◆上川あや

区立の世田谷美術館がその館外に確保した収蔵スペースの質に問題はないですかとの観点から伺います。
現在、環八に面した船橋公文書庫の最上階、六階が美術館の収蔵スペースになっています。まず、その収蔵内容と数を御説明くださいますか。

◎小澤 文化・国際課長

船橋公文書庫六階の美術品保管庫には絵画が一千百点、彫刻が約三百点、工芸品が約百点の合計約一千五百点の作品を収蔵しております。

◆上川あや

今の御答弁からも、貴重な美術品がいかに多く収蔵されているかは明らかです。
同建物については、二〇二〇年三月昨年三月と、私から質疑をしています。
その際、重大なリスクとして指摘をしたのは、内部で火が出たときの対処です。いっぱしの美術館なら、まず水を用いず消火できるガス消火設備があるものです。
これは酸素濃度を下げたり、化学的作用で消火するもので、収蔵物を汚損も水損も、また衝撃による破壊等もしないため、区立の郷土資料館、世田谷美術館本館、世田谷文学館、向井潤吉アトリエ館にもあるものです。通常は自動消火ですから、夜間など人がいる必要などもありません。しかし、同文書庫にはそれがないため検討を求めましたが、各フロアの気密性がそもそも考慮されていない建物であるため適さないとの理由からその導入は見送られ、リスク含みの管理のままとなっています。
また、同施設には、かの首里城の火災で千百点の収蔵物、文化財を見事に守った防火金庫、防火収蔵庫の類いもないことを指摘しましたが、この点での改善はされたのでしょうか。

◎小澤 文化・国際課長

公文書庫の美術品保管庫の入口は耐火性や断熱性、防犯性に優れた専用の収蔵庫扉を設置しております。また、保管庫内は天井と壁の全面を、防火性能が高く、温湿度を一定に保ち有害物質を発生、侵入させない不燃性の調湿パネルで覆っており、ある程度の防火性を確保した構造となっております。

◆上川あや

同文書庫の下層には、その名のとおり文書庫もあり、可燃物にあふれた建築物です。仮に建物が全焼しても内部のものは守られる、防火金庫、防火収蔵庫に並ぶ性能があると見てよいのでしょうか。

◎小澤 文化・国際課長

美術品保管庫の収蔵庫は、耐火三十分の仕様になっております。

◆上川あや

三十分で十分とは全く思いません。

次に、火災報知器と感知器はあるが、消火には消火器と消火栓があるだけと非常に手薄で、夜間は火を消す人もいない無人であるということを指摘しました。無人でも自動消火する設備は何もない、まさに人頼みの状況です。
区に伺うと、夜間対応はまず、機械警備で火災等異常を感知したときには直ちに警備会社の警備員が駆けつけ、消防機関への通報等必要な対応を図り、区の職員にも連絡し、それを受け急行できる体制を取っていると、さも迅速そうですが、初期消火に重要なのは最初の二、三分だと言われます。
消防への通報は、警備員がまず駆けつけ火元を確認した後ではないでしょうか。また、警備員の到着時間の目安等はあるでしょうか。

◎小澤 文化・国際課長

消防機関への通報は、警備会社の警備員が駆けつけ、現場確認を行い、出火等の状況が確認され次第行います。また、警備員の現場への到着時間の目安は約二十五分以内と説明を受けていますが、実際は直ちに現場に急行し対応する予定です。

◆上川あや

御説明の内容では、夜間の初期消火には間に合わないことが必定ではないでしょうか。
次に、美術館本館の収蔵庫には、先ほど述べたガス消火設備があるだけではなく、初期消火用に文化財対応型の水消火器、アクアシューターの常備があるそうです。これに対し、船橋公文書庫はどうでしょうか。文化財対応型でなければ替えるべきではないでしょうか。

◎小澤 文化・国際課長

現在、公文書庫の美術品保管庫に常備している消火器は一般的な泡消火器であるということを確認しております。水消火器でございますが、純水ベースの薬剤を使用していることから、使用後の汚損が少ないことや、使用時の安全性と精密機器等への影響を極力抑えることができるというメリットがございます。美術館等に推奨される製品であることから、今後導入してまいります。

◆上川あや

次に、害虫、カビ対策です。
今日、博物館や美術館では収蔵品を虫やカビから守る総合的有害生物管理、IPMを取り入れるのが普通です。世田谷美術館本館もこのIPMを取り入れ、専門業者による空気質の管理、薫蒸等があるそうですが、船橋公文書庫の気密性ではこの対処もできないことを指摘しました。この点、改善等はされたでしょうか。

◎小澤 文化・国際課長

船橋公文書庫の美術品保管庫ではIPMは実施していませんが、可能な限りIPMに基づいた庫内環境の維持に努めております。
例えば美術館、文学館の収蔵庫と同様、出入口に粘着シートを設置し、塵芥を持ち込まない工夫や定期的な庫内の清掃を実施し、新たな作品の保管に当たりましては、外部の薫蒸庫で四十八時間の薫蒸を実施した上で保管庫に持ち込むなどとしております。害虫やカビの発生予防に努めてございます。

◆上川あや

次に、日射や照明によっても美術品は劣化をします。この点、美術館本館も、船橋公文書庫も、窓はなく日射がないことはよいことです。
一方、照明の質が異なります。世田谷美術館ではUVフィルターつきのミュージアム用蛍光管の使用が基本であるのに対し、船橋公文書庫は通常のLEDだと聞いています。こちらのミュージアム用がベターではないのでしょうか。

◎小澤 文化・国際課長

美術品は、梱包材で梱包した状態で保管しております。作品が直接照明にさらされることはありませんが、適切な保管環境を確保するという観点から、今後ミュージアム用のLED照明への交換を進めてまいります。

◆上川あや

最後に、区では、現在の船橋公文書庫六階と併せて、同二階にも絵画保管庫を新たに設ける計画だと伺っています。
美術品を保管するにはリスク含みの同文書庫にかけがえのない絵画の保管庫を新たに設ける姿勢には、美術品を正当に扱わない無教養と危うさを感じます。同館二階を確保したところで、保管の質が低い状況は変わらず、新たに収蔵できる期間も十年から二十年と聞いています。ぜひここはしっかりとした体制の確保を図っていただきたく、副区長にお伺いいたしますが、いかがでしょう。

◎岩本 副区長

区では、現在約一万八千点の美術品を収蔵しておりますが、毎年区にゆかりの芸術家、また関係者の方から多くの寄贈の申出をいただきまして、収集委員会でお諮りし、受入れを行っているところです。
美術品は貴重な区民の財産であり、次世代に着実に継承していく必要がございます。新たに二階に設置する保管庫を令和七年度に設計するため、御指摘のあった水消火器、ミュージアム用LEDの設置を進め、必要な水準の設備改修に取り組んでまいります。

◆上川あや

最良の環境にしっかりと取り組んでください。