◆上川あや

男女共同参画と多文化共生の条例についてお伺いいたします。

さきの私の一般質問で、条例骨子案八の基本的施策では、性的マイノリティーの理解教育に取り組むことを明記するべきと求めました。ところが、区の御答弁は、骨子案の基本的施策には、性的マイノリティーの性等、多様な性の理解の促進に係る啓発活動と明記している。ここでいう啓発には、学校における理解教育なども含まれるというもので素通り。変える気のない答弁で、納得ができません。

そこでまず、区の基本認識から伺います。
さきの区教委の答弁にあるとおり、区教委も、また東京都教委も、既に性的マイノリティーの理解促進と差別防止の教育に取り組むという方針を、もう明確に明らかにしております。区も区教委と連携し、その取り組みを支援し、進めていく立場ではないのですか。

◎若林 人権・男女共同参画担当課長

本年三月に策定をいたしました第二次男女共同参画プランでは、性的マイノリティーと多様な性への理解促進と支援を課題として、区職員・教育分野における理解促進を施策の一つに掲げてございます。学校における性的マイノリティーの理解教育につきましては、今後とも教育委員会と連携し、取り組みを進めてまいる考えでございます。

◆上川あや

また、区が本年四月に実施をした多様性尊重に向けた区民意識調査でも、性的マイノリティーの子どもたちが差別されないよう、学校での学習機会を充実することについて、必要と認めた区民は五九・五%に達しております。十分理解、支持が得られています。教育活動の明記をどこまでも避ける理由などないはずです。この結果をどのように受けとめるんでしょうか。

◎若林 人権・男女共同参画担当課長

ただいまお話しの多様性が尊重される地域社会への取り組みに関する区民アンケートは、本年四月一日現在で住民登録をされている区民の中から一千人を抽出して、二百九十九人の方から回答をいただいたものでございます。お話しのアンケートは、あなたが性的マイノリティーの方々の人権を守る施策について、区が取り組むべきこととして必要だと思うものを複数回答で伺ったものでございます。性的マイノリティーの子どもたちが差別されないよう、学校などでの学習機会を充実することは、性的マイノリティーの方々が相談できる窓口の設置、五九・九%に次いで多い結果となりました。本アンケートの結果は、学校教育における理解促進の必要性を多くの区民が感じていると考えてございます。

◆上川あや

そういうお答えではありますけれども、区は、性的マイノリティーの理解教育を啓発という言葉で言いくるめて、教育そのままの言葉で規定することを避けております。
区は、同じ基本的施策の①では、固定的な性別役割分担意識の解消を目的とした教育活動と、教育活動を規定しており、ところが四行下って、多様な性の理解に移りますと、突然、啓発活動と言いかえて、二つの表現を使い分けております。
このことについて、性的マイノリティーの支援で大変高名な中川重徳弁護士に御意見を伺うと、条例案は啓発と教育を使い分けているわけだから、啓発といえば学校教育は含まない意味と解釈されるとした上で、大変興味深い御示唆を下さいました。
平成十二年に成立した人権教育及び人権啓発の推進に関する法律では、法律名にあるとおり、人権教育と人権啓発とを使い分けています。同法第二条の定義にはこうあります。「人権教育とは、人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動をいい、人権啓発とは、国民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)をいう」。括弧書きにあるとおり、人権教育を除くということなんですね。人権教育と人権啓発は別物です。前出の中川弁護士いわく、法令は、特段の事情がない限り、法律も条例も同じ言葉を同じ意味で使うべきだし、そう解釈することこそが原則だということでした。

今回の区の二枚舌について、別の区の条例からも考察をしてみます。
議会事務局に協力をお願いして調べてみたところ、本区の二十一の条例に啓発の規定はございました。その一つに、本日御出席の環境政策部が所管をする世田谷区ポイ捨て防止等に関する条例がありますが、同条例第三条、区の責務に規定するところの「啓発をしなければならない」の「ねばならない」義務規定は、学校教育の実施を命じるものでしょうか。区教委がしなければならない義務規定でしょうか。所管課長に伺います。

◎安藤 環境計画課長

ポイ捨て防止条例で区の責務として定める啓発は、子どもから大人までの区民、事業者を幅広く対象としており、子どもも当然含まれているものと考えております。学校における児童生徒の環境美化活動は、区が進める環境美化の啓発の取り組みと相通じるもので、お互いに重なり合うものでありますが、区が学校教育に対して、条例に基づき直接命じるものではなく、教育の一環として行われているものと考えております。

◆上川あや

区条例の啓発の義務は教育活動まで命じていない。区教委の自律的な活動ということですよね。同じ区の条例で言っていることがおかしいんですね。さきの御答弁のとおり、区と区教委として教育活動と啓発活動にしっかり取り組むという御意思があるのであれば、そうとわかる矛盾しない規定とするべきです。見解を伺います。

◎若林 人権・男女共同参画担当課長

現在お示ししております骨子案につきましては、区の条例としての制定を目指すものでございまして、制定後は教育委員会においても条例の趣旨を踏まえ、教育の一環として尊重されるべきものと考えてございます。
いずれにいたしましても、骨子案については現在パブリックコメントを実施中でございまして、先日開催したシンポジウムにおいても多くの御意見をいただいたところでございます。こうした御意見を踏まえ、また本定例会を初め、議会の御意見を伺いながら、総合的に検討を重ね、二月に最終案をお示ししたいと考えてございます。

◆上川あや

今おっしゃった総合的な検討には私の今回の質問についても含んでいるということの理解でよろしいですか。

◎若林 人権・男女共同参画担当課長

総合的でございますので、さまざまなものが含まれております。

◆上川あや

人権所管たるもの、教育の役割をしっかり重視しなければおかしいと思うんですね。性別役割分担意識の打破に関しては、教育活動と言いながら、性的マイノリティーに関しては、何度問うてもしらを切り通す、こういった態度は当事者から見ると非常に差別的に映ります。言外におかしなメッセージを発しているという、その自分たちの人権感覚のおかしさに気がつくべきだということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。