◆上川あや

まず一点目、区の若年がん患者在宅療養支援制度の改善を求めて伺います。

四十歳未満のがん患者の皆さんは、たとえ末期になっても介護保険の対象外。このため、在宅で受ける訪問介護や訪問入浴、介護用ベッドのレンタル等は全額自己負担、四十歳以上の患者に比べ大変大きな格差がありました。
そこで、私よりこうした現状を区で変えられないですかと二度尋ね、区は二〇二二年四月、独自の若年がん患者在宅療養支援制度をスタートさせました。
この制度の創設には感謝するものの、今日、その内容は他自治体に比べ立ち遅れ、課題も大きくなっています。

そこで問います。
第一に、在宅療養での介護用ベッドの確保や訪問介護等の調整を患者本人と御家族、病院のソーシャルワーカー等に丸投げする制度上の空白を埋めていただきたい。この春、友人が経営する区内の介護事業所に区内病院のソーシャルワーカーさんから御相談があり、末期がん患者のお母さんが既に酸素を吸われた状態で、小さなお子さん、御家族のいる御自宅に戻りたいと切望され、退院調整しているが、介護保険が使えないため、その調整をケアマネさんにも頼めない。病院側で調整しようにも、病院では介護用ベッドを借りる事業者さえも分からない。この病院のワーカーさんは、区の若年がん患者支援制度が役立つと考え、誰が調整をすればよいですかと区に尋ねたそうですが、返答は連携でやってくださいの一言で、その意味も図りかりかねたといいます。結局、この件は困難を見かねたケアマネさんが引取り、多忙を押して無償でケアプランの作成と各種の調整を急いだといいます。千代田区、足立区の同種の事業では、主治医による意見書作成費、ケアプランの作成費まで助成し、江戸川区ではケアプラン作成に係る協定事業所までを用意しています。区でもこれらを参考に、その制度的欠陥を埋める努力を求めますけれども、いかがでしょうか。

第二に、申請時に遡っての助成です。
区の支援対象は利用決定の通知後に生じた費用だけで、審査期間中に生じた費用は対象外。このため、前出のお母さんの急遽の退院にかかった福祉用具のレンタルでは、月末の僅か一日だけの利用にも半月分もの請求が発生し、その御負担額が重いと見た事業者が料金を取らず、事業者側が泣く形で本人、御家族に寄り添ったといいます。末期がん患者の退院では、帰宅後、僅か一日で亡くなることもあることを踏まえれば、介護保険同様、申請時に遡って助成できる優しい制度とするべきです。区の見解を問います。

第三に、助成額の低さです。
区の支援制度は本人負担が一割で、訪問サービスと福祉用具のレンタルの合計の利用上限額は月六万円です。この金額は、介護保険でいえば最軽度の要支援一、まだ一人自転車で外出できる高齢者等への上限額五万円に近く、末期がん患者の介護負担に全く見合わないものとなっています。末期がん患者の御帰宅では、介護用ベッド、褥瘡予防のエアマットなど一式のレンタルだけで月三万円、区の支援額の半分が吹き飛ぶといいます。同じサービスに対する他自治体の上限額を見ると、さいたま市、柏市では月八万円、亀山市、いなべ市では月九万円、神戸市でも同十万円と当区を大きく上回っています。区でも、がん終末期の介護負担を踏まえ、増額を求めますけれども、いかがでしょうか。

◎清水 世田谷保健所副所長

私からは、大きく三点について御答弁いたします。

初めに、若年がん患者在宅療養支援事業における支援のさらなる改善について、また、がん終末期の介護負担について御答弁いたします。
区は、思春期・若年成人世代、いわゆる十五歳から三十九歳のAYA世代を含む介護保険の適用とならない四十歳未満の末期がん患者に対して、在宅療養の充実を図るため、令和四年度より世田谷区若年がん患者在宅療養支援事業を開始いたしました。支援の内容といたしましては、在宅サービス利用料と福祉用具貸与費用を合わせて上限額月六万円、福祉用具購入費用は上限額年間十万円、住宅改修費用は一回のみの利用で上限額二十万円を設け、上限額に対して自己負担は一割としております。なお、生活保護受給者についての自己負担はございません。
区は、AYA世代の方々の負担等を軽減し、安心して療養していただけるよう都内でも先駆的に開始した当該事業ですが、ニーズに即したサービス等のメニューと適切な相談支援は絶えず検証していくべきものと考えております。
今後とも他自治体の支援の内容を含めた動向等も注視するとともに、御指摘のそれぞれを改善すべき課題と捉え、学識経験者、地区医師会、がん検診連携拠点病院、区民委員等で構成する世田谷区がん対策推進委員会等で御意見を伺いながら、支援策を一層充実させてまいります。

次に、申請時に遡って助成可能な制度とすべきについて御答弁をいたします。
世田谷区若年がん患者在宅療養支援事業の申請方法についてですが、申請者はまず、承認申請書と医療機関に作成を依頼する意見書を提出いただきます。区は、承認申請書等を基に、申請者が当該支援事業の対象者であるかどうかを審査し、事業の助成の承認、または不承認を決定します。なお、費用の助成は決定日以降の在宅サービス等に対して行っております。現在、区では、承認申請書等の受領から承認決定まで速やかに手続を進めております。また、申請書類の不備等でやり取りに時間がかからないよう、事前にお問合せをいただいた際には、丁寧な説明を心がけ、がん患者や御家族の負担を少しでも減らせるよう努めております。
議員の御提案の申請時に遡って助成する制度への変更につきましては、区としましても検討課題と捉え、若年がん患者の皆様方に対し、より有効な支援の方策として検討してまいります。