はじめに不登校の学齢生徒も学べる、通える夜間中学への展開を求めて伺います。
今回、私が特に重視しているのは、不登校の約3割から4割を占めるとされる、起立性調節障害のある子どもたちへの学びの保障です。
まず、この「起立性調節障害」のある生徒の特徴を、福島県立医科大学が、同県教委の後援を得て全県立高校生徒に配布した健康づくり広報紙「いごころ」の一部抜粋から、以下、ご紹介したいと思います。
「起立性調節障害の人は、午前中に症状が強く現れ、午後になると軽くなり、夜は活発に動けるようになります。
そのため、朝は起きられない、起きてもぼーっとしている、何とか学校に行っても遅刻する、午前中は居眠りしてしまう、それなのに午後は少しずつ活動的になり、帰宅後はすっかり元気で、夜はなかなか寝つけない。」
「家族は、夜遅くまで起きているから朝起きられないと考え、学校では遅刻常習犯、授業中も寝ている怠け者と思われ、友達ともあまり交流できなくなります。やがて授業の内容についていけないなどの理由で、不登校になることも少なくありません。」
引用は以上です。
同障害への理解促進と支援が求められた他会派の質問に、この6月、教育センター長は次のようにご答弁されています。
「令和4年度に実施した不登校支援ガイドライン策定のためのニーズ調査では、不登校児童生徒、約1500名に対し、不登校に至った要因について尋ねました。その中で約500名が体の不調を不登校の要因に挙げており、中には起立性調節障害を罹患しているケースもあると認識しています。
この病気は日本小児心身医学会の発表では、軽症例を含めると小学生の約5%、中学生の約10%が罹患しているとされています」と、まず基本認識を示され、「学校と協力して保護者の理解を広げる方法を検討してまいります」との言葉で締められた。
学校から保護者へと理解を広げるのは良いことです。
しかし、その病気ゆえに、朝起きることや日中活動に難のある子どもたちに、区教委は朝から学ぶ義務教育しか提供していない。
そこで本来、求められる合理的配慮を私は今回の質問で掘り下げたいのです。
先のご答弁で区教委は「日本小児心身医学会の発表では軽症例を含めると、中学生の約10%が罹患している」とされた。
これを5月1日現在の全区立中学の生徒数に当てはめれば1200人弱もの生徒が罹患者です。また同学会は不登校の約3-4割に同障害が併存するとし、重症例を全体の1%としています。
これを令和4年度の全区立中学の不登校数、815人に当てはめると、245~325人が不登校生の罹患者で、区立中学生の1%なら、約120人もの生徒が重症者です。
ところが区教委は朝から学ぶ学校しか提供しないのです。
かつて夜間中学は、学齢期を過ぎた16歳以上を受け入れ対象としましたが、文科省は、令和元年10月、「不登校児童生徒への支援の在り方について」と題した通知でこれを改め、今では不登校・学齢生徒の受け入れも可能としています。
さらに、文科省が公開している「夜間中学-設置-応援資料」「夜中を全国に!」では、
学齢生徒の夜間中学での受入れについて具体的に次の2つの方法を示しています。
1つは日中の在籍校に籍を残したまま夜間中学で受入れ、出席扱いとする方法、
2つめは夜間中学を文科省の不登校特例校とし、入学、転入そのものを認める方法です。
加えて、文科省が昨年1月に出した「夜間中学の設置・充実に向けて 【手引】」の第3次改訂版では――
教育機会確保法 第14条(地方公共団体における就学の機会の提供等)から求められる自治体対応について、次のように書いています。
「既に夜間中学を設置している地方公共団体においても、個々の生徒のニーズを踏まえ、生徒の年齢、経験等の実情に応じた教育課程・指導上の工夫を図るとともに、不登校となっている学齢生徒の受入れなど、実質的に十分な教育を受けられていない多様な生徒の受入れについても検討することが求められます。」 引用は以上です。
ところが区教委は、ここで求められた夜間中学への受入れ検討を未だせず、ただ保護者に理解を広めるというだけ。学べる場の保障がないのです。
以上を踏まえ、5点、伺います。
第一に、現状の朝から学ぶ区立中学だけでは、重度の起立性調節障害のある生徒に学びを保障できないのではないですか? 区教委の見解を問います。
第二に、区が開設予定の不登校特例校も、登校時間を朝9時に、授業の開始を朝9時35分からとしてしますが、不登校に多い起立性障害の生徒には依然、合理的配慮のないきつい学習環境の設定ではないのか? 後ろ倒しにはできないか、併せて伺います。
第三に不登校の学齢生徒、保護者が秘める夜間中学へのニーズです。
すでに区教委には鳥取県教委、愛知県教委が行った不登校の学齢生徒、その保護者を含めた夜間中学への通学ニーズ調査の結果をご紹介しております。
学齢期を含めた区分では、ともに約2割の生徒が夜間中学への通学を希望しています。この2割を、本区の不登校中学生数に掛け合わせれば、約160人となります。
また鳥取県教委が県内3か所の「教育支援センター」――当区の「ほっとスクール」にあたる機関の利用者に調査した結果でも夜間中学に通ってみたいとした生徒の回答は何と32%。3人に1人。通わせてみたいとした保護者も57%、3人に2人という高率でした。
これら先行調査の結果からは、その潜在需要は決して小さくないと考えますが、区教委の評価はいかがですか?
第4に、本区の夜間中学の門戸を学齢期の生徒にも開くことです。
まず、先に挙げた2つの受入れ方法の一方、夜間中学を文科省の不登校特例校とし、学齢生徒の入学、転入を認める手法は、すでに香川県三豊市立と福岡県大牟田市立の夜間中学で実現し、現に学齢生徒が通い始めています。また来年度新設される三重県立夜間中学もこれに続く見通しです。
残るもう一方の受入れ手法、日中の在籍校に籍を残しつつ、夜間中学で受け入れ、出席を認める手法も、千葉県松戸市教委が今年度、既設の夜間中学に取り入れる意向を表明し、来年度開設予定の三重県立夜間中学と、名古屋市立の夜間中学でも導入予定です。
本区も今あげた2つの手法のいずれか、あるいは両方を取り入れ、不登校の学齢期生徒に夕方から学ぶ選択肢を用意できたらと願いますが、区教委の見解はいかがでしょう。
この質問の最後に、夜間中学という手法に限らず本区が掲げる「一人の子どもも置き去りにしない」見地から起立性調節障害のある児童、生徒への学びの保障をいかにお考えになるか、教育長のお考えを伺えればと思います。