区立の世田谷美術館がその館外に確保した収蔵スペースの質に問題はないですか?――との観点から質問します。

現在、環八に面した船橋公文書庫の最上階、6階が、美術館の収蔵スペースになっています。まず、その収蔵内容と数をご説明くださいますか?

今のご答弁からも貴重な美術品がいかに多く収蔵されているかは明らかです。
同建物については2020年3月昨年3月と私から質疑しています。

その際、まず重大なリスクとして指摘したのは、内部で火が出たときの対処です。

いっぱしの美術館なら、まず水を用いず消火できるガス消火設備があるものです。
これは酸素濃度を下げたり、化学的作用で消火するもので、収蔵物を汚損も、水損も、また衝撃による破壊等もしないため区立の郷土資料館、世田谷美術館、世田谷文学館、向井潤吉アトリエ館にもあるものです。通常は自動消火ですから、夜間人がいる必要もありません。
しかし同文書庫にはそれがないため、検討を求めましたが、各フロアの気密性が考慮されていない建物であるため適さないとの理由からその導入は見送られ、リスク含みの管理のままとなっています。
また、同施設には、かの首里城火災で千百点の収蔵物、文化財を見事に守った防火金庫、防火収蔵庫の類も無いことを指摘しましたが、この点での改善はされたでしょうか?

同文書庫、下層にはその名の通り、文書庫もあり可燃物に溢れた建物です。
仮に建物が全焼しても、内部の物は守られる防火金庫、防火収蔵庫に並ぶ性能があるとみて良いのでしょうか?

30分で十分とは全く思えません。

次に、火災報知器と感知器はあるが消火には消化器と消火栓があるだけと非常に手薄で夜間は火を消す人もいない無人と以前、指摘しました。
無人でも自動消火する設備は何もない、まさに人頼みの状況です。

区に伺うと、夜間対応は、まず機械警備で火災等異常を感知した時は、直ちに警備会社の警備員が駆けつけ、消防機関への通報等、必要な対応を図り、区職員も連絡を受け現場に急行できる体制をとっている――とさも迅速そうですが、初期消火に重要なのは最初の2、3分だと言われます。
消防への通報は、警備員がまずかけつけ出火を確認後ではないですか?
また警備員の到着時間の目安等、あるでしょうか?

ご説明の内容では、夜間の初期消火には間に合わないこと確実です。

次に、美術館本館の収蔵庫には、先ほど述べたガス消火設備があるだけでなく初期消火用に文化財対応型の水消火器、アクアシューターの常備があるそうです。
これに対し船橋公文書庫はどうか? 文化財対応型でなければ替えるべきではないですか?

次に害虫、カビ対策です。
今日、博物館や美術館では収蔵品を虫やカビから守る「総合的有害生物管理」、IPMを取り入れるのが普通です。
世田谷美術館本館も、このIPMを取り入れ、専門業者による空気質管理、燻蒸等があるそうですが、船橋公文書庫の気密性では、この対処もできないと指摘しました。
この点、改善等、されたでしょうか?

次に日射や照明によっても美術品は劣化します。
この点、美術館本館も、船橋公文書庫も窓はなく日射がないのはよいことです。
一方、照明の質は異なります。
世田谷美術館ではUVフィルターつきのミュージアム用蛍光管の使用が基本であるのに対し、船橋公文書庫は通常のLEDだと聞いています。こちらも、ミュージアム用がベターではないですか?

最後に区では、現在の船橋公文書庫の6階と併せ、同2階にも「絵画保管庫」を新たに設ける計画と伺っています。

美術品を保管するにはリスク含みの同文書庫に、かけがえのない絵画の保管庫を新たに設ける姿勢には、美術品を正当に扱えない無教養や危うさを感じます。
同館、2階を確保したところで保管の質が低い状況は変らず、新たに収蔵できる期間もせいぜい10年から20年と聞いています。
自信と責任をもって美術品の質を担保できない機能不全の施設を場当たり的に増やすのでなく、きちんと美術品を保持できる施設こそ確保するべきです。

ぜひここは副区長にご賢察を仰ぎたいのですが、お考えはいかがですか?

同建物では(副区長のおっしゃる)最良の環境になりえないから申し上げています。
他の場所への展開を改めて求めまして私の質疑を終わります。