◆上川あや
区の建築確認等について伺います。
区内の違法建築マンションをめぐる複数の報道に接し、区の対応に疑問を持たざるを得なくなりました。そこで以下、関連報道も織り交ぜつつ、区の同事務について問いたいと思います。
まず、当該の違法建築とはどんな物件か、昨年のテレビ朝日の番組放送データからかいつまみ、御紹介します。東京世田谷にある地上八階建てのマンションには四十九戸が入っている。一九九八年に完成したが、二〇一八年以降、施工不良が次々と判明し、耐震性の問題があるとして、二〇二〇年に事業主の東急不動産が建て替えを提案。住民は、仮住まいに一旦転居したが、建築前、作成された図面の真北(シンボク)、真北(マキタ)を示す方角が実際よりも十四度ずれていたと判明。高度、斜線制限等の建築基準法違反状態で、高さ制限など法律に合わせるよう再建築すると、戸数の約半分の二十五戸ほどになるため建て替えを撤回、解体する方針を明らかにした。今回の件について東急不動産は、違法建築状態を早く解決したいと考えているなどとした。
ここで、最初の確認です。真北、いわゆる真北から十四度ずれた違法建築マンションの建築確認申請にオーケーを出したのも、また、その完了検査で適法、安全な建築物だとお墨つきを与えたのも当区ですよね。
◎林 建築審査課長
当該建築物の建築確認申請につきましては、区で受け付けし、確認済証及び検査済証を交付しております。しかし、当該建築物の確認申請書については保存期限が過ぎ、廃棄しているため、区では当時の詳細については不明でございます。
◆上川あや
真北が十四度もずれていて、現在の所管課の職員も気づけないものでしょうか。
◎林 建築審査課長
住宅地図と建築確認申請書で、真北のずれが十四度と大きい場合は審査上分かりますので、このような疑義がある場合は、必要に応じ設計者に対し修正や説明を求め、適法性について判断いたします。
◆上川あや
真北のずれが、なぜ審査において重要かも御説明いただけますか。
◎林 建築審査課長
真北に関わる項目としましては、建築基準法第五十六条第一項第三号、北側斜線制限、建築基準法第五十八条、高度地区による高さ制限及び建築基準法第五十六条の二、日影規制制限がございます。建築物の高さの制限及び日影規制は、いずれも真北を基に規制がつくられており、その結果、建築物の形状や建築できる規模、いわゆるボリュームの上限に影響が生じてまいります。
◆上川あや
ところが、区は十四度のずれを見逃したため、現在二十五戸のマンションしか建たないところ、四十九戸ものマンションが建った。加えて、耐震性も確保されていないのに、区はその構造計算書もオーケーとした。また、竣工後の建物は、耐震スリットの数さえ図面と異なった。ところが、区はその完了検査に対してもオーケーを出し、耐震性のないマンションに住民は安心して住んでいたということですよね。
なぜ区が、その大変重要な真北のずれ、十四度を見落としたのか私がメールで見解を求めると、所管課はその考察を文書で下さいました。その文面を一言一句たがわず、ここでも読んでくださいますか。
◎林 建築審査課長
繰り返しになりますが、当該建築物の個別の詳細については不明でございますが、当時の真北に関する審査につきましては、一、確認申請図書の真北と住宅地図の真北と比較して一致しているか確認する。二、真北を測定した測定者、測定方法、測定データが添付されているか確認する。測量士等の有資格者が専門的な器具を用い現地で行ったことを示したものについて、それを認めない理由はない。三、一で一致していない場合は、真北不一致である旨の指摘をする。四、三の回答を求め、必要であれば訂正を求める。
今申し上げた確認を行った上で真北を測定した者が、この測定が真実であると断言した場合、申請者が確認申請書第一面において、建築申請及び添付図書に記載の事項は事実に相違ありませんと宣言している以上、申請主義の性格上適法であると判断したのではないかと思われます。しかし、前に説明したとおり、当該建築物について、区には確認申請書がないため詳細については不明でございます。
◆上川あや
つまり業者側の主張、書面をうのみにしたという考察です。それで審査、確認と言えるのか、相手に悪意があっても、強弁すれば通すのかと大変疑問なんですが、かの悪名高い姉歯事件をめぐる最高裁判決も、行政の審査責任を限定的に解釈し、その賠償責任を否定した一方で、行政が漫然と不適合を見過ごせば違法になると判示をしています。その判決の要旨も御説明くださいますか。
◎林 建築審査課長
建築物の安全性は一次的には建築士が確保するべきものであり、建築士の設計が建築基準関係規定に適合する設計をされたことを前提に審査するものとし、その上で確認申請の内容が建築基準関係規定に適合せず、書類の記載事項の誤りが明らかであるにもかかわらず、照合すべき資料を照合しないといった職務上、通常払うべき注意を怠り、漫然とその不適合を見過ごした場合には違法となると解するのが相当であるとした上で、本案件への国家賠償法の適用は否定された判例でございます。
◆上川あや
記載事項の誤りが明らかであるにもかかわらず、照合するべき資料を照合しないといった職務上、通常払うべき注意を怠り漫然とその不適合を見過ごせば違法であるならば、先ほどの御考察、真北を測定した者がその測定が真実であると断言したから信じました。また、申請者が確認申請書の第一面において、記載の事項は事実に相違ありませんと宣言したから信じましたとするうのみの連続での是認は大変重大なリスクだと感じます。
例えば区の担当課には、真北を測定する真北測定器もあると聞いています。真北が十四度もずれていたら、たとえ測定者が真実だと強弁しても、区でも測定、点検するべきだと考えるのです。
現に、区の建築指導課のOBに話を伺うと、真北の疑義が晴れない場合は実際に測りに行って修正を求めたと言います。この件について所管課に伺うと、真北測定器もありますとその使い方について御説明の上で、私たちどもでも疑義が晴れない場合には現地を点検する用意があるとはっきりお認めでした。ここでもその証言をくださいますか。
◎林 建築審査課長
委員御案内のやり取りについては、事実でございます。住宅地図に照らし、明らかに疑義がある場合、指摘し、必要と判断される場合は職員による測定を行ってまいります。
◆上川あや
ならば同じ過ちは二度と繰り返さない決意があると考えます。引き続き、建築確認申請のみならず、構造計算でも、中間検査でも、完了検査でも積極的に検査するようお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。