◆上川あや

障害者手帳の交付が受けられず、公的支援は何もない片目の視力を失った方々に、義眼の購入費助成等できないでしょうかとのテーマで伺います。

病気や事故で片目を失明しても、もう一方の視力が〇・七以上あれば、障害者認定はされず、公的支援もありません。片目の失明は国交省所管の自賠責の後遺障害等級でも八級に該当し、後遺障害により将来にわたり生じる収入の減、逸失利益も四五%あるとされ、警察官や消防士、鉄道の運転手にもなれず、運転免許の取得にも一部制限がありますが、障害等級の上では健常者。このため、一切の公的支援から取り残されてきた現状は非常に理不尽です。

片目の失明者には義眼を使用する方々も多くいます。その使用の必要性は当事者へのアンケート調査からも明らかです。
当事者の皆さん方が結成したNPO片目失明者友の会が、その会員二百八名に行ったアンケートによりますと、片目が見えないことで、いじめや差別を受けた体験者は六割以上。その内容のトップは容姿をからかわれたことであり、義眼の有用性、必要性は明白であるとともに大変切実です。
特に、幼児期には義眼の使用により、発達過程で生じる顔の左右差を防ぐことが期待できることからも、義眼の使用は大変重要になります。
しかし、義眼に健康保険が適用されるのは、眼球を全摘出した場合のみ。ところが、実際は失明しても医師の判断で眼球が残されるケースは多く、眼球が一部でも残っていれば、眼球にかぶせるタイプの義眼は美容目的と解され、全額自己負担を強いられます。
また、義眼は一人一人の瞳の色や形、また、その大きさに合わせて作られるオーダーメイドで、作成費用は十五万円前後と高い上、耐用年数は僅かに二年です。加えて、見えない目は委縮をすることからも、繰り返し作る必要が出てきます。このため、特にその経済的御負担が重くなるのは幼児期で、その成長に合わせ、二、三か月ごとに義眼を更新する必要があるため、御家族の負担は甚大です。
そこで、まず伺いますが、片目失明者にとっての義眼の必要性、また、それを更新し続けることで生じる御負担を、区ではどのようにお考えになるでしょうか。

◎宮川 障害施策推進課長

身体障害者手帳を所持する視覚障害者は、義眼について補装具費の支給を受けることができますが、視覚障害の認定基準では、よいほうの目の視力が〇・七以上ある場合は非該当となります。障害者手帳に該当しない場合、健康保険の療養費制度を利用することになります。この制度で、義眼は眼球を摘出した方が対象で、耐用年数二年となっており、眼球が残っている方は自費作成となり、成長により二年未満で義眼を作り直すという子どもには十分対応できない場合があります。
片目失明の方は視野が狭くなるほか、立体や遠近感も取りにくく、日常生活や社会生活で様々な御苦労があり、義眼の作成に当たり障害福祉や健康保険の制度が適用にならない方など、大きな経済的負担もあると認識をしています。

◆上川あや

区ではおととし十月から、がんの治療に伴い脱毛や乳房の切除をされた方々等がウィッグ、胸部補整具を用いてアピアランス、つまり外見の補完をすることを支援するために、そのレンタル・購入費用に助成するアピアランス支援事業を始めており、その援助の上限額は十万円となっています。こうした区の事業と比べても、片目失明者の方々の義眼購入費に補助をすることは十分合理性と必要性があると考え、その制度化を求めるものですが、区の御見解はいかがでしょうか。

◎宮川 障害施策推進課長

世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例では、障害者に当たらなくとも、日常生活や社会生活の様々な場面において支援を必要とする状態にある方を障害者等と定め、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために必要な施策を講ずることを定めています。
義眼は外見上の目的と、まぶたや骨格の維持という二つの目的があることを踏まえ、今後、片目失明の方について、日常生活や社会生活の困り事等のニーズの把握に努めながら、義眼の作成にかかる負担の軽減など必要な支援の検討に着手してまいります。

◆上川あや

ぜひお願いいたします。