◆上川あや
ちょうど1年前の総括質疑に続いて、区民共有財産等の管理について伺います。
まず取り上げるのは、国指定重要文化財、野毛大塚古墳の出土品三百十一点や、都指定重要文化財四千二百点余りの大場家資料ほか五万点余りの郷土資料を収蔵する場所が、区立郷土資料館地下の今の収蔵庫のままでよいのかどうかです。
昨年までの質疑で私からは、同収蔵庫が池を埋めた地下空間にあり、周囲は湧水が豊富で、停電等で常設の湧水くみ上げポンプが止まれば数時間で水没のおそれすらあること、また、大量の降雨があったおととし夏には、建物の老朽化のせいもあるのか、今度は同館地下に雨水が浸入し、地下収蔵庫の文化財を急ぎ職員が上階に上げる不測の事態さえ招いたこと等を指摘し、水害リスクのない場所への同収蔵庫の再配置を求めました。すると、当時の知久教育政策・生涯学習部長、現在の教育長は次のようにお答えになりました。
郷土資料館では、湧水槽にたまった地下水の排水ポンプへ、停電時でも最大連続三十一時間電力を供給できる自家発電機の新設工事等を昨年度に実施し、地下収蔵庫の浸水被害リスクの低減を図ったところです。今後、築六十年を迎えますことから、今後、関係部署と連携を図りつつ、リスクを回避し得る収蔵資料の保全にさらなる検討を進めてまいります。ところが、この御答弁から一年、さらなる検討がなされた形跡は全くありません。その証拠に本年一月、所管課にその後の検討状況の報告を文書で求めると、次のような御回答でした。
読み上げます。
郷土資料館については、現在、長寿命化調査の実施中につき、調査結果に基づく改築工事等の中で対応していくと、たった二行です。
改築工事の中で対応していくというのですから、収蔵庫移転など、はなから考えていないことは明らかです。加えて、昨年の質疑と同じ月、区がまとめました公共施設等総合管理計画一部改訂(第二期)も、郷土資料館については次のように書いています。
現施設規模を基に施設を更新する、つまりキャパシティーは増やさない。これでは上部への移転すら不可能ではないでしょうか。
そこで、昨年の御答弁とは裏腹に、収蔵庫の移転を検討しない区教委の姿勢は全く無責任ではないのですかと所管部に問いますと、現在の収蔵庫に、なお水没のリスクがあることを認めて、またその移転も検討しないわけではないとおっしゃいます。
記録に残る形では移転を検討中とは一切認めもしないのに、記録に残らない裏話としては移転を口にされる。こうした対応では信用などできません。
結局、リスク回避への移転に向け御努力いただけるのかどうか、はっきり御答弁いただければと思います。
◎玉野 教育政策・生涯学習部長
郷土資料館は、古文書や木製の民具など約五万点を超える収蔵資料を保管しており、その多くは区民から寄贈や寄託を受けたもので、将来世代に引き継ぐ願いとともに託された貴重な財産であると認識をしております。こうした認識の下、水害等から収蔵品を守るため、様々な設備を更新し、定期的に保守点検するなど、リスクの低減化に努めておりますが、委員が求めていらっしゃるような抜本的な対策の検討も必要であると考えております。
教育委員会といたしましては、区民の思いに寄り添い、収蔵品を確実に将来に残していけるよう、世田谷区公共施設等総合管理計画を踏まえまして、収蔵庫の在り方について、関係所管と連携しながら、庁内での検討を進めてまいります。
◆上川あや
私が求める抜本的な対策は、言うまでもなく、水害リスクのない場への収蔵庫の移転です。しっかり対応してください。
次に伺いますのは、その移転が実現するまでの対処です。
私の指摘を受け、区は三十一時間が限度の非常用発電機の整備をなさいましたが、こちらもしょせん二日ともたない付け焼き刃ではないのでしょうか。
そこで問いますが、停電から三十一時間を過ぎて以降、いよいよ水没のおそれが出てきた際、区教委には五万点に及ぶ貴重な文化財を安全かつ速やかに移転させる避難先の確保、救出する文物の優先順位づけや取扱い手法の検討及びそのマニュアル化、また同想定に基づく人員計画、さらにその実行に必要な装備等を備えたのでしょうか、いかがでしょう。
◎玉野 教育政策・生涯学習部長
令和四年度の大規模改修の際に整備いたしました非常用発電機につきましては、保守点検事業者に依頼し、燃料を補充することで三十一時間以上の運転が可能となり、湧水をくみ上げられるため、収蔵品の一部移転に関する具体的な検討には至っておりません。
しかしながら、大災害時など、保守管理業者による燃料の補充ができない場合も想定されることから、地下の収蔵庫にある収蔵品の浸水被害を防ぐためには、地上階へ一時移転させるための対応マニュアルを準備し、職員間であらかじめ共有しておくことが必要であると考えております。
収蔵品の希少性、材質やサイズなどを考慮して、優先順位、地上階の移転場所や移転ルートを決めておくなど、停電により非常用発電機が稼働する直後から速やかに移転できるよう、職員の安全確保も念頭に置いた対応マニュアルの整備に取り組んでまいります。
◆上川あや
続けて、文化財の保全に真剣に向き合わない課題は、宇奈根の考古資料室にもあると考えています。同資料室は、多摩川氾濫時、最大三メートルもの浸水が想定されるエリアに建つプレハブ建築です。
こちらも水害の回避に向けた移転の検討を求めましたところ、区教委は高さ五十センチにすぎない止水板の整備と併せて、貴重な史料を二階に上げる等の対処を考えるといった御答弁でした。
こちらもその後の検討状況について文書で回答を求めました。すると、長寿命化調査年度が二〇四〇年につき、それに向け収蔵庫の在り方を検討していくと、こちらもたった二行でした。全く意味不明です。
その意味を所管課に問いました。すると、今から十五年後、二〇四〇年に長寿命化の調査を行うので、その結果を待って収蔵庫の在り方を検討したいという説明で、全くもって悠長です。
多摩川氾濫時には、建物ごと押し流されるかもしれないプレハブに、あと十五年、貴重な考古資料を置いてから検討するという姿勢も全く無責任ではないでしょうか。
こちらもしっかりリスクの回避を図るよう、改めて求めますが、いかがでしょうか。
◎玉野 教育政策・生涯学習部長
これまで宇奈根考古資料室では、発掘調査で出土した土器や鉄製品等を洗浄、整理した上で保管してまいりましたが、水害リスクを低減するため、資料室から順次、借り上げ施設等への移転に向けて作業を進めております。
しかしながら、資料室で保管している出土品が非常に多いため、移転先施設内の保管スペースを確保する必要があることや、移転時に出土品が壊れないよう丁寧に作業する必要があることなどから、資料室にある出土品全てを移転させるには、数年単位での期間を要することが見込まれます。
教育委員会といたしましては、出土品は、世田谷区の歴史や当時の暮らしを物語る貴重な文化財であるとの認識の下、適切な保護に向けて早急に、また着実に移転作業に取り組んでまいります。
◆上川あや
郷土の歴史にとって大切で、だからこそ保存に努めていた文化財が、これからもしっかり守り伝えられるということが所管部の使命だと思いますので、現にあるリスクを甘く見ず、しっかりと対処なさるようにお願い申し上げて、私の質疑を終わります。