ちょうど1年前の総括質疑に引き続き、区民共有財産の管理について伺います。

まず、取り上げるのは、国指定重要文化財、野毛大塚古墳の出土品311点や、都指定重文、4200点余りの大場家資料ほか、5万点余りの郷土資料を収蔵する場所が、区立郷土資料館地下の収蔵庫のままで良いのかどうかです。

昨年までの質疑で私からは、同収蔵庫が池を埋めた地下空間にあり、周囲は湧水が豊富で、停電等で常設の湧水汲み上げポンプが止まれば、数時間で水没の恐れすらあること。
また大量の降雨があった、おととし夏には、建物の老朽化もあるのか今度は同館地下に雨水が浸入し、地下収蔵庫の文化財を急ぎ職員が上階に上げる不測の事態さえ招いたこと等を指摘し、水害リスクのない場所への同収蔵庫の再配置を求めました。

すると当時の教育政策・生涯学習部長、現在の教育長は次のようにお答えになりました。

「郷土資料館では湧水槽にたまった地下水の排水ポンプヘ、停電時でも最大連続31時間、電力を供給できる自家発電機の新設工事等を昨年度に実施し、地下収蔵庫の浸水被害リスクの低減を図ったところです。」

「今後、築六十年を迎えますことから、今後、関係部署と連携を図りつつ、リスクを回避し得る収蔵資料の保全にさらなる検討を進めてまいります。」 

ところがこのご答弁から1年、「さらなる検討」がなされた形跡などありません。

その証拠に本年1月、所管課にその後の検討状況の報告を文書で求めると次のようなご回答が寄せられました。読みあげます。

「郷土資料館については、現在、長寿命化調査を実施中につき、調査結果に基づく改築工事等の中で対応していく」 ――とたったの2行です。

「改築工事の中で対応していく」というのですから収蔵庫移転など考えてないことは明らかです。

加えて、昨年の質疑と同じ月、区がまとめた「公共施設等総合管理計画一部改訂(第2期)」も、郷土資料館については次のように書いています。
「現施設規模をもとに、施設を更新する。」 つまり、キャパシティは増やさない。
これでは上部への移転すら不可能ではないですか?

そこで、昨年のご答弁とは裏腹に、収蔵庫移転を検討しない区教委の姿勢は全く無責任ではないですか? と所管部に伺うと、現在の収蔵庫になお水害リスクがあることはお認めで、またその移転も検討しない訳ではないとおっしゃる。
記録に残る形では移転を検討中とは認めないのに、記録に残らない裏話としては移転を口にする。こうしたご対応では信用できません。

結局、リスク回避への移転に向け、ご努力いただけるのでしょうか?
はっきりご答弁頂ければと思います。

次に伺うのは、移転が実現するまでの対処です。
私の指摘を受け、区は31時間が限度の非常用発電機の整備をなさいましたが、こちらも所詮、2日と持たない付け焼刃ではないのでしょうか?

そこで問いますが、停電から31時間を過ぎて以降、いよいよ水没の恐れが出て来た際、区教委には、5万点に及ぶ貴重な文化財を安全、かつ速やかに移転させる避難先の確保、救出する文物の優先順位付けや取扱い手法の検討及びそのマニュアル化、また同想定に基づく人員計画、さらにその実行に必要な装備等、備えたのでしょうか?

次に、文化財の保全に真剣に向き合わない課題は、宇奈根の考古資料室にもあると思っています。 同資料室は多摩川氾濫時、最大3メートルもの浸水が想定されるエリアに建つプレハブです。

こちらも水害の回避に向けた移転の検討を求めたところ、区教委は高さ50センチの止水版の配備と併せ、貴重な史料を2階にあげる対処を考えるといったご答弁でした。

こちらも、その後の検討状況について文書で回答を求めると「長寿命化調査年度が2040年につき、それに向け収蔵庫のあり方を検討していく。」とたった2行です。

まったく! 意味不明です。

その意味を所管課に問うと、今から15年後、2040年度に長寿命化の調査を行うので、それを待って収蔵後のあり方を検討するとの説明で、全くもって悠長です。

多摩川氾濫時には、建物ごと押し流されるかもしれないプレハブに、あと15年、貴重な考古資料を置いてから検討するとの姿勢も全く無責任ではないのですか?

こちらもしっかり、リスクの回避を図るよう、改めて求めますけれどもいかがですか?

郷土の歴史にとって重要で、だからこそ保存に努めてきた文化財は、これからもしっかり守り、伝えることが、担当部の責任、使命だと思いますので、現にあるリスクを甘く見ず、しっかりとご対応いただくよう改めて求めまして、私の質疑を終わります。