◆上川あや

第二の課題は、区の施設以外にも搾乳できる場を増やしていく区の努力です。

さきに述べたとおり、母乳育児と仕事の両立は、産休・育休明けのママを悩ませる重要課題の一つです。スイスの母乳育児用品メーカー、メデラの日本法人が、出産後一年半未満で職場復帰した女性約五百人にアンケートをしたところ、約五〇%が復職後も母乳育児を続け、うち、職場で搾乳したことのある割合は一五%、搾乳した場所はトイレが最多の五八%で、いかに多くの女性が不衛生かつ落ち着かない場所での搾乳を強いられてきたかは明らかです。これでは清潔な母乳が赤ちゃんに届けられるべくもないでしょう。
アメリカではオバマ政権時代、企業に子どもが一歳になるまでの従業員には搾乳のための時間と場所を提供するよう定めた連邦法が成立をし、西部カリフォルニア州でも五年前、搾乳室の設置義務に反した場合には罰則を科す州法が成立したと報じられています。

こうした中、日本でも昨年三月、遅まきながら厚労省が、職場に「搾乳室」をつくりましょう!というリーフレットを作成し、その啓発をスタートさせました。
区にも、子ども・子育て応援都市として、また、女性の活躍推進と区内事業者への人材定着を図る一助として、搾乳室設置の必要性、有用性を伝える工夫と努力を求めます。
まず、区のユニバーサルデザイン推進条例に基づく施設整備マニュアルや情報のユニバーサルデザインガイドラインには、民間施設を誘導する機能もあるはずです。現状の搾乳のサの字もない無配慮を改め、意識の共有を図るツールとするよう求めますけれども、いかがでしょうか。
また、男女共同参画を所管する生活文化政策部及び経済産業部にも、その持てるツールを生かした啓発努力を求め、御見解を問います。

笠原 都市整備政策部長

私からは、ユニバーサルデザインの施設整備マニュアル等における搾乳に対する意識の共有について御答弁申し上げます。
ユニバーサルデザイン推進条例に基づいた施設整備マニュアルでは、子育て支援環境の整備として、乳幼児を連れた方が安心して外出できるよう、授乳やおむつ替えができる場所、ベビーチェアやベビーベッドを有する便所などを基準に定めております。
一方で、外出時に搾乳をされたい方がおられ、また、搾乳を目的として一人では授乳室を利用しづらい状況を踏まえますと、議員御提案のとおり、搾乳ができる環境の整備について、マニュアルやガイドラインに追記し、気兼ねなく搾乳ができる授乳室などの場所の確保や案内表示を誘導することが大変重要であるものと認識しております。
マニュアル等への見直しに当たりましては、関係所管とも連携を図りながら、内容を検討し、搾乳に対する理解も広められるよう、子育て世帯が安心して外出できるユニバーサルデザインのまちづくりに取り組んでまいります。以上です。

◎渡邉 生活文化政策部長

私からは、女性の活躍推進、また、男女共同参画推進の観点から御答弁申し上げます。
職場等への搾乳室の設置は、出産後も母乳育児を続けたいと考える女性に、働きながら安心して搾乳できる環境を提供することにより、女性の職場復帰と継続的な就労を支援するとともに、女性がキャリアを中断せずに働き続けることが可能となるため、職場における男女共同参画の実現に寄与するものと認識してございます。
第二次男女共同参画プラン後期計画では、基本目標のⅠのあらゆる分野における女性活躍推進の中で、誰もが働きやすい仕組みづくりや環境づくりへの取組を支援しており、女性の活躍推進などに積極的に取り組んでいる事業者を先進事業者として表彰してございます。この先進事業者表彰の募集に当たっては、約六千部の募集チラシを区の関連施設や産業団体、法人会等を通じて事業者に配付しており、この中に女性が働きやすい職場の取組事例として搾乳室の設置を例示し、広く周知啓発に努めてまいります。さらに、事業者向け男女共同参画啓発リーフレットへの掲載や、情報紙「らぷらす」などを通じまして、搾乳室設置の必要性や有効性を広く発信してまいります。以上でございます。

◎五十嵐 経済産業部長

私からは、区内事業者へ搾乳室設置の必要性を伝えることについて御答弁申し上げます。
区では、地域経済の持続可能な発展条例において、誰もが自己の個性及び能力を発揮することができる働きやすい環境整備について定め、地域経済発展ビジョンでは、多様な働き方の実現に向けた取組について記載しています。
搾乳室設置につきましては、産休・育休後も安心して職場復帰できる働きやすい環境整備であり、こうした環境が整っていることは、従業員や職員の定着に資するだけでなく、これから働く方にとっても就職先を選ぶポイントとなり、区として、区内事業者に設置の意義や工夫等を周知していくことが必要になると認識しております。
具体的には、例えば三茶おしごとカフェでの事業者向けセミナーや人材マッチング事業での従業員や職員の定着促進研修、産業団体との意見交換会など、対面による周知のほか、事業者向けのメールマガジンや情報紙の活用など、厚生労働省のリーフレットも活用しながら、様々な機会を捉えて区内事業者への周知啓発に努めてまいります。以上でございます。