◆上川あや

初めに、外国籍の子どもが義務教育の対象者でないのをいいことに、区教委の就学状況の調査はなおざりで、不就学の児童が見過ごされているリスクについて伺います。
区は、二〇一五年三月、子ども・子育て応援都市を宣言しています。また、二〇一八年四月には、全国初となる国籍・民族差別を禁止する区条例を施行しています。加えて、本年四月より、区は二十三区で初となる区立の児童相談所を開設し、あらゆる場面で子どもの権利が保障され、最善の利益が優先されるまちづくりを目指すとしています。あわせて、区教委も渡部教育長自身、一人の子どもも置き去りにしない教育の実現こそモットーだとうたっています。

ところが、こうした美辞麗句とは裏腹の事態が、長年、区教委と区により放置をされています。外国籍の子どもが義務教育対象者でないのをいいことに、区教委の就学状況の把握はなおざりそのもので、私からを含め、議会で繰り返し出されていた改善要求に対しても、基本、就学案内に返信のない世帯にアンケートを送るだけ。その返信がなくても放置したままで、都内各区市で実施をされてきた電話調査も、訪問調査もないとしています。
このため、依然、今年度も三桁に上る外国籍の子どもは、就学の有無すら分からないままに放置をされ続けています。これで子どもの最善の利益を保障すると区役所が、一人の子どもも置き去りにしないと区教委が言い続けられる神経が不思議です。

国は、七月一日、都教委と都を介し、外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針を本区、区教委にも通知をしています。これは、昨年成立した日本語教育推進法に基づき、各教育委員会、地方自治体が講ずべき事項を国が列挙したもので、まず基本として、外国籍の子も日本人と同じ学籍簿に基づき一体的に就学状況を管理、把握することを求めています。
その上で、就学案内に当たっては、外国人が日常生活で使用する言語を用いるよう配慮すること、就学案内に対して回答が得られない子どもについては、個別に保護者に連絡を取ること等、具体の対処を求めていますが、後段の二つについて区教委の対応はなおざりで、改善の余地が大きく残されています。
本区が就学案内で用いている外国語は、英語、中国語、ハングルにフィリピンのタガログ語の四つだけ。文科省がサンプルを示す七か語にも足りず、区内では、フィリピン籍より在住者の多いベトナム人のベトナム語、在留外国人第九位のインドは、大卒でも英語を流暢に話せる割合は三割とされますが、その公用語であるヒンディー語、同じく近年在住者が急増している人口第十位のネパールのネパール語にも対応がないままです。
 
そこでまず、就学状況未把握の子どもの国籍分布について説明を求めます。
あわせて、区の多文化共生条例は、その基本的施策で情報の多言語化等によるコミュニケーション支援を明記しています。ならば、同状況に見合った多言語化の努力は当然の責務であるはずです。実践を求めますが、いかがか、区教委の見解を問います。
また、前出の国通知が求めた就学案内に対し、回答が得られない子どもについての個別の保護者への連絡も、私が一昨年、議会事務局の協力を得て行った都内二十三区二十六市の調査では、日野市、国立市、清瀬市、武蔵村山市の四市で、連絡のつかない方、言葉の通じない方等への訪問調査が実施をされ、それぞれ不就学ゼロがしっかり確認されておりました。
一人の子どもも置き去りにしないが区教委のモットーならば、同様の徹底した調査をし、不就学ゼロを確認するべきではないですか。区教委の見解を問います。
この質問の最後に、区教委は既に、昨年九月の決算特別委員会の他会派の質疑に対し、全ての外国籍のお子さんの就学状況の確認を行う方向で、それぞれ関係所管と調整してまいりますとお答えになっていたはずです。ところが、今年度になっても答弁の履行はないままです。区教委は、議会での公式答弁を一体どのように捉えているのでしょうか。
本日の御答弁も単なる口約束に終わることを危惧するものですが、議会での約束をそもそも守るおつもりがあるのかどうか、区教委の基本姿勢を問います。

◎淺野 教育総務部長

私からは、外国籍の子どもに対する就学調査につきまして、三点御答弁申し上げます。

まず、就学状況を未把握の子どもたちの国籍分布と情報の多言語化についてです。
現在、就学先が把握できていない外国籍のお子さんの国籍の割合は、韓国、中国のお子さんが全体の約四割を占めており、次にアメリカやインド、イギリスが多い状況となっております。御指摘のその他のアジア諸国の国籍を持つお子さんも見られます。
昨年度、就学先を把握していない外国籍のお子さんを対象としたアンケートを実施するに当たり、外国籍のお子さんの人数が多い国籍を確認し、既に翻訳を添付している言語や英語圏の国を除くと、次にフィリピン国籍のお子さんが多かったため、新たにタガログ語の翻訳を追加することといたしました。
今後とも、さらに多言語化を推進し、外国籍の御家庭が安心して就学を検討できますよう努めてまいります。

次に、就学案内に対し回答が得られていない子どもについての個別の保護者への訪問調査等についてです。
区ではこれまでも、多言語による全家庭への就学案内の周知、就学先を確認するアンケート調査、出入国状況の確認、福祉所管との連携による訪問等、外国人の就学先の把握に取り組み、安否確認ができましたが、依然として就学先が不明なお子さんもいる状況です。
区といたしましては、外国籍のお子さんも含めて不就学のお子さんがゼロになることを目指し、文部科学省が昨年七月に示した外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針を参考にしまして、就学先の確認に対し回答がない全ての家庭への電話連絡や訪問等、有効な確認の手法を関係所管と連携して検討、実施してまいります。このことにより、全ての子どもの学びの権利が保障されるよう努めてまいります。

最後に、就学調査の徹底についてです。
区では、昨年九月の議会での質疑を踏まえまして、翌月より就学先を教育委員会で把握していない外国籍のお子さんがいる全ての世帯を対象に、四か国語の翻訳をつけて就学先アンケートを実施しました。今年度も未回答者へ再度送付しております。あわせて、厚生労働省の乳幼児健診未受診者、未就園児、不就学児等の状況確認調査においては、福祉所管と連携し、就学先を把握できていない外国籍のお子さんの世帯への訪問調査の際に就学先の確認をするなど、就学先の把握に努めてまいりました。
先ほども申し上げましたが、電話連絡や訪問等あらゆる有効な方法を検討、実施し、不就学ゼロに向けて着実に取り組んでまいります。以上です。

◆上川あや

それぞれ前向きな御答弁はいただいたんですが、御答弁の後、しっかり実施していただくかどうかが大変重要だと思うんです。

渡部教育長に二点伺いたいと思います。
まず、就学案内に用いる言語をさらに多言語化する方向での御答弁をいただきましたが、以前もこの同様趣旨での質問をしております。その際、区教委がしたことは、タガログ語たった一言語を増やしただけだったんです。小出しに改善するのではなくて、必要性に照らして、しっかりこれは改善をするべきだと思っています。小出しにすることを危惧いたしますけれども、果たして、きめ細かな対応をするのかどうか伺います。

あともう一点。もう一つは区教委の議会答弁、いわば区民に対する約束に対する基本姿勢です。今回の御答弁も、前回同様、ほごにされるのではないかと私は危惧いたします。本日の御答弁は守っていただけるのかどうか、いま一度の御答弁を求めます。

◎渡部 教育長

再質問にお答えします。

一点目の多言語化につきましては、区における外国人の国籍の分布、さらには把握できていない子どもたちの国籍等を基にして必要な言語を把握し、早急に整備を進めることとし、子どもたちが迷うことなく学びが得られるよう取り組んでまいります。

二点目の子どもの就学先についてです。
所管部長より答弁をさせたことについては、今後間違いなく取り組んでまいりますが、今回のことにつき、議会より御指摘をいただきながらできていなかった就学先の確認につきましては、把握できていなかった子どもたちに誠に申し訳ないことと思います。このようなことがないよう、教育長として責任を持って組織運営を行ってまいります。以上でございます。

◆上川あや

有言実行を期待し、その結果を見守ってまいります。