1.視覚障害者の就労支援策「はり・灸・マッサージサービス」でお札の識別の難しい施術者の金銭授受をサポートすることについて
◆上川あや
本会議に続きまして、視覚障害者の就労支援策としてのはり・きゅう・マッサージサービス事業、三療サービスについて伺ってまいります。
本会議で指摘をしましたとおり、同事業で区が提供する施術の会場には、区とシルバー人材センター間の契約によって施術者を支援するためのシルバー人材が派遣されてまいりました。しかし、ことしの初め、会場内で金銭の取り扱いについては一切行わない、手で触れてもならないという文書がシルバー人材センターから発出され、現場は混乱する事態となりました。
もとよりお金の識別が困難な視覚障害者の方々がお札もコインも確認し、おつりまで渡し、施術をしながら終日金銭を管理しなければならないとなったからです。そのきっかけになった文書が今回お示しするパネルの文書です。
発出日は一月四日で、タイトルが「鍼・灸・マッサージ受付業務について」ということで、宛て名は鍼・灸・マッサージ就業会員各位、シルバー人材センターに登録をされた高齢者の方々ということです。
核心部分のみ読み上げます。
「受付業務について徹底事項を、連絡します。鍼灸マッサージ受付業務において『金銭の取り扱いは一切行いません』」、この「金銭の取り扱いは一切行いません」の部分は大文字で、太字で、なおかつアンダーラインで強調されております。
余りにもこれはおかしいと思うんですね。視覚障害者の皆さんを支援するための委託事業で、彼らが最も不得手とすること、また、最もトラブルがあってはいけない部分でサポートをするな、サポートをしてはならないという文書が出されています。なぜこのような事態が引き起こされたのか、御説明を求めます。
◎若林 障害施策推進課長
世田谷区はり・きゅう・マッサージサービス事業において、利用者の方は自己負担分として千五百円を施術を受託している世田谷区視力障害者福祉協会に支払っていただいております。この利用料の取り扱いについては、区がシルバー人材センターに委託している受付業務の仕様書に具体的な記載がなく、また、世田谷区視力障害者福祉協会と世田谷区シルバー人材センターの間に金銭授受に関する取り決めもございませんでした。
今回、シルバー人材センターが通知を出した背景には、区との契約の中で金銭の取り扱いについて明記がされておらず、世田谷区シルバー人材センターでは、そうした場合、トラブル発生時に備える損害賠償保険の対象にならないことから、会員に対して御指摘のような通知が出されたものと考えております。
◆上川あや
シルバー人材センターは、三療の会場内サポートについて金銭に触れるなと通知を出したわけですが、一方で、同じシルバー人材センターが行っている家事援助サービス――これはそのチラシですけれども――であるあったかサポートでは、同じ高齢者の方々が買い物を初めとして金銭に触れるサポートを実際に担っています。これは矛盾ではないのでしょうか。
三療の会場で金銭に触れてはならないとされた原因は、区とシルバー人材センター間の契約の不備によるものだろうと思います。区としては初めから、利用料を受領し、必要ならおつりも渡し、その日の施術の終了まで受付で代金をお預かりできるよう、そういった契約を本来心がけるべきだったろうと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
◎若林 障害施策推進課長
当事業の利用料は世田谷区視力障害者福祉協会が受領する金銭であることから、その取り扱いについて区が受付業務の仕様書の中に、その利用料を施術者にかわって受領し施術終了まで管理することを記載することは難しいと考えております。しかしながら、視覚障害のある施術師によりサービスが提供されることを考えますと、施術会場内での施術師の誘導や金銭取り扱いの見守りなど、必要となる配慮を記載するべきであったと考えております。
◆上川あや
区が現在考えている来年度の仕様書案についても見せていただきました。そこにはこう書かれておりました。施術者が利用者より利用負担金を円滑に受領できるよう補助する、ここで言う補助するというのは何なんでしょうか。ここで本来求められるサポートは、金銭の識別が難しい視覚障害者にかわって金銭の受領と預かりを受付でしっかりと行うことであるはずです。目の見えない施術者の横についてお札やコインの種類についてあれこれ口を出すこと、側面支援することではないだろうと思います。
この点を明確に示す契約書、仕様書であるべきだと思います。この点、改善をお願いしたいんですが、いかがでしょうか。
◎若林 障害施策推進課長
現在検討中の来年度の仕様書案の中での利用者負担金を円滑に受領できるよう補助するという記載についてでございます。
繰り返しとなりますが、区が利用料の取り扱いについて直接的に仕様書に記載することが難しいことから、おっしゃるような側面的な支援を意味するものとして記載いたしました。来年度につきましては、視覚障害のある施術師に対する会場内の支援について仕様書に記載するとともに、金銭の取り扱いにつきましては、世田谷区視力障害者福祉協会と受付業務を受託する事業者の間の取り決めについて調整することで改善を図ってまいります。
◆上川あや
御不便のないようにしっかりとお願いしたいと思います。
最後にもう一点、施術者の方々から懸念の声が上がっています。
今回取り上げました三療の会場内サポートについては、長年シルバー人材センターに随意契約でおろされてまいりました。今回の混乱を受けて、区では、来年度以降、シルバー人材センターにこだわらず入札に付すことも考えていると伺いました。
しかしながら、同サービスの応募者への電話での御対応、抽せんの作業、当せんはがきの発送、キャンセルへの対応、そして何より視覚障害の方々への対応にシルバー人材の方々はなれていらっしゃいます。利用者への対応も丁寧で評価が高いと、この部分では伺っています。これを入札に付して新たな事業者に一から習得していただくという形にするのでは、現場で混乱が生じたり、顧客サービスの低下も招くのではないかということを危惧しています。万が一評判を落とせば、事業の本来目的である視覚障害者の方々の就業機会の提供そのものが危うくなりかねません。
区が委託先の選定で心がけるべきことは、安定的な事業の継続と的確なサポートであるはずです。まず入札ありきという考え方はとらずにいただいて、慎重に歩みを進めていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょう。
◎若林 障害施策推進課長
今回いろいろと御指摘をいただきましたが、施術者への適切なサポートを行い、当事業を円滑に進めていくためには、さまざまな対応を丁寧に行う必要があると認識してございます。しかしながら、先ほどお話ししましたように、視力障害者福祉協会が受領する利用料を協会にかわって受領し管理することについては仕様書に明記することが難しいこと、また、シルバー人材センターがどこまで対応可能なのかという課題もございます。
こうしたことも踏まえて、今後の委託先については、視覚障害のある施術師への必要な支援が円滑に行われるとともに、利用者に対してもきめ細かい対応が維持されるよう、選定の仕方や仕様書の記載方法を含めてさらに検討してまいります。
◆上川あや
終わります。