◆上川あや
多文化共生、国際理解の取り組みについて伺います。
まず、当区は、どういう課題認識、将来ビジョンを持って、同施策に向かうのかが疑問です。
当区は、全国でも十四番目に外国人が多く住む自治体です。国別トップは中国で二七%、二位は韓国で二一%、この両国だけで四八%、約半数です。これに、四位の台湾、五位のフィリピン、七位のベトナムなどを足し合わせると、約七割以上がアジア諸国です。
人の動きはどうでしょうか。昨年の訪日外国人は二千八百万人を超えました。その六割がリピーターで、中国からが二六%、韓国が二五%で、両国だけで過半数です。三位の台湾、四位の香港を足し合わせただけで七五%に達します。一人当たりの消費金額も中国がトップで、訪日回数がふえるごとに消費金額も上がるそうで、インバウンドでもアジアのパワーが圧倒的だと言えます。
日本で学ぶ留学生二十七万人も九三%がアジア出身です。人材不足を補っている技能実習生二十七万人も、そのほとんどがアジア系です。今や農業も漁業も製造業も建設業もコンビニも外国人人材への依存を深めており、今後は介護人材などでも依存を深めていきそうです。
一方で、気になるのが国民感情です。日中韓三カ国のNPOが毎年共同で互いの国への印象等を調べています。先週発表された日中間の調査では、中国側の日本に対する、よい印象が過去最高を記録し、四二・二%がよいとした一方で、日本で相手国への印象を悪いとした人が九割近くを占めました。日本側の調査を担当した団体、言論NPOでは、日本を訪れる中国人の増加が対日イメージの改善に貢献している一方で、日本から中国を訪問する人は減少傾向にあることが対中感情の悪化にもつながっていると分析をしています。日韓関係も同様の傾向です。韓国側の印象で改善が進む一方で、日本でよい印象を持つ人はたったの二割です。三年連続して悪化し、韓国から見た、よい印象のほうが今では高くなっています。
こうした近隣アジアの住民が在住外国人の多数を占め、なおかつ、日本側から見た印象が思わしくないことについて、区は課題認識をお持ちなのでしょうか。
◎田中 生活文化部長
全ての人が、国籍、民族等の異なる人々の互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、ともに生きる多文化共生社会の実現は、互いを理解することが大変重要であると認識しております。中でも、アジア系の国々は、世田谷区にお住まいの外国人の中でも七割を超え、人のつながりも強く、相互の理解が求められるところでございます。
平成二十九年度に区が実施した区政モニターアンケートで、外国人に接する機会を聞いたところ、四五・七%が外国人と接する機会はほとんどないと答えており、日常生活で外国人と触れ合う機会が少ないことがわかります。
実際に顔の見える交流があるかどうかで、国に対する印象は大きく変わるものと思います。相互理解を深めるため、身近な地域で、また、相互訪問による交流を進め、それぞれの国への理解を深めるとともに、信頼関係を築くことができるよう、取り組んでまいります。
◆上川あや
続けて、区教委に問います。
当区の姉妹都市は、長らくカナダ、オーストラリア、オーストリアと欧米系だけで占められてきましたが、ここに来てフィンランド、そして、唐突にアメリカのポートランドが加わろうとしています。相も変わらぬ欧米偏重で、台湾との教育交流はペンディング、相手方に熱意があるのにペンディングです。これが全体としてバランスのよい国際理解の取り組みなのでしょうか。
今の子どもたちが巣立ち、働く日本は、今より、なお一層、身の回りでアジアへの依存を深めた社会だと考えますが、それにふさわしい国際理解、多文化理解の教育が必要ではないのでしょうか、いかがでしょうか。
◎工藤 教育政策部長
グローバル化が進む社会にあっって、次代を担う子どもたちが多様性を尊重し、異なる価値観や考え方を持つさまざまな方と支えあい、協力し合いながら生活し、これからの社会をともに築いていくことができる態度を育むことは、教育として大変重要なことと考えております。
特に委員お話しのアジアを初めとした国々とのつながりの深さや大切さを子どもたちが理解していくことができるよう、学校教育において、各教科等、さまざまな場面で取り組んでいくことが大切でございます。
各学校では、第二次世田谷区教育ビジョン第二期行動計画に基づき、道徳を中心とした人権教育や、地域の外国人や世田谷区に訪問される団体などとの交流などの国際理解教育を通して、多文化共生に向けた取り組みを進めております。また、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、こうした教育を一層推進し、多様性と調和の重要性を認識することで、世界の人々と共生し、他者を尊重する心を初め、思いやる気持ちやボランティアマインドを醸成しております。
今後、小中学生を海外に派遣する教育交流におきましても、姉妹都市などとの交流の状況を踏まえながら、中国や韓国、台湾などのアジアについて、交流先の有力な選択肢の一つとして検討してまいります。
◆上川あや
二十三区中十区が北京市の区と交流をし、六区がソウル市の区と姉妹都市提携をしているそうです。両市にこだわるものではありませんけれども、アジア軽視が余りにもひどいと思います。バランスのよい取り組みをぜひ進めてください。