具体的な成果

★リスクを高める盛土への雨水浸透はやめさせました。

 

盛土の安全対策のカギは地盤の水抜きなのに、区は盛土宅地にも「雨水浸透ます」の設置助成をしていました。
上川が方針転換を求め、区も同意。盛土宅地では「浸透抑制」に舵を切りました。

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具体的な成果

★リスクある「盛土宅地」の隠蔽ぺいが改善されました。

 

谷埋め型の盛土宅地は地震時の地滑りのリスクが高いのに、都は戦前に造成された盛土を非公表としリスクを小さく見せています。
その公表を都に強く求めるよう上川が迫ると、区も都に開示要請。都による区内盛土宅地の公表箇所が何と3倍に増えました。

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◆上川あや

初めに、本来あった谷を埋め造成された住宅地、谷埋め盛り土宅地の防災対策について伺います。

平成二十年六月の一般質問で初めてこの問題を取り上げました。当時より区は積極的な減災対策に取り組み、住宅の耐震化率向上をその眼目の一つとしてきましたが、その施策は上物の耐震化ばかりに目が行き、地盤そのものの脆弱性を見落としていたのではなかったかと指摘をいたしました。阪神・淡路大震災では、大阪~神戸間の斜面地に発生した地盤変動、約二百カ所のうち実に半数以上が谷を埋め造成された谷埋め盛り土宅地の地すべりでした。中越地震でも、その被災の本質は地盤災害であったとされ、専門家が危険と判定した宅地は一千カ所を超えました。質問では、こうした地盤災害のリスクは当区も例外ではないことを指摘するものでした。

区内の宅地の多くは、一見平坦に見えますが、これは尾根を削り谷を埋めて平坦化した結果であって、土地本来の地盤でないことも多いことに留意が必要です。大規模な集水構造である谷は今でも宅地の地下に存在し、内部の水位が高まれば地すべりが懸念される宅地も少なくはないのです。これが今回取り上げる課題、谷埋め盛り土宅地の問題です。

区の当初の答弁は、谷埋め盛り土のリスクは承知だとした上で、今後、都区連携のもと、当該宅地のスクリーニング事業を進め、都の防災区域の指定を待って、最終的には国の補助事業である滑動崩落防止事業も活用するとのお話でしたが、事実は全くそのようには進まず、地盤災害のリスクは軽視をされたままとなっています。

一番の問題は、都が二〇一四年に公表した大規模盛り土造成地のマップから戦前の造成地が抜け落ちていることです。今月四日の毎日新聞朝刊一面に、東京区部に隠れ盛り土三十五カ所、分布図未掲載との見出し記事が、同三面にも六段ぶち抜きで、戦前の盛り土、地すべりリスク、新住民聞いていないとの関連記事が、既に路面にひび割れを起こしている尾山台二丁目の写真とともに掲載されました。

同記事は、都が二〇一四年に公表した大規模盛り土造成地の分布マップが、米軍が昭和二十年代ごろ撮影した航空写真からつくられたもので、都はそれ以前に造成された大規模盛り土、区部三十五カ所の存在を確認していながらもその掲載を見送り、うち最多の十カ所が世田谷区内にありながら、都は現地調査すら行っていないことを報じるものでした。都は未掲載の理由を、戦前の地形図は等高線の判読が困難で厚みが確認できなったようだとし、今年度中に専門家の意見を聞いて公表するかどうか検討するとしましたが、このままでよいとは思えません。
 
そこで四点伺います。

第一に、都に未掲載分の大規模盛り土、区内十カ所の開示と現地調査を求めるべきだと思います。古い谷埋め盛り土ほど地下水位が上がり地盤災害が起きやすいとの専門家の指摘がある中での掲載見送りは、事前に減災対策をとり得る当該宅地の住民に対し誤った安全認識すら与え、より問題が大きいと考えますが、いかがでしょうか。

第二に、都のマップ公表から四年、区も安穏と都の公表マップをうのみにしている現状は大問題だと思います。区が私より散々土砂災害対策の無策を批判され、ようやくまとめた世田谷区がけ・擁壁等防災対策方針ですが、谷埋め盛り土のリスクについては都の調査結果に触れ、区内には谷埋め型大規模盛り土造成地が五カ所ありますが、地震等によって地盤の滑動などの災害が発生するおそれが大きい造成宅地防災区域は指定されていませんと簡単にあるだけです。まず、区内に本当に五カ所しかないと考えているのか、基本認識を問います。加えて、地盤の滑動、滑り動くリスクの大きい宅地が存在しないと言えるのか、区の基本認識を伺います。

第三に、当区独自の検証努力を求めます。前出の新聞報道にも協力をした谷埋め盛り土災害研究の第一人者、京都大学斜面災害研究センター長で同大教授の釜井俊孝氏が、二〇一六年に世田谷区南部に焦点を当てた独自の検証マップを公表しております。これは当区の区政情報センターでも販売している、昭和四年ごろ、旧陸軍測量部が作成をした地形図から世田谷区が集成した世田谷古地図を元図に、現況との高低差から谷埋め盛り土を推定し、区が保管する建築確認時のボーリングデータから谷埋め盛り土の実在までを確認したものであり、都の公表マップの数倍に及ぶ谷埋め盛り土の実在は確かめられております。つまり、本区が所持するデータだけで、おおよその確認は可能です。
区がその地盤災害リスクを評価、検証する気もなく、深刻な問題点が指摘をされている都の公表マップに盲従し続けていることは、防災まちづくり担当部の自殺行為と考えますが、いかがでしょうか。極めて評価の甘い都の対応に追従し続けるのかどうか、防災まちづくりに向けた区の本気度を問います。

第四に、本区の土砂災害ハザードマップにも地震防災マップにも谷埋め盛り土の掲載がないのは問題ではないのでしょうか。現状は、区内盛り土造成地の滑動リスクを不可視化し、防災上誤った価値基準を区民に与えているのと同じです。新宿区の震災ハザードマップ同様、きちんと掲載することを求めます。区の見解を問います。

この質問の最後に、盛り土宅地の減災対策についてです。
谷埋め盛り土対策として国土交通省がまとめた宅地耐震対策工法選定ガイドラインの解説で、危険要因の筆頭に挙げられているのは地下水位の高さです。そして、その対策工事の筆頭には、降雨の浸透などにより地下水位の上昇を防止することを目的とした地表水排除工、次いで地盤内に浸透した水を速やかに外部に排出する地下水排除工が挙げられております。ところが区は、こうした谷埋め盛り土宅地にも見境なく雨水浸透ます等の設置助成を繰り返しております。公費を使って区民の宅地をさらなる危険にさらす愚は見直されるべきと考えますが、いかがでしょうか。

◎田中 防災街づくり担当部長

私からは、谷埋め盛り土宅地の防災対策について四点お答えします。

まず、東京都の未掲載箇所と区内五カ所への区の対応の二点についてです。
東京都は、谷埋め盛り土などの大規模盛り土造成地について、国のガイドラインに基づき大規模盛り土造成地マップを作成し、区内においては五カ所を抽出した上で公表しています。大規模盛り土造成地マップは、地震等によって盛り土地盤の滑動崩落等の災害が発生するおそれの高い土地を対象とする造成宅地防災区域の指定の必要性を調べるための調査の過程で作成されるもので、住民等へ防災情報を提供し、宅地造成に伴う災害に対する意識を高める目的がございます。一方で、国のガイドラインに基づく大規模盛り土造成地の変動予測調査自体は東京都により引き続き進められています。御指摘の区内に十カ所あるとされている谷埋め盛り土について東京都に確認したところ、公表へ向けて課題の整理、確認等、内部検討を進めているとのことでございます。
区といたしましては、区民の生命と財産を守る観点から、十カ所の公表へ向けて速やかな対応を行うこと及び既に公表された五カ所とあわせて、地盤の安定性についての詳細な調査等を行うよう東京都に求めてまいります。

次に、区独自の検証努力を求めるについてです。
造成宅地における災害防止のための措置として、宅地造成等規制法では、宅地造成に伴い、相当数の居住者などに危害を生ずる災害発生のおそれが大きい一団の造成宅地について、都道府県知事は造成宅地防災区域の指定を行うことができると規定されています。そのため、大規模盛り土造成地マップは、都道府県による造成宅地防災区域の指定の必要性を調べる調査の過程でつくられるものであることから、東京都が調査を実施し、作成したものでございます。
区といたしましても、これまで公表された区内五カ所の大規模盛り土造成地の抽出の際には、現地確認などさまざまな面で東京都に協力してきたところでございます。今後、東京都が進める追加抽出において、地盤の滑動崩落リスクを含む大規模盛り土造成地の見落としがないよう求めてまいります。また、公表された五カ所を含む詳細調査等の計画やプロセスなどについても説明を求めるとともに、東京都と連携協力して災害の防止に取り組んでまいります。

最後に、ハザードマップへの掲載についてです。
区は、平成二十八年十月に策定した世田谷区がけ・擁壁等防災対策方針の中で、土砂災害警戒区域等の分布図などに加えて、都の公表資料をもとに世田谷区内の大規模盛り土造成地の位置等を掲載しておりますが、現在ハザードマップのような形式でまとめてございません。
区といたしましては、土砂災害ハザードマップや地震防災マップ等の情報に大規模盛り土造成地をあわせて図示し、周知、普及を図ることは、区と区民への防災意識を高める上で効果的であるものと認識しております。今後、東京都の追加公表等の動向も踏まえ、総合的な情報提供が可能なマップ作成について、関係所管と連携して検討してまいります。
以上でございます。

◎桐山 豪雨対策推進担当参事

私からは、谷埋め盛り土箇所におきます雨水浸透ます設置見直しについて御答弁申し上げます。

区では、区内で公共施設や民間施設を建築する際は、世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱に基づきまして、雨水流出抑制施設の設置に関して一定の指導を行っているところでございます。また、世田谷区雨水流出抑制施設技術指針では、雨水流出抑制施設選択図を利用しまして、設置場所の地形及び土地利用をもとに、浸透施設に適した地域であるかを確認し、これに適さない場合におきましては貯留施設のみを設置することとしております。谷埋め盛り土箇所につきましては、含水量が大きくなると地盤がもろくなるということも想定されることから、浸透施設の設置が地盤に与える影響について配慮する必要があると認識しております。そうしたことから、現状の雨水流出抑制施設選択図につきましては、谷埋め盛り土として確認された箇所について見直しに向けて検討してまいります。
以上でございます。

◆上川あや

全て御答弁は改革に向けて頑張っていただけるようで安心はしておりますけれども、ただ、谷埋め盛り土に対する都の対応ですね。都合の悪い情報を無視したり過小評価する、いわゆる防災心理学で言うところの正常化バイアスの傾向が見てとれるような気がします。世田谷区がこうした傾向にお片棒を担ぐことが絶対にないように、三十年以内に震災は必ず来ると言われていますから、そうした傾向でお片棒を担ぐということは、区民の住宅地をかえって危険にさらします。そういったことが決してないように重ねて求めまして、私の質問を終わります。