◆上川あや
私からは、区の指定管理者制度運用に係るガイドラインについて伺います。
おととし十一月の四定で、区立施設の管理、運営に当たる指定管理者の職員についても、性の多様性に応じた処遇の平等やハラスメントの禁止を徹底させるよう区に求めました。区の多様性尊重条例は、第七条で性自認、性的指向、同性カップルへの差別を禁止し、第六条では事業者の責務を定めています。同責務で定められる内容を区のホームページは、次のように書いています。
事業者の皆さんには、働くすべての人がそのライフスタイルに応じて多様な生き方を選択できるよう、募集、採用及び昇進など、あらゆる場面で、性別や性自認、性的指向、国籍、民族の違いによる不当な取扱いがないよう配慮し、事実上生じている不当な取扱いについても積極的に改善するようお願いします。引用は以上です。ところが、一昨年11月の私の議会質問をきっかけに、区が初めて指定管理者のLGBTQ対応を調べてみると、区の外郭団体を除く三十一の事業者のうち、職員の人事、給与、福利厚生の一部にでも同性パートナーを含む事業者は三つだけ。性的指向や性自認へのハラスメント禁止規定を整備した事業者もたった五つでした。つまり、区の選定事業者のほとんどは区条例のいう責務を忠実に守ってなどおりません。
その是正を求める私の二度の質問を受けて、区は本年三月、指定管理者制度運用に係るガイドラインを改定し、「世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」に基づく指定管理者への依頼についてと題する留意事項を加えました。その意図を区のホームページは次のように書いています。本条例に基づき、指定管理者に対して、同性パートナーを含めた職員の処遇の平等や性的指向に係るハラスメントの禁止等の遵守を求めることを記載しました。以上の説明に誤りはないでしょうか。
◎有馬 政策経営部長
委員御説明のとおりで、誤りはございません。
◆上川あや
今回の改定で、今後は区の指定管理者が管理する区立施設においても、職員処遇の平等やソジハラスメントの禁止規定の整備が定着するのではと、一見、期待を抱かせる変更なのですが、実態としてはそのような効力はほとんどないでしょう。
それが証拠に、同ガイドラインの改定後、指定管理者の選定作業が始まった梅丘図書館、ひだまり友遊会館及び区立保健医療福祉総合プラザの指定管理者の選定でも、実際に区が選んだばかりの各事業者に、同性パートナーに対する人事、給与、福利厚生制度の平等はありません。また、性的指向、性自認へのハラスメント禁止規定の整備もないと理解をしています。以上の指摘に誤りはないでしょうか。
◎有馬 政策経営部長
御指摘の三者の法人の中には、規定によらずとも、実態として同性パートナーシップ宣誓制度など公的に発行された書類を元に処遇に対する相談、申出に対応していたり、コンプライアンスマニュアルやハラスメント防止に係る職員への周知文書において多様な性について言及し、環境整備に努めている法人などもあり、三者それぞれの理念に基づき働きやすい職場づくりに取り組んでおります。
しかしながら、現段階においては、御指摘の三者ともに、同性パートナーやその親族を対象とした人事、給与、福利厚生制度及び性的指向、ジェンダーアイデンティティーへのハラスメント禁止を明確に規定としては整備していないことを所管課を通じて確認しております。
◆上川あや
つまり、規定を整備してまで同性カップルの職員に処遇の平等を保障する必要はないし、各種ハラスメント禁止規定の整備は必要でも、LGBTQへのハラスメント禁止は書くまでもなく、許容されると。何らルールに基づかないアンオフィシャルな対応でも、時の担当者の出たとこ勝負でいいではないか、そういう御説明でしょうか。
◎有馬 政策経営部長
性の多様性にかかわらず、区の施設で働く職員の処遇の平等を担保し、不当なハラスメントから職員を守る見地からは、明文化のない対応は、安定性、一貫性、公平性を確保する観点において望ましい状況にあるとは考えておりません。
◆上川あや
当然のお答えです。今のお答えからも、今回の改定がいかに実効性のない、小手先だけの対処であるかが分かろうというものだと思います。
今回の改定で何が問題かといえば、区は、さきに挙げた職員処遇の平等とハラスメントの禁止を留意事項として事業者に求める一方で、全くその実態について評価も、点検もしないのです。
つまり、事業者にお願いだけはしましたよと下駄を預けておいて、自らはその結果について点検はしない、何ら責任は負わない、こんないい加減な対処があるんでしょうか、この対処のどこに実効性があるのでしょうか、お答えください。
◎有馬 政策経営部長
条例に規定する事業者の責務は、訓示的、抽象的な表現による努力規定としており、明確に規定の整備までを求めているわけではないため、現段階においては、事業者に向け、趣旨を御理解いただき、適切な対応をお願いするものであり、実効性という意味では限定的であると考えております。
◆上川あや
おっしゃるように、その効果は極めて限定的。区条例に定める事業者の責務への対応とはなっていないと見るべきです。
そこで、以下、具体的な改善策の実行を三点求めたいと思います。
第一に、指定管理者の選定基準があります。ここに障害者対応同様に、LGBTQ対応を入れて、きちんと対応する事業者とそうでない事業者との間に点差をつけること。
第二に、区が指定管理者に毎年提出を求めている自己評価シートにも、障害者対応同様、同項目を入れ、必要な体制整備への自覚を促し、改善への努力を求めること。
第三に、区の所管課が毎年作成する区の評価シートにも同項目を入れ、点検し、改善を促すとともに、モニタリングを継続的に図り条例遵守を目指すこと。以上の三点の提案について区の御見解はいかがでしょうか。
◎有馬 政策経営部長
委員御指摘の指定管理者の選定基準、自己評価シート、区の評価シートそれぞれにLGBTQ対応の要素を入れること、モニタリングによる評価、点検を継続することは、条例に定める事業者の責務を明確にし、さらに実効性を高めるために有効な方策でございます。
一方、選定基準への反映は、次期選定の加点、減点の要素にもなることから、区の契約全般における考え方や国の動向なども踏まえ、規定の有無のみに限らず、具体の取組例などの評価方法や適切な周知期間の設定など慎重な検討が必要でございます。
また、事業者に具体的な行動を求めるためには、LGBTQの基礎知識や職場環境整備の必要性の周知啓発及び手順、体制づくりなどの支援もセットで示していくことも重要でございます。
引き続き、誰もが働きやすい職場環境づくりを推進するため、委員お話しの評価手法などについて関係所管と検討を進めてまいります。
◆上川あや
慎重に検討とおっしゃいますが、何年検討を続けているんでしょうか。実効性を伴わない、おためごかしの留意事項をぜひ実効性を伴う対応へと早期に改めてください。
また、本日取り上げた課題は政経部だけが答弁すれば済む問題ではなくて、この制度を利用している各所管部の方々がきちんと留意をして、その対応を迫ってもらう、配慮してもらう、そういったことが必ず必要だということの御自覚を各所管に求めまして、私の質疑を終わらせていただきます。