印象的でした。こうした庁舎に、危機管理の主要部門を置き続けることには、再考を求めたいと思います。

また、今回の震災の帰宅困難者対策では、沿道の帰宅困難者の休憩施設として機能し、水・トイレを提供するはずだった日本郵政に当初、全く区から連絡がつかなかったと伺いました。この件に限らず災害時、通信が機能不全に陥るなか、災害時の区と区内団体との協力協定がどこまで有効に機能するのか? 大変大きな課題が残されたと感じました。
こうした点についても、早い段階での再検討が必要であると考えます。

以上、被災者の救援と被災地の復興に向け、区としても最大限の努力をしていただきたいこと、今回の震災から充分な教訓を引き出し、さらなる安全・安心の街づくりに役立てていただきたいことを強く要望いたしまして、レインボー世田谷の意見と致します。