★貴重な郷土資料を守る改修工事が進んでいます。
郷土資料館の収蔵庫は池を埋めた跡にある地下構造。
周囲の地下水位が高く、停電で既設のポンプがとまれば数時間で水没のリスクも――上川の指摘を受け、非常用電源の新設を含めた改修工事が実施されました。
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◆上川あや
私からは、貴重な文物を保管する区の施設の水害対策について伺いたいと思います。
まず、文化財を保管する区教委の施設についてです。
昨年十月の台風十九号の襲来では、各地の博物館、美術館も被害を受けました。中でもお隣、川崎市の市民ミュージアムの被害は甚大で、広く報道もされました。
同ミュージアムの収蔵品には、考古学や民族学の各資料、絵画や漫画、写真、映画など約二十六万点があり、このうち、館外貸し出し中、あるいは展示中だった三万一千点を除く収蔵庫内の全てが浸水し、ほかの美術館などから借り受け中だった百四点もまた浸水をしたと報じられております。
同ミュージアムは、そもそも浸水想定区域の中にあり、出水時は五メートルから十メートルもの浸水が想定されていましたが、その収蔵庫は地下室としてつくられ、止水板や防水シャッター、排水ポンプの備えもなかったことが批判もされました。しかし、こうしたリスクは区立の郷土資料館にもあるのではないでしょうか。今回調べますと、予想外でしたが、区立の郷土資料館も内水氾濫の浸水想定区域の中にあり、貴重な文化財等をおさめる収蔵庫の階層も、本館の地下一階と新館の地下二階となっています。それでいて出水時の避難計画もなければ、止水板や防水シャッターの備えもないと確認をしております。平素より対策をとっていく必要があるのではないでしょうか。
◎田村 生涯学習・地域学校連携課
委員御指摘のとおり、郷土資料館を初めとした社会教育施設に関しましては、浸水地域に含まれているものもございます。昨年の台風での川崎市市民ミュージアム等の被災を鑑みても、文化財資料保存に向けた備えについては、同じような立地に建つ全国の博物館、美術館等では共通の課題となっております。
とりわけ郷土資料館には、地下の収蔵庫に収蔵資料が約五万点以上あり、野毛大塚古墳の出土品や大場家由来の資料など大変貴重な収蔵品も約千二百点以上保存しております。
現状では、抜本的な浸水対策を講じることは困難なため、大場代官屋敷保存会の皆様と相談しながら、重要資料を優先して二階へ移動させるなどの方策を検討するとともに、令和四年度に予定している大規模改修の中で、止水板の設置などによる対策もあわせて検討してまいります。
◆上川あや
郷土資料館に関しては、特段雨が降らなくても、その収蔵庫が水没するリスクがあると承知をしています。
現在の郷土資料館の建つ場所には、それ以前、大場家の池の庭があり、同資料館はその池を潰す形で建てられたと伺っております。そのためか、現在でも郷土資料館の地下からは豊富な湧水が湧き、平素はそれをくみ上げて、代官屋敷を守る消火設備、ドレンチャーの水源とするとともに、今の大場家に残る池にもその水を注水し、それでもなお残る水は下水に流していると承知をしております。
つまり、常時、湧水をくみ上げることによって初めて郷土資料館の収蔵庫等、地下の施設は守られ、その機能を維持しているわけですが、震災等で電源がとまることを想定した非常用電源の備えはないままで、仮に停電が続きますと、ものの数時間で湧水を受けとめている水槽もあふれると承知をしております。現状の対応では、その災害対策に改善するべきすきがあるように思うのですけれども、いかがでしょうか。
◎田村 生涯学習・地域学校連携課
資料館がある代官屋敷敷地内は、かつて東京農大が湧水量の調査を継続して実施した時期があり、日量最少六十立方メートルから最大百六十立方メートルの湧水があるとのことでございます。
震災時に停電があれば湧水ポンプがとまり、ふだん湧水槽からポンプアップして下水道に流している湧水が数時間後には湧水槽からあふれる懸念があり、収蔵庫等が浸水するおそれがございます。このため、震災時に停電発生があっても、湧水ポンプを発動させる電源確保に向け、令和四年度に予定している大規模改修時に七十二時間稼働可能な災害時非常用発電設備の導入を設置する方向で検討を進めております。
◆上川あや
区内の浸水想定区域には、郷土資料館のほかにも貴重な考古資料を保管している宇奈根の考古資料室とその分室、また民具や文具を多数保管している岡本と次太夫堀の各民家園がありますが、こちらについても浸水対策は全くないままだと承知をしております。この点はいかがでしょうか。
◎田村 生涯学習・地域学校連携課
次太夫堀公園民家園や岡本公園民家園、宇奈根考古資料室におきましても、いずれも浸水区域に含まれております。
次太夫堀公園民家園や岡本公園民家園では多数の民具や文書類を、宇奈根考古資料室では多数の出土品や資料などを保存しております。
現状では抜本的な浸水対策を講じることは困難なため、重要な文化財等の浸水区域外の借り上げ倉庫への移転や、高さのある場所へ移動させるなどの方策を検討するとともに、敷地にある建物を有効活用しながら、重要な資料等についての保管を図り、止水板の設置などによる対策もあわせて検討してまいります。
◆上川あや
最後に、区立図書館についてです。
区立の図書館、図書室につきましても調べました。また、浸水想定区域にあるものが少なくないと感じました。調べますと、実に二十一の施設中十三の施設が浸水想定区域の中にあり、中でも、このうち八館は地下に収蔵施設があるとわかりました。
昨年秋の台風十九号の襲来では、毎日新聞が文部科学省に取材した結果として、少なくとも十三都県の八十六公共図書館と十四の大学図書館で被害が出たと報じられております。
この中でも、区内玉堤にある東京都市大学の図書館の被害は甚大で、地下収蔵庫が高さ五メートルの天井部分まで冠水し、およそ九万冊が被災したといいます。ところが、同じく浸水想定区域の中に立地をし、しかも地下に収蔵施設を持つ本区の図書館八館も水害への備えは一切ないと確認をいたしました。
止水板等の浸水を防ぐ設備導入もなければ、出水時、資料を避難する計画もないと確認をしております。このまま無策でよいとは思えないのですけれども、いかがでしょうか。
◎松田 中央図書館長
東京都の浸水予想区域図で確認いたしますと、浸水予想区域にかかっている区立図書館のうち、地階に資料を置いてある館が八館あります。この中には、資料の一部を地下倉庫に保管している館もありますが、図書館自体が地下に設置している施設もあり、貴重な資料を長く引き継いでいくためにも対応を考える必要があると認識しております。
来年度から改築工事を行う予定となっている梅丘図書館は、この浸水想定区域にかかっておりますが、改築の実施設計の中で、出入り口に取りつけができる防水板の設置などを予定しております。
建物の構造や貴重資料の数量など各館ごとの状況の違いなども考慮しながら、出水時の対策等について施設所管など関係部署と調整してまいります。
◆上川あや
平素より抜かりのないようにしっかり対策をとっていただくようにお願いいたしまして、私の質疑を終わります。