◆上川あや
初めに、おひとり様の落とし穴、身元保証人不在の困難に対処を求め、伺います。
お金も時間も自分のために使える、いわゆるおひとり様にも、特に高齢期、大きな落とし穴があります。例えば高齢者が介護施設に入る際、身元保証人がなければ受け入れを拒否する施設は、昨年末の厚労省の調査によれば、全体の三割に上ります。
調査は昨年十二月、全国の特養や老健など四千九百カ所を対象に実施され、約二千四百カ所から回答を得ました。その結果、入所時の契約に身元保証人など本人以外の署名を求める施設は実に九五・九%に上り、署名がなくても受け入れる施設はたった一三・四%にとどまりました。また、成年後見人制度の申請など条件つきで受け入れるとした施設が三三・七%、署名がなければ入所を認めない施設も三〇・七%に上りました。
厚労省は、身元保証人がいないことは拒否の正当な理由にはならず、拒否する施設は指導対象になるとしていますが、緊急時の連絡先や遺体や遺品の引き取り先、利用料の支払いや滞納者の補償等を施設側は求めており、指導の効果は全く上がっておりません。身元保証人不在による受け入れの拒否は、民間賃貸住宅の契約時にも、医療機関への入院時にも起こり得ます。
第二東京弁護士会が昨年行った調査では、都内百四十一の医療機関のうち百三十一機関、実に九二・九%が入院時に身元保証人を求めると答えました。
こうした事態を反映し、身元保証サービスへの民間参入もふえております。ある研究機関の調査で、その数は全国で九十余りとされますが、監督官庁も規制もないまま、実態は不明です。
二〇一六年には、高齢者に身元保証サービスを提供してきた公益社団法人日本ライフ協会で多額の預託金流用が発覚し、経営破綻をしました。成年後見人による財産の着服報道も後を絶つことなく、誰を頼ればよいのかの不安は広がる一方です。こうした中、一部の自治体が支援に乗り出しました。足立区では、社会福祉協議会が、高齢者が病院や施設に入る際、家族などにかわり身元を保証、必要な手助けを行う事業を始めています。資産や収入の少ない高齢者を対象とし、本人に面談し、医療情報や資産などを聞き取った上で、契約時に遺言執行者を弁護士や司法書士とする公正証書遺言をつくります。さらに社協の職員が定期訪問し、医療サービスの変更希望や判断能力の低下を確認するサービスもあり、費用は全て区の補助で賄われているといいます。
世田谷区も同種の支援に取り組むことで、高齢者の安心は大きく広がると考えますが,いかがか。
また、国は自治体を通し入所を拒否する事業所を指導するとしておりますが、当区の実態についてはいかがか、あわせて区の見解を伺います。
◎瓜生 高齢福祉部長
私からは、身元保証人の不在について二点御答弁いたします。
初めに、入院、入所の拒否についてです。
区内の高齢者世帯の状況は、年齢が上がるにつれて単身世帯が増加し、八十五歳以上では過半数が単身世帯となっております。このような中、高齢者が安心して地域で暮らし続けるための支援のあり方は大変重要な課題であると認識しております。
医療につきましては、医療法において、正当な事由なく診療を拒否することが禁止されております。また、介護保険の運営基準では、正当な理由なく指定介護サービス提供の拒否は禁止されており、指定権者である東京都や区では、サービス提供拒否についても実地指導の対象としておりますが、これまで保証人不在を理由とした入所拒否の事例は確認されておりません。また、区へ身元保証人不在により施設入所を拒否されたという相談や苦情は、今のところ寄せられてはおりません。
しかしながら、今後とも、区は東京都とも連携し、区民の権利を守るため、指定権者として事業者が運営基準違反とならないよう指導に当たってまいります。次に、親族不在の方の支援策についてです。
特別養護老人ホームや都市型軽費老人ホーム等の入所は、利用者と施設との契約となっており、身元保証人が必要となっております。親族がいないなどの理由で保証人が不在の場合には、成年後見人の選任や区のケースワーカーが連絡先となるなど関与することで入所の支援に努めております。
今後、高齢社会がさらに進展することから、ひとり暮らし高齢者もさらに増加し、生活支援の必要性は一層高まるものと認識しております。身元保証人不在者の対応は、お話にありました他自治体の事例なども参考としながら、社会福祉協議会等のかかわり方も含め検討し、誰でも必要なサービスを利用し、住みなれた地域で安心して暮らし続けられる仕組みづくりに取り組んでまいります。
以上でございます。