◆上川あや
最後に、肝腎な区長部局、区教委の足元の対応です。
ここまでるる、搾乳できる場の確保の必要性を訴えてきましたが、では現実に、区政の足元のママさん職員の皆さんは困ってこなかったのか。そんな疑問から、面識のある三人のママさん職員に問い合わせてみると、そろいもそろって搾乳する場に困り、衛生的とは言えない庁舎のトイレに籠もり搾乳してきたと分かり、愕然とするばかりでした。
以下、頂いたメールの一部を御紹介してまいります。
共有いただいた記事の内容と全く同じで、やはりトイレ――しかも古い庁舎のトイレで狭くて汚い――で搾乳を行い、そのまま流していました。どうしたらいいのか分からず、人に聞くことも恥ずかしくてできず、一人になれる場所がほかになく、しようがなくトイレに籠もってきていました。個室で鍵をかけられる場所となると、結局トイレしかないのです。ただ、トイレは狭いし、立ちっ放しですると疲れるし、不衛生だし、冬は寒いです。
結構時間がかかることもあり、混んでいるトイレだったりすると周りの目が気になります。搾乳するときの音も気になります。そもそも仕事中に抜けるので、時間もあまりかけられず、とても焦ります。
痛みを我慢しながら昼休みに駆け込むようにトイレに入り、搾乳機で搾乳していました。おおよそ三時間間隔ぐらいで母乳がたまって痛むので、夕方、時短勤務を終え、またトイレに駆け込み搾乳し、その後、帰路に就く流れでした。
いろんなことに気を遣いながら、焦りながら、息を潜めて、なぜかいつも悪いことをしているような感覚でした。
私の周りには、仕事復帰と同時に、授乳を続けることを諦めて卒乳を選ぶ人もたくさんいました。もし環境が整っていたら、諦めなくて済んだのかもしれません。
職場に搾乳できるスペースがあれば、かなり助かるのではないかと思います。そして、それに伴う職場の理解の促進も急務だと感じています。
これから出産を迎え、子育てをしながら仕事復帰を目指す職員に同じような思いはしてほしくないと思っています。
引用は以上です。皆さん、いかがでしょうか。これが世田谷区役所の現状です。
そこでまず、区長に伺います。区は、子ども・子育て応援都市を宣言した区内最大規模の事業所です。ところが、その足元では、職員が不衛生なトイレにこっそり籠もって搾乳し、その母乳を日々捨てることを余儀なくされてきた。
三期工事の終了後、この本庁舎には三千三百人もの職員と多くの委託事業者が共同して働く想定で、全体工事の終了まであと四年あります。既に三期工事の詳細図面まで描かれているとは承知していますが、国が各事業者に搾乳室整備の旗振りを始めた今、その整備を盛り込まず続行するのであれば、私は反対いたします。職員も安心して庁内で搾乳でき、その母乳を赤ちゃんに安全に届けられる冷凍冷蔵庫を備えた搾乳室の整備を求めますけれども、いかがでしょうか。続けて、総務部長に伺います。職員が安心して庁内で搾乳し、その母乳を冷凍できる環境整備と併せ、職場の理解促進が急務です。国は、労働基準法第六十七条が定める一日二回を限度とする育児時間を搾乳に充てることも可能との見解ですが、各職場にそうした理解は乏しい上、特に男性上司に対し、プライベートかつセンシティブな搾乳を理由に育児時間を請求すること、それ自体に心理的なハードルが高いのに加え、搾乳回数も一日二回で十分とは限らず、また、急に切迫することもある胸の張りや痛みに事前の届出を迫る対応には無理があります。各職場の対応にはよくよく柔軟性を持ってもらわなければ職員の体調悪化すら招くと危惧いたしますが、今後の御対応はいかがでしょうか。
最後に、区教委の学校施設等にも搾乳室を設置し、職場理解の徹底を図る必要があると考えますが、どう対応なさるのか、そのお考えを伺います。
◎保坂 区長
上川議員にお答えします。
出産後の女性職員の搾乳環境について、区の責任者として御質問をいただきました。
本庁舎内におきまして、これまで職員が衛生的で落ち着いて搾乳ができる場所がなく、出産後に職場復帰した職員が母乳を続けながら働くことは、人知れない御苦労があったものと感じます。こうした環境がなかったことで、出産後の女性職員が体調を損ねたり、また、心身の影響を受けていることに、区長として、これまで配慮が十分でなかったということを反省をいたします。
庁舎内に、落ち着いて搾乳し、これを冷蔵できる場所があれば、母乳育児を続けながら働きたいという職員が安心して職場復帰をし、育児と両立しながら、日々の職務にストレスを軽減して取り組めることとなり、女性職員の健康にも寄与するものと考えます。
搾乳室の整備等につきまして、当事者目線に立つとともに、本庁舎整備工事を進めている中で、限りあるスペースの有効活用を図っていくという観点から、先進事例の取組なども参考にして、優先順位をつけながら、関係所管に検討を指示してまいります。以上です。
◎須藤 総務部長
私からは、搾乳に対する職場の理解についての御答弁を申し上げます。
お話にありました、区の職員でも子どもを育てる職員に対しまして、保育のために休憩時間とは別に勤務時間中に与えられる時間として育児時間制度があり、一日二回、九十分を限度として認められるものとなってございます。
職員の服務管理、職務専念義務の観点から、特別休暇である育児時間は事前申請が原則となりますけれども、切迫した体調の変化によって搾乳が必要となるケースなど、制度の運用に当たって御本人の体調も考慮しながら、柔軟な対応が必要となるケースもあるものと考えてございます。承認回数の変更等、今すぐに対応できることは困難な部分もございますが、当事者にとって利用しやすい工夫ができないか、今後検討してまいります。
また、職員が周囲に気兼ねなく育児時間等を利用して搾乳できるようにするためには、職場の理解を深めることも必要であるというふうに認識しておりますので、搾乳が必要な職員への理解が深まるよう、庁内への周知も図ってまいります。私からは以上です。
◎秋山 学校教育部長
私より、教育委員会における搾乳室の設置及び職場理解の徹底の必要性と対応について御答弁いたします。
児童生徒の担任を持ち、保護者や地域との対応をする教職員の働きやすい環境を整えるのは重要であり、教育委員会としても、育児休業の取得や、その際の学校への支援体制の充実など、様々な取組を実施しております。
産後の教員が自分のタイミングで無理なく復帰できるようにとの観点から、教育委員会では、令和五年度に、公立学校共済組合の調査研究事業を活用いたしまして、区立八幡小学校に、搾乳もできるマザーズルームの機能を備えましたリフレッシュスペースとしまして、タールームというものを設置し、運用を行っております。
学校現場では若手の教員も多くなっており、各学校において教員の子育てに関し理解が進んでいるものと認識しておりますが、引き続き、子育て中の教職員の負担軽減に関する職場の理解を進めるとともに、今後、各学校の状況も見定めながら、学校改築に合わせて、休憩室に落ち着いて搾乳できるスペースや必要な機能を確保することを検討するなど、子育て中の教職員がより働きやすい職場環境づくりに努めてまいります。以上でございます。
◆上川あや
再質問はいたしませんけれども、それぞれ前向きに御答弁いただきましたことをしっかり実行につなげていただきたいと思います。
今回、埋もれてきた声、埋もれさせてきた声があるんじゃないかということで、面識のある職員に問い合わせたところ、皆さん快く答えてくださって、なかなかお答えしにくいことを答えてくださったそのお気持ちにちゃんと報いることを私たちはしなければならないと思っています。
区立の保育園では、搾乳後三か月までを目安に、ママさんから凍結母乳をお預かりをして、今子どもたちに飲ませていると。これは「区のおしらせ」にも書いてあるんですね。一昨年、その期限を変更するということで。何か月までお預かりする期限を設けるということもなく、保護者の方と話し合って、母乳育児のサポートをいつやめるかは決めるようで、非常に柔軟なのが保育の部門だなと思って、他方で、ほかのところがあまりにもお粗末だということがとても残念でした。
ぜひこれを機に改めていただくよう改めてお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。