◆上川あや

初めに、性的マイノリティー、LGBT支援について伺います。

本年四月、世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例が施行されました。同条例第八条の基本的施策で区は、一項四号で性別等の違いに応じた心及び身体の健康支援を、同五号で性的マイノリティーの性等の多様な性に対する理解の促進及び性の多様性に起因する日常生活の支援を掲げ、各所管部を挙げ、総合的に性的マイノリティー支援に取り組む根拠条例ができました。
このことにより、二〇一五年度より始まったパートナーシップ宣誓制度も、同条例第八条一項五号に基づく日常生活支援制度へと格上げされました。
課題の第一は、同条例に基づき実施されるパートナーシップ宣誓制度のブラッシュアップです。まず、パートナーシップを認める範囲を現行どおり同性カップルに限るべきなのかどうか、再検討が望まれます。
区が同制度の検討を本格化させたきっかけは、二〇一五年三月に区民の同性カップルら十六名が区長を直接訪ね、要望書を手渡したことでした。その要望書のタイトルは、同性カップルを含むパートナーシップの公的承認に関する要望書というもので、同性カップルのみならず、さまざまな非婚のパートナー、家族があることを踏まえてのものでした。新条例の趣旨に合った再検証を求めます。

また、同制度の開始当初から挙げられてきた改善要望に発行書面のカード化があります。現行のA4判で発行される書面では持ち歩ける証明書とするには難があります。この点、区に再検討を求めてきましたが、時は過ぎ、その実現は後続の札幌市、福岡市、大阪市に先を越されてしまいました。最も早く当事者から要望を聞いてきた当区が後塵を拝したままの状態であることが大変に残念です。改善を求めます。
加えて、審査の手続と発行書面のあり方でも改善が必要です。当区が要綱に基づきパートナーシップの宣誓制度を始めて以降、この方式は世田谷方式と呼ばれ、伊賀市、宝塚市、札幌市、福岡市、大阪市、また先月から中野区へと広がりましたが、後継自治体はいずれも住民票、戸籍謄本等の提出を求め、厳格にその適格性を審査するのに対し、当区は提出書類の設定もなく、当人のお申し出を了とするだけの性善説、これでは、当区の書面を証明書と受けとめる民間サービスがふえる中、悪用の可能性も拭い切れません。また、他の自治体ではいずれも当区の交付書面にはない公印の印刷があり、見る側に信用を与える力、与信力も一段と高いものとなっております。
当区も条例に基づく制度としてその信用性と使い勝手を高めるよう求めます。あわせて区長の見解を問います。

次に、同条例第十一条に基づく被害者救済の苦情処理制度がいまだ広報されていないことも問題です。
国の男女共同参画社会基本法第十七条に規定された苦情処理制度は、多くの男女共同参画条例に組み込まれておりますが、ホームページ等できちんと広報している自治体とそうでない自治体とがあります。条例に基づく制度を実際区民に役立つものとするには、制度の趣旨、使い方と窓口の広報が重要ですが、当区にはそれがないままです。この点、私からは繰り返し改善を求め、区も改善を検討しているとしておりますが、条例施行から半年がたち、あとどれくらい待てばよいのか、回答を求めます。
次に、当区の同条例と同様に、性的指向、性自認への差別を認めない条例がふえつつあります。文京区条例もこの点、当区と同様の差別禁止条項を持ちますが、区の考えを事業者に説明し理解してもらうという観点から、昨年十月より、区の発注工事契約書の仕様書にも個人情報保護条例、障害者差別解消法などとともに性的マイノリティーの差別禁止を明示し、新聞等でも報じられております。
当区も条例第四条区の責務で「区は、男女共同参画・多文化共生施策の実施に当たっては、区民及び事業者の協力を得る」と定め、第六条事業者の責務の一項で、事業者は、その事業活動及び事業所の運営において、男女共同参画社会及び多文化共生社会の形成に向けた必要な措置を講ずるよう努めなければならないとし、また、第二項で「区が実施する男女共同参画・多文化共生施策に協力するよう努めなければならない」とされております。
以上の規定に従えば、本区も文京区同様の周知が求められると考えますが、いかがか、区の見解を問います。

次に、性的マイノリティー支援を支える福祉人材について問います。
おととし九月の決算質疑で本課題を取り上げました。性的マイノリティーには、同性同士、家族として暮らしたり、ホルモン投与や外科手術を経たトランスジェンダーが多いなど、非典型的な家族、身体状況があるために、差別を恐れれば医療や介護も遠ざけてしまいがちです。
そこで、区の福祉人材育成・研修センターの研修を要望し、区からも、介護、福祉の現場でもLGBTを初めとした多様性を尊重し、LGBTについても正しい知識と理解を持って、利用者やその家族の支援に当たることは人権擁護の視点からも欠かせないと、極めて前向きな御答弁をいただきました。
しかし、その後の取り組みはといいますと、同センターの各種講座で東京都発行の三つ折りカラーリーフレットのモノクロのコピーを配っているだけです。これではLGBTの介護にどういう困難があるのか、支援で留意するべきポイントは何か等、全くわかりません。
この課題でも、世田谷区が具体的な研修を進められぬ間に、文京区が九月三日、同テーマで介護職員向け研修会を開催し、全国でも珍しい先進的事例として報道されております。
世田谷区は、真っ先に議会で指摘を受け、真っ先によい答弁を返しながら、またしても先を越された格好です。改めてきちんと実のある研修会を開くよう求めます。いつ実現できるのでしょうか、回答を求めます。

このテーマの最後に、災害見舞金を取り上げます。
同見舞金は、世田谷区災害見舞金支給要綱に基づき実施されてきた区独自の制度で、区内における火災、風水害等により被害を受けた世帯に見舞金を支給することで、区民の福祉に資することを目的としております。
火災における全焼、風水害による全壊、または流失時の見舞金は、単身世帯か否かでその額が変わり、死亡者が出た場合、残された世帯には九万円が支払われます。この適用範囲に同居する同性パートナーが入るか否かを区に問いますと、入るという回答です。ならば、ぜひこの本会議で公式に答弁としていただければと思います。また、要綱集を開かなければ内容のわからない、こうした制度を同性パートナーにも適用されることも含め、ぜひ広報していただくよう求めます。答弁を求めます。

◎保坂 区長

上川議員にお答えをします。
パートナーシップ制度のさらなる改善をという御指摘でございます。
平成二十七年十一月に世田谷区と渋谷区が同じ日にスタートいたしました同性パートナーシップ制度は、今や札幌市、福岡市、また大阪市など政令指定都市も含む全国九都市に広がり、さらに拡大をするというふうに聞いております。
世田谷区では、本年九月一日現在、七十八組の宣誓がございました。早い時期に同性パートナーシップ制度を導入した自治体として、他自治体からの問い合わせ、視察、講演の依頼なども多いと聞いております。各自治体がこの制度を始めるに当たって、今御指摘にあるような本人確認の厳格化や受領証のカード化などの工夫を取り入れているという例もあると聞いています。後に続いて制度を動かし始めた自治体の取り組みから学ぶ点も多々あると考えています。先行自治体であったとしても、他自治体がさらにニーズを捉えて工夫し改善したところからは、よき点は取り入れてまいりたいというふうに思います。
私としても、制度開始から三年がたったことを踏まえて、これまでの取り組みに対する課題をまとめ、来年度に向けて、よりよい制度に向けた見直しに着手するよう、担当に指示をいたしました。
今後、当事者の御意見も聞きながら、これまで宣誓された方も、そしてこれから宣誓をされようとしている方にも信用性が高く、また、使い勝手のよい制度となるように検討を進めてまいります。

◎田中 生活文化部長

私からは、二点に御答弁いたします。
初めに、多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例に基づく苦情処理制度のホームページでの広報について御答弁いたします。
区では、同条例の趣旨や内容を、区民、事業者の皆さんに的確に御理解いただき御活用いただけるよう、条例本文、施行規則、条例解説をセットにしたものを用意し、窓口で配付するとともに、区ホームページにも掲載してございます。
御指摘の苦情処理制度について御紹介するホームページは準備中であり、いまだ公開していない状況でございますが、今月中の公開を予定しております。本条例は、苦情処理について規定していることが特徴の一つでございますので、ホームページを初め、今後もわかりやすく周知し、区民の安心につながる制度であることを広報してまいります。

次に、区の発注工事契約書の仕様書に性的マイノリティーへの差別禁止を明記する、文京区同様の取り組みを進めるべきという点に御答弁いたします。
世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例では、事業者の責務として、条例の基本理念を踏まえ、男女共同参画及び多文化共生の理解を深め、事業活動及び事業所運営に努めなければならないことを明記してございます。
このため、世田谷区では条例が施行された今年度、区内事業者に配付されている情報紙などを活用し、条例の周知を積極的に進めているところですが、文京区のように、区の発注契約における仕様書にも条例への理解を求めるという形で、事業者への周知につなげるという手法も有効であると考えます。
今後も条例の趣旨をより多くの事業者に理解していただけるよう、御提案の形も含め、さまざまな手法を検討し取り組んでまいります。
以上でございます。

◎瓜生 高齢福祉部長

私からは、介護職員向け性的マイノリティー研修について御答弁いたします。
介護の現場において一人一人の人権を尊重し、相談や支援に適切に対応できるようにするため、性的マイノリティーについても正しい知識と理解を持ち、対応力の向上を図ることは不可欠であると認識しております。
区では、昨年度より区主催の介護従事者向け研修などで約二千五百名に都が発行するリーフレットを配布し、性的マイノリティーの正しい理解の醸成に取り組んでまいりました。性的マイノリティーの方を含め、誰もが安心して相談し、サービスを利用できるよう、介護職員が性の多様性、個別性に配慮し対応することが求められます。そのためには具体的に留意すべき点や支援方法などを学ぶ研修の実施が必要と認識しております。
区といたしましては、御利用者、御家族の尊厳を守るため、性的マイノリティーの課題は人権課題と認識し、介護職員のニーズにマッチし、日ごろの業務に役立つ効果的な研修となるよう、内容を検討の上、今年度中の実施を目指してまいります。
以上でございます。

◎工藤 危機管理室長

私からは、災害見舞金の適用範囲とその趣旨について御答弁いたします。
世田谷区災害見舞金につきましては、支給要綱で火災や風水害で被害を受けた世帯に対しまして見舞金を支給することにより、区民の福祉に資するとしており、生活の本拠となっている住居に一定程度以上の被害があった場合、または居住者が死亡した場合に、その世帯に対しまして見舞金を支給しております。
同性パートナーの方についてですが、住居及び生計をともにする世帯員であれば見舞金が支給されます。被害を受けた方への周知につきましては、去る八月二十七日の大雨で被害のあった世帯向けに、区ホームページのトップ画面で罹災証明書や見舞金の支給等につきまして御案内をしているところでございます。
今後、見舞金を含めた支援制度等がよりわかりやすくなるよう周知方法を検討するなど取り組んでまいります。
以上です。

◆上川あや

いずれも具体的に改善が見込める御答弁だと受けとめました。ただ言葉だけじゃだめなんですね。きょうも何回か言いましたけれども、ちゃんと実のあるものに、使いでのあるものに、区民が喜べるものにするためには、さらに工夫が必要ですし、有言実行でぜひお願いいたします。
以上申し上げて、私の質問を終わります。