★差別禁止の項目に「民族」、「国籍」のキーワードが加わり分かりやくなりました
差別禁止の項目に「民族」、「国籍」のキーワードが加わり分かりやくなりました。
人種差別一般を禁じる法律がない日本で、民族・国籍差別を禁止する条例は全国初。
画期的な条例としてテレビ、新聞でも報じられました。
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◆上川あや
多様性を認め合い、人権を尊重し、男女共同参画と多文化共生を推進する条例について伺います。
九月五日の区民生活常任委員会に同条例案の骨子案が報告されました。
その際、骨子案の七、何人も、性別等の違いまたは文化的違いによる不当な差別的取り扱いをすることにより、他人の権利利益を侵害してはならないとした差別禁止の規定は行き過ぎ、不適切であり、削除するべきとの意見が述べられました。しかし、これはやや過敏な反応だと感じます。
骨子案に差別の禁止という表現は一切存在せず、同規定の項目名も差別の解消等と大変穏便です。確かに、してはならないの表現は法的な禁止を意味しますが、当然してはならない差別をしてはならないと書いているだけで、罰則規定もありません。あたかも差別を容認するかのような規定の変更には同意することができません。今回、都内の全区市の条例について調べましたが、全体の過半数、十四区十二市に男女共同参画条例がありました。
このうち、差別禁止規定がないのは、十数年前に制定されたたった二区だけでした。つまり、圧倒的多数は、当区と同様、してはならないといった差別を認めない禁止の規定を持っています。今回最もおくれて条例検討を始めた当区がわざわざ差別を容認するような条例提案をするのであれば、世間の非難や嘲笑を浴びかねません。
その意見の冒頭では、全ての人々の基本構想に定められているところの地域社会を築いていくというところの文言は、既に日本国憲法の中に定められていて守られていると、差別禁止の法制は既にあるかのようにも述べられました。これは、恐らく憲法十四条の「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」を指すのだと思います。
しかし、同条が拘束するのは公権力であって、市民ではありません。
このことは、昭和四十四年の三菱樹脂事件の最高裁判決でも明らかです。同条の規定は、専ら国または公共団体と個人の関係を規律するもので、私人相互の関係を直接規律することを予定したものではないとの結論が出ています。私人間、市民同士、学校や職場における差別を憲法十四条で禁止はできず、新たな法律や条例が必要なことを区は十分説明した上で条例案の説明に入るべきでありました。この点、改めての説明を求めます。また、この条例では、差別の禁止というところのみが先行し、かえって意図せぬ加害者を生じる可能性がある。結果としては、当事者の方々自身が孤立するとの懸念も示されましたが、これも法律の役割の一部のみを見た指摘だと考えます。
法律には、差別が起きた際、事後的に違法の評価を下す評価規範の役割だけではなく、いいこと、悪いことを社会的に明確にし、共通認識をつくっていく行為規範の役割がございます。差別の禁止は事前に差別を思いとどまらせ、周囲に待ったをかけやすくする効果を生みます。その結果、当事者もまた声を上げやすくなります。当事者が孤立を深めるというのは杞憂であり、骨子案はむしろ仲間や理解者、支援者をふやすのです。
現に、都内三区二市の条例は、性的マイノリティーの差別も含め禁止をしております。孤立が深まったとの話は、これらの区市の友人たちから聞いたことはありません。耳にするのは、安心して暮らせるようになったですとか、自分の町を誇りに思えるなどのよい話ばかりでした。
区には、今回こうした懸念が出た以上、先行自治体で当事者の孤立が深まったなどの苦情が出ていないか確認を求めましたが、その結果についても報告を求めます。また、この差別禁止の規定では、まだ理解が及んでいない区民による悪意のない発言、行動が、この条例でもってこの条例に違反しているじゃないかと非難を受ける可能性が出てくる。たとえ罰則がないといっても、この条例で善良な区民が違法な扱いを受けるとの懸念も示されましたが、骨子案が禁じるのは、不当な差別的取り扱いを行い、かつ他人の権利利益を現に侵害した場合のみとなります。つまり、善良な区民は違反者とはなりません。どのような事例が条例に反したことになるのか説明を求めます。
また、区はこうした懸念に、条例の策定段階でも成立後も区のQアンドAや逐条解説などで誤解のないよう十分説明するべきです。見解を求めます。次に、骨子案二の定義に、文化的違いの定義も入れるべきです。
骨子案の七が禁じる差別には、文化的違いによる不当な差別等も入ってきますが、在日の三世、四世ともなれば、外見も日常様式も日本人と変わらない方が多いでしょう。文化的違いの一言だけで彼らへの差別が抑止できるのか疑問です。見解を求めます。次に、性別等の定義にある男女の別の表現は、他の表現に変更を求めます。
この規定では、身体的性別の判定の難しい性分化疾患の方への配慮がありません。性自認についても、区が昨年実施した当事者対象のアンケート調査に、男女のどちらとも言えないと答えた一七%を無視しており、不適切です。見解を求めます。次に、骨子案七の不当な差別的取り扱いをすることにより、他人の権利利益を侵害してはならないの条文は、他の多くの自治体の条文と同様、よりシンプルに、不当な差別的取り扱いをしてはならないとしてはいかがでしょうか。不当なと枕詞が入る以上、いわれのない差別のみが条例違反であることになります。他人の権利利益を云々のくだりは必須ではありません。区の見解を伺います。
加えて、骨子案七の、してはならないの禁止対象に、DV、セクハラも明記をするべきです。他の自治体条例にもあるように、男女共同参画を語るとき、DV、セクハラは見過ごせない重要要素です。区の姿勢をここでも明確化するべきと考えます。見解を伺います。
さらに、ここで言うDVには、同性間のDVも含まれることを明記するべきです。国内の裁判所でも既に二〇一〇年、同性間の暴力で事実上の婚姻関係を認めた上で、保護命令が出ています。しかし、既存のDV法は、同性カップルを含むか否かはいまだに見解が分かれたままとなっています。現に同性間DVが存在し、命の危険もある以上、明記をするべきです。見解を求めます。次に、骨子案十一の相談及び意見の申し出等は、他の自治体同様、苦情処理とするべきです。
相談や意見の受け付け等なら条例がない現在でも行っていることです。この記述では、区が表明してきた実効性担保の仕組みが全く見えず、条例化のメリットがわからなくなります。国の男女共同参画基本法の十七条は、苦情の処理等を定めます。同条の逐条解説は、同規定を関係者からの苦情の申し出を、当該事項を所掌する機関または他の行政機関において受け付け、争訴手続とは異なる簡易・迅速・柔軟な方法でこれを処理することと解説し、第九条により地方自治体には苦情の処理等も含め、国の施策に準じる責務があると明記をしております。同規定に従い、区も助言、指導などの機能を明記するべきです。見解を伺います。次に、骨子案の八、基本的施策では、性的マイノリティーの理解教育に取り組むことを明記するべきです。
性的指向と性自認を公教育に取り入れることは、都の人権教育プログラムにも既に明記をされています。区教委も人権教育の全体計画に両要素を明記し、取り組んでおります。
区が四月に実施した多様性尊重に向けた区民意識調査でも、性的マイノリティーの子どもたちが差別されないよう、学校での学習機会を充実することを必要と認めた区民は五七%に達しました。理解も十分、支持もされております。避ける理由はありません。
ここではまず、区教委に、都と区の既定の方針について説明を求めます。そして、区には性的マイノリティーの理解教育を加筆することについての見解を求めます。最後に、同性カップルの扱いについてです。現骨子案の規定で性的指向に対する不当な差別はしてはならないという対象となりますが、同性カップルという単位の位置づけはなく、尊重の義務等もありません。現状の規定では同性カップルへの差別がきちんと包含できるのかどうか疑問です。同性カップルに対する差別も認めないとわかる規定とするべきです。見解を求めます。
以上で壇上からの質問を終わります。
◎田中 生活文化部長
私からは、(仮称)多様性を認め合い、人権を尊重し、男女共同参画と多文化共生を推進する条例について、順次御答弁いたします。
初めに、骨子案七、差別の解消等について何点か御質問をいただきました。
まず、憲法と今回の条例との関係についてでございます。憲法には基本的人権の保障が定められていますが、憲法の理念を具体化し、例えば差別の解消等に向けた具体的な規定を定める際、また、地域の実情に合わせた規定などを置く場合には、個別の法律や条例によるものと考えております。
男女共同参画社会及び多文化共生社会を形成し、もって全ての人が多様性を認め合い、人権が尊重される社会の実現に寄与することを目指すためには、性別等の違いまたは文化的違いによる差別の解消等が不可欠であることから、この条項を置いたものでございます。次に、先行自治体で孤立したとの苦情があったかという点にお答えいたします。
先行する十四区十二市の自治体のうち、男女共同参画条例の中で性自認や性的指向について規定している三区二市に聞き取り調査を行いましたところ、御指摘のような事例はございませんでした。次に、具体的にどのような事例が違反になるのか、また、条例制定の過程及び条例制定でも十分に説明していくべきという御質問にあわせてお答えをいたします。
本条例に違反する事例の考え方といたしましては、例えば性的マイノリティーや外国人などに対して正当な理由なく、性的マイノリティーや外国人などであることを理由としてサービスや機会の提供を拒否したり、提供に当たって、場所、時間帯を制限したり、性的マイノリティーや外国人など以外に対しては付さない条件をつけるなどにより、性的マイノリティーや外国人などの権利利益を侵害することとなります。
今後、事例を積み上げるとともに、ともに推進する区民、事業者の方にわかりやすく実効性のあるものとなるよう配慮し、QアンドAの作成など、十分な説明に努めてまいります。次に、骨子案二の定義について、文化的違いの定義も入れるべき、また、男女の別という表現の変更を求めるという点にお答えいたします。
ここで言う文化的違いの定義は、御指摘の在日コリアンの方なども含め、国籍、民族などが異なる方々が持つ文化、具体的には生活習慣や行動様式の違いもあらわすものと考えておりますが、今後、議会や区民の意見を伺いながら検討してまいります。
また、性別等の違いという言葉の定義において、男女共同参画を推進する条例としての位置づけから、男女という表現は必要であると考えておりますが、お話しのように、性別が未分化である疾患の方がおいでになることなども考慮し、性別等の定義については、今後議会や区民の意見を伺いながら検討してまいります。
次に、骨子案七の差別の解消等に、他人の権利利益を侵害してはならないを入れた理由及び禁止対象に同性間を含むDV、セクハラも明記すべきという点にあわせてお答えいたします。
この条項に他人の権利利益を侵害してはならないという表現を入れた理由としましては、不当な差別的取り扱いの結果生まれる他人の権利利益の侵害についても言及することで、より具体的に理解していただきたいとの考え方を示しています。さらに、禁止対象にDV、セクハラを含めるべきという点ですが、ここで言う不当な差別的取り扱いは、同性、異性間を問わず、DVやセクハラなどの行為も含む幅広い概念を想定しております。次に、相談及び意見の申し出等は苦情処理とし、助言、指導などの機能も明示すべきという点にお答えいたします。
ここで言う相談及び意見の申し出等は、区民や事業者が相談や意見を言いやすい体制の整備を規定するものであり、苦情処理を含むものであると考えております。また、相談や意見への対応など細部にわたっての規定については、今後、議会や区民の御意見を伺いながら検討し、骨子案十二の委任に記載のあるとおり、規則で定めてまいります。最後に、基本的施策に性的マイノリティーの理解教育に取り組むことを明記すべき、また、同性カップルに対する差別も禁止とわかる規定にするべきの二点にあわせてお答えいたします。
骨子案八には、男女共同参画と多文化共生に係る基本的施策を合わせて六項目規定しており、この中で性的マイノリティー等、多様な性の理解の促進に係る啓発活動を明記しています。ここで言う理解の促進に係る啓発活動とは、広く区民に対する理解促進のための啓発活動を初め、学校における理解教育なども含んだものと考えております。具体的な取り組みについては、今後、教育委員会にも確認し、協議してまいります。
骨子案七の性別等の違いまたは文化的違いによる差別の解消等の条項における性別等という用語については、定義において性的指向も含むと規定していることから、性的指向が同性に向かう同性カップルに対しても差別をしてはならないことを規定していると考えております。
以上でございます。
◎工藤 教育政策部長
私からは、性的マイノリティーへの理解教育に関する都教委と区教委の既定方針について答弁をさせていただきます。
議員お話しのとおり、東京都人権施策推進指針をもとに、東京都教育委員会では昨年度の人権教育プログラムから性同一性障害者と性的指向を人権課題として明示し、都内の全教職員に配付して、性的マイノリティーの理解の促進と偏見、差別の防止を進めております。
私ども世田谷区教育委員会では、平成二十三年度より性的マイノリティーの人権を扱った授業公開や研修を継続してまいりました。今年度からは、全小中学校の人権教育の全体計画に、性同一性障害者、性的指向の理解と偏見、差別の防止について位置づけております。また、平成二十七年度から東京都人権尊重教育推進校に指定された区立中学校における性的マイノリティーについての研究実践をもとに、区内小中学校でも各学校の実情に応じて取り組みを始めているところです。
今後、世田谷区教育要領の改訂に当たっても、これまでの成果をもとに、性同一性障害者や性的指向について、各教科などの内容に適切に位置づけていきたいと考えております。
以上です。
◆上川あや
御答弁ありがとうございました。
今回の条例の骨子案を拝見しまして、多文化共生を掲げた点、また、性的マイノリティーにも配慮をしている点については、先進的なものだと評価はできるんですが、実効性の担保というところがかなり――私は都内の自治体の条例を全部読みました。おくれています。国の男女共同参画基本法、もう十数年たっておりますけれども、そこには、地方自治体は準拠する義務があるんですね。ところが、それは非常に軽視をされていて、劣った内容に見えるといった問題もございます。
ほかにも幾つもの疑問がありますので、ほかのものについては、決算委員会のほうで伺ってまいりたいと思います。
終わります。