◆上川あや
外国籍の子どもたちの不就学や未就学、つまり学校に就学していないことについて伺います。
区は、平成二十七年三月三日、子ども・子育て応援都市を宣言しています。また区は、この四月、男女共同参画と多文化共生の条例を施行し、国籍、民族の違いを理由とした不当な差別的取り扱いをすることにより、他人の権利、利益を侵害することを禁じたところです。
区長は、さきの招集挨拶でも児童相談所の開設計画について触れ、あらゆる場面において子どもの権利が保障され、最善の利益が優先された「みんなで子どもを守るまち・せたがや」の実現を目指すとうたいました。そこで区教委に伺います。
一般論で結構です。不就学で、きちんと学びを得られない子どもたちの生活と未来には、どういう懸念があると考えるでしょうか。お答えを願います。
◎内田 学務課長
学校教育は、単に学力を養うということだけでなく、人格の完成を目指し、心身の発達に応じて行われるものとされており、日常生活に必要な能力を養うことなどが大切です。子どもたち一人一人の多様な個性や能力を伸ばし、変化の激しい時代を生き抜く基盤となる力をバランスよく培うことや、学校での教育活動等を通して、子どもたちの自尊感情や自己肯定感を高めていくことが重要となります。
また、子どもたちが人権尊重の理念を正しく理解し、さまざまな差別や偏見をなくし、人としてのとうとさを自他ともに認識し、思いやりの心や社会生活における基本的なルールを身につけていくことが求められます。子どもが不就学になるということは、こうした点からも、子どもの健全な生活や成長に負の影響を及ぼすものと考えます。
◆上川あや
外国籍の子どもはどうでしょうか。日本人の子と一緒でしょうか。それとも別の懸念もあるでしょうか。
◎内田 学務課長
外国籍の子どもにつきましても、先ほどお話しさせていただいたことと同様と考えております。また、日本語能力が十分でない場合も多いという懸念があり、そのことから、日本語の指導が必要になることや、さらには日本の生活や文化に適応することが難しく、社会の一員として活動するための支援なども必要となると認識しております。
◆上川あや
そうはおっしゃいますけれども、区教委は外国籍の子どもに関しては、就学しているかしていないかについて全く確認をしておりません。
区が行っている工夫は、英語、中国語、ハングルの三カ国語で入学案内を送るだけ。入学案内の末尾には、わざわざこう書かれています。「なお、世田谷区立の小中学校に入学を希望されない場合は、連絡等は必要ありません。」
その結果、区教委にデータを出していただきますと、小中学校の学齢期に当たる六歳から十四歳までの外国籍の区民の子は、五月一日現在七百四十九名いるところ、区立学校への入学を確認できているのは、このうち二百八十七名、三八%にとどまります。つまり、裏を返せば六二%、実に四百六十二名もの子どもについては就学の有無すら未確認。区は確認しようとすらしておりません。これは大問題だと思います。
そもそも、国際人権規約と子どもの権利条約は、国籍や在留資格に関係なく、学齢期の子どもに無償で教育を受けさせることを我が国に求めております。この点については異論はないでしょうか。
◎内田 学務課長
経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約や児童の権利に関する条約で、委員お話しのような事項として、教育について全ての者の権利を認めることや初等教育は全ての者に対して無償のものとすることなどが求められていることは事実でございます。外国人に対しては、法令上の就学義務が課されていないということはありますが、区立小中学校への就学の申請があった方の受け入れを行っております。
◆上川あや
義務教育の対象者ではないからといって、就学の希望がなかったからということでは済まされないと考えます。
第一、英語、中国語、ハングルの三カ国語で入学案内を送っただけで、百三十カ国以上の方々が暮らすこの町で保護者に十分な御案内ができたとは言えないでしょう。
文科省のホームページでは、七カ国語で就学案内を公開しております。三カ国語での配布で十分だと言えるでしょうか。
◎内田 学務課長
外国籍の子どもの就学に当たっては、翌年度に新小学一年生、新中学一年生の年齢を迎える外国籍のお子さんがいる全ての御家庭へ、世田谷区立小中学校への入学の案内文書を毎年十月に郵送しております。この文書は、現在、英語、中国語、ハングルの三カ国語に翻訳した文書も添付してお送りしているところです。
就学申請のあった方には、就学通知送付の御案内とあわせて、就学時健康診断の御案内も行っております。また、日本の学校や授業、学習について不安をお持ちの方には、必要に応じて帰国・外国人教育相談室による支援内容等についても御説明をしております。
教育委員会といたしましては、外国籍の子どもにも教育の機会を確保することは大変重要なことと考えております。世田谷区におけるさまざまな国籍の方がいらっしゃる現状も踏まえ、他の言語の翻訳による御案内や文書の内容など、就学の案内が行き渡るよう、より丁寧な周知について検討してまいります。
◆上川あや
今回、議会事務局に御協力いただきまして、島嶼部を除く、都内の全区市町村に調査をかけました。
地元の公立学校に通っていない外国籍の子どもについても就学状況を調査していたのは、区部では、港区、新宿区、葛飾区の三区、市部では、日野市、国立市、清瀬市、武蔵村山市、稲城市、あきる野市の六市でした。
これらの市区では、本区のように、ただ入学案内を送って終わりではありません。進路予定票を送り、具体的な進路について返答を求めていたり、在学証明書の提出をきっちり求めるなど、子どもの就学状況を把握しようと努めております。このうち、四市については家庭訪問までも行い、その調査が徹底しております。
子どもの最善の利益を守る、子どもの虐待を見逃がさないようにするというのであれば、子どもと社会との間に日常的な接点があることを最低限きちんと確認はする、こうした徹底した調査を本区でも行うべきではないのでしょうか、いかがでしょうか。
◎内田 学務課長
教育委員会としましては、全てのお子さんが就学し教育を受けることは、大切なことと認識しております。
今後、外国籍の子どもの権利、利益をより一層守る観点からも、まずは区立小中学校への入学の案内文書にアンケートを同封するなど、区立小中学校在籍者以外の子どもの就学状況の把握や不就学の子どもへのきめ細やかな支援について、他自治体の事例なども参考にしながら、手法等を検討してまいります。
◆上川あや
この課題、文教委員会の席でも、案内を送って終わりのままというのはおかしいから、改善したほうがいいということを申し上げたことは複数回あるんですけれども、ようやく初めてきちんとした、まともな御答弁がいただけたと認識をいたしました。きちんと有言実行になるように見てまいりますので、御対応お願いいたします。終わります。