◆上川あや
初めに、全額自費のがん先進医療に支援策をと題して伺います。
本日、この日も私の家族ががんの最先端医療を受けており、患者家族としてつくづく問題が大きいと感じていることを議会質問いたします。
二人に一人ががんにかかり、三人に一人ががんで死亡する現在、がんは区民にとっても大変身近な生命、健康への脅威となっています。
こうした中、区が本年十月よりがん相談窓口を開設することは評価します。また、今年度から来年度にかけ、一次検査と精密検査の結果をあわせて把握するシステムを区で構築し、要精密検査と判断された人を確実に受診に結びつけ、がんの早期発見を促す方針であることも評価します。
しかし、いざ、がんとわかり、有効な治療に踏み出そうと思っても、積極的な治療をちゅうちょ、断念せざるを得ないケースは実は少なくないのではないかと感じています。その理由の一つは経済的負担の重さです。例えば、手術が不可能な部位のがんやX線を当てると副作用が強く出てしまうような骨軟部腫瘍の骨盤、脊髄近くにできたがんの治療は、国も認める先端医療の一つ、重粒子線治療の独壇場だとされます。
実は今、私の家族もこの治療を受けています。重粒子線のがん殺傷効果は通常のX線の二倍から三倍、従来放射線が効かないとされてきた種のがんでもかなりの効果が期待でき、照射精度一ミリ未満という細かさで、病巣の形、深さに合わせ線量の集中ができる特性から、脊髄等、隣接する重要臓器への影響も小さくできると期待しています。
しかし、その治療施設は国内にわずか四カ所で、技術料は全額が自己負担です。世田谷区から最寄りの千葉市の放射線医学総合研究所で治療を受けた場合、その費用は三百十四万円に上ります。実際には、これに健康保険適用となる検査料、薬代、入院費等が加わります。治療期間中の家族の生活費や、再発、進行抑制に向けた追加の化学療法まで含めれば、恐ろしいくらいその費用は膨らんでいきます。
加えて、手術、放射線、化学療法に次ぐ第四のがん療法とされる免疫療法の幾つかも、さきに挙げた先進医療であり、全額が自己負担です。
私の家族も今回、使える抗がん剤がない腫瘍だと説明を受けましたが、ここで先進医療を選択すれば、全額が自己負担、ワンクール数回の治療に百二十万円から二百四十万円はかかる上、検査料等もまた別途かかるといいます。
昨年一月の時点で国が認めた百五の先進医療技術のうち、がん治療技術は実に四十一に上りました。これらは全て自己負担で、うち六つの費用は三百万円を超えています。まさにお金の切れ目が命の切れ目、そのような現実が家族とその患者を取り巻いているのです。よって、がんの早期発見、相談に向けた区の努力は評価できますが、より積極的に治療に臨める環境整備に向けては経済的支援が不可欠です。この点、区はどう認識しているのでしょうか、まず伺います。こうした状況下、豊島区では昨年六月より、区内の二信用金庫と提携し、先進医療を受けるための専用ローンをスタートさせました。がん先進医療を受ける患者とその御家族を対象に、一年以上区内に在住し、住民税等の滞納がなく、一定の所得以下であることを条件に、三百万円以内の融資が用意されています。これにより、区民は実質金利ゼロで、全国どこの医療機関でも先進医療をスタートできる経済基盤が整えられました。
同様の支援制度は、佐賀県鳥栖市や鳥取県でも展開されています。また、粒子線治療に特化した負担軽減策を持つ自治体も、群馬県、兵庫県、佐賀県、鹿児島県等に広がりを見せています。
豊島区の場合、今年度、前出の利子補給制度に計上した費用は五十八万一千円、世田谷区の人口規模で拡大しても、決して大きな財政負担とはなり得ません。当区としても積極的に類似の支援策を講じていただきたいと考えますが、いかがでしょうか、区の見解を伺います。
◎成田 世田谷保健所長
私からは、がん先進医療について二点お答えいたします。
まず、積極的に治療に臨める環境整備についての御質問でございます。
平成二十四年六月に見直された国のがん対策基本計画においては、放射線治療や化学療法、手術療法のさらなる充実と医療従事者の育成、医療技術の施設間格差や施設間格差の解消及びがん患者が働きながら治療や療養を続けられる環境整備がうたわれ、がん患者の長期的な経済負担の軽減策について、引き続き検討を進めるとしております。
お話しのように、先進医療は一般医療と比べますとその技術医療効果は高い反面、先進医療の種類や病院によって異なりますが、技術料が非常に高く、医療保険の保険外診療となるため、高額療養費制度の払い戻しの対象にはなりません。高額な治療費は全額、患者さんの負担となっております。
区といたしましては、患者本人や家族が積極的に有効な方法を選択し、経済的理由により先進医療を断念することなく、治療を続けていける環境づくりを推進していくことは重要な課題であると認識しております。次に、がん先進医療への負担軽減策についてでございます。
お話しの豊島区などで行っておりますがん先進医療費利子補給事業は、厚生労働省が定めるがん治療を目的とした先進医療を受けるため、区が指定する金融機関の医療ローンを利用する場合に、条件に合えば、その利子相当額の助成が受けられるものでございます。
また、群馬県や鹿児島県のように、県内にある粒子線治療センターを利用する患者や家族が指定の金融機関から医療費の融資を受けた場合に、その利子相当額の一部を助成する自治体もございます。
これらにつきましては、がん治療の選択肢を広げ、患者や家族の経済的な負担を軽減する支援策の一つであると考えております。
区は、がん対策推進条例の制定後、この条例に基づく具体的な政策の実施に向け、がん対策推進計画を策定することとしております。この計画の中で、がん患者及び家族への支援について、他自治体の先行事例なども調査の上、検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。